断腸亭料理日記2017
2月7日(火)夜
北陸の大雪。寒い寒い。
だが、日曜日が立春であった。
今週に入って、日の光が強くなっているように感じるのは
気のせいではないだろう。
節分の翌日が立春、これは毎年変わらない。
正月は初春などというが、大雑把には近いはずの、
旧の正月一日は今年は16日で、来週の金曜日。
旧暦というのは太陰暦。
月の満ち欠けの暦で一か月が30日なので、
年によって随分とずれる。
皆さんも思われているかもしれぬが、
立春などの二十四節気の方が実際の気候に
近いように感じることもある。
18時池袋で仕事終了。
なにを食べようか、考える。
思いついたのが、上野[藪蕎麦]のかき南蛮。
あれは名品、好物、なのだが、
今シーズンは食べていなかった。
山手線をぐるっと回って、上野で降りる。
広小路口から出てきて、丸井脇の通りに入る。
一本目の角。
ごくたまに、ウイークデーの夜も一杯で時間的には
知れているが、店前で待つことがなくはない。
この寒空に待つのは、と思っていたら、すんなり入れた。
意外に空席もある。
カウンター席へ。
やっぱり、お酒お燗。
それから、なにかつまむもの、つまむもの。
メニューをみて、まぐろ山かけ。
お姐さんに、
お酒お燗で。
すると、毎度お馴染み、熱燗ですか?。
いや、熱くしないで。
ぬる燗ですか?。
ぬるくもしないで。
あー、常温?。
いや、そうじゃなくて、熱くもなく、ぬるくもない、
普通の温度、、わかります?。
あー、という顔をされて、一応は伝わったか。
それから、山かけとかき南蛮。
かき南蛮は後で。
すると、声をかけてください、とのこと。
ここは店で見計らって出すのではなく、客に声を掛けろ、
というシステム。
しかし、熱燗の件。
世の中のほとんどの人が、燗酒といえば熱燗としか
いわないからで、このお姐さんだけの責任とまでは
いえなかろうが。
しかし、熱燗、ぬる燗の間の、適温、上燗という温度もある。
ただお燗といったら、これを出すのが本来であり、
ノーマルのはず。
同業を引き合いに出して恐縮だが、浅草並木の[藪]では
特にいわれなければ、適温が出てくる。
(皆さんも、熱燗撲滅運動に加わりましょうよ。
熱燗は決して正しい燗酒ではない。
お燗に適した酒でも湯気が出るほどの温度は、酒の味を
だいなしにしているのである。
燗酒に適した菊正宗でも、熱燗は必ずしも推奨はしていない。
やはり上燗である。
熱燗も呑み方の一つで、もちろん呑みたい人は呑めばよろしい。
しかし、燗酒=熱燗ではないことは声を大にして言いたい。)
お酒がきた。
呑んでみると、温度は上燗。
板場のお燗番の方は、ちゃんとわかっているのである。
山かけも。
最近自然薯にはまったが、これは自然薯ではなさそう。
(別段、なんの問題もないが。)
マグロも中トロあたりでうまいのだが、
海苔やらしそやらわさびやら、薬味いろいろが入っており
これがよいアクセントで、うまい。
頃合いをみて、そばを頼む。
きた。これが上野藪のかき南蛮。
大きな牡蠣が四つ。
ねぎにゆず。
この一杯のそば、私は傑作ではないかと思っているのである。
牡蠣の食べ方としても、温かいそばとしても。
炒めていると聞いたこともあるような気がするが、
牡蠣はプリプリ。
生ぐささ、牡蠣独特のエグミのようなくせも皆無。
実に食べやすく、うまみにあふれている。
そして、特筆すべきは牡蠣をとりあえず入れました、
というものではないということ。
実にしょうゆ味のそばつゆと合っている。
もしかすると、このかき南蛮用に特別に作っているつゆ
かもしれない。(普通そばのつゆにはあまり使わないとは
思うのだが、昆布も使っているかもしれない。)
クセが強い牡蠣を、どちらかといえば端正ですっきりした
そばのつゆに合わせるというのは、とても難しいと思うのである。
これが絶妙に合っている。
牡蠣そのものの下ごしらえ、仕上げ方、つゆの味、
全体のバランス含めて、かなり稀有な仕上がりの一杯である。
うまかった、うまかった。
ご馳走様でした。
台東区上野6-9-16
03-3831-4728
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