断腸亭料理日記2018
2月18日(日)第二食
カレー、で、ある。
カレーが食いたい。
先日、五反田の牛すじカレー[ホットスプーン]で
食べているのだが、ウイークデーはなぜかあまり食べることはない。
なぜであろうか。
寒いから、というのは一つあるのだが、夏でも
昼にはあまり食べない。
会社には社食もあってカレーももちろんあるのだが、
ご多聞に漏れず、イマイチ。
(おまけにたいして安くもない。)
五反田にコレというカレーやが多くないということも
一つである。
カレーにもご案内の通り、あえて言えば、欧風カレーという
ことになるのか、ルーから作った(?)ノーマルなカレーと
インドカレーがある。
インドレストランで食べるインドカレーならば、
昼ではなく、夜、落ち着いて食べたい。
欧風カレーあるいは、ルーから作ったノーマルなカレーで
うまいところというと、やはり東京ではカレースタンド、
あるいは洋食やというのか、グリル、キッチンといったところでは
なかろうか。
今はもう閉めてしまったが、飯田橋の[めとろ]
などはかなりよかった。
もう一軒挙げると、蔵前にあったこれも閉めてしまった、
キッチン[南海]。
私の場合、こういうところで、やっぱりカツカレーにはなる。
ポークだのチキンだのカツが入らぬものはそういえば、
ほぼ食べないかもしれぬ。
そうすると、カツカレーに合うカレーソースというのが
私には条件にはなっているのかもしれない。
カツに負けぬくらいのこってり感もほしい。
カツカレーといえば、元祖という銀座[スイス]。
ここはむろんのことちゃんとしたカレーでカツとの相性もよく
文句のつけようがない。
スタンドカレー、洋食や、グリル、キッチンであればどこでもよいかと
いえば、そんなこともない。
「昔ながら」というと、まず相性はあまりよくはない。
やはり、カレーは進化しているのである。
比較の問題だが“さっぱり”方向のものは
カツカレーには合わない。
と、いうことで、上野駅前、ガード下の[クラウンエース]である。
古い店だが、私が行くようになったのは、3年前であったのは
うかつの誹(そし)りは免(まぬが)れないかもしれぬ。
午後、自転車で出る。
天気はよいのだが、やはり、寒い。
竹町から仲御徒町、御徒町公園、昭和通りを渡って、
ラーメンストリートのガードをくぐる。
パンダ広場から松坂屋の間を抜けて、鈴乃屋側へ。
中央通り沿いに北上し、酒悦、鈴本。
三橋の交差点を渡り、不忍池内にちょっと入る。
不忍池は、蓮が全面にびっしりと自生しており、真夏の朝には
きれいなピンク色の大きな花を咲かせるのが江戸からの風物詩。
冬になるとこれらが皆枯れて枯野ではなく、枯池、といった風情。
だが、少し前に作業員が池に入って枯れた蓮をきれいにしていたのを見た。
毎年この時期にやっていたのか不明だが、気が付いたのは
初めて。たまにきれいにしないと、伸び放題では
やはりいけないのであろう。
今では貴重な存在となった、ピンク映画館の脇を抜け、
ちょっとキモカワイイ緑のパンダ像。
信号を渡って、上野公園黒門口。
交番裏の灰皿前で一服。
再び中央通りに戻り、上野ガード下の歩道を渡る。
このガードはJRのなん本の線が通っているのか、幅広い。
幅広いが、御徒町に向かって東西、二組に分かれており
真ん中に一本通りが通っている。
二本の高架の高架下はずっと、店舗。
[クラウンエース]は東側の高架下。
両側から入れるが、高架と高架の間の通りから入って、
ショーウインドー脇に自転車をとめて、店に入る。
券売機でカツカレー500円也を購入。
カウンターはちょうど満席。
鏡の前で待ってくださいとのことだが、数秒であいて、
座る。
食券をおいて、まあ、一分以内に、カツカレー到着。
らっきょ、福神漬けを皿に取って食べる。
ペラペラの薄いカツではあるが、立派なカツカレー。
やっぱりここ、安いというのもあるが、
このカツカレーが一番出るのではなかろうか。
まわりを見ても半分以上はカツカレー、で、ある。
カレーソースとカツとの相性はわるくない。
こってり系といってよろしかろう。
それで500円である。それに見合って十分にうまい
カツカレーである。
そういえば、私はここでもカツカレー以外は
食べたことがない。(好物のカツカレーが500円である。
これは食べずにはいられない。)
メニューに合わせてソースがなん種類かあるのか、ないのか、
よくわからぬが。
真冬で昼時は少しすぎているが、この盛況。
お世辞にもきれいとはいえない店ではあるが、
私は好きである。
店の外観、外から見て、知らなければ、
怖いもの見たさ以外ではおそらくは心配で入れない。
書いたように、うまいカツカレーが食べられる
カレースタンドや、キッチン、グリルが少しずつ
姿を消している。
時間がたっても、時世が変わっても、うまいものはうまい。
これは不変の真理であろう。
真新しく、お洒落でなければいけないということは
もちろんないと私は思う。
まずいという人、きれいでなければいやだ、という人に
むろん無理に行ってもらう必要はない。
しかし、どこに行っても新しいが同じようなデザインで
同じようなものを食わせるのがよいことであろうか。
どうも東京の街はどんどんどこもそんな風に薄っぺらに
なっていまいか。
こういう店があること自体が、街の魅力というものでは
なかろうか。
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