断腸亭料理日記2017
1月30日(月)昼
月曜日、昼、五反田。
よい天気のうえに温かい。
春永(はるなが)という言葉がある。
旧暦の年明け1月になり日も段々に永くなってきた頃。
三寒四温。少しずつ、暖かくなってもくる。
なにかのんびりした気分あって好きな言葉である
そろそろ、そんな頃かもしれない。
近所に住む友人の勧めで課題の店であったのだが、
ちょっと遠いように思えて、行きそびれていた。
こんな時に、いってみようか。
TOCのそばの蕎麦や[遊庵]というところ。
五反田のオフィスに一年半も勤めていながら
TOCには行ったことがない。
駅方向とは反対側にはあまり行かないものである。
TOCというのは東京の方あれば聞いたことぐらいは
あるかもしれぬ。東京卸売りセンターの略。
まあ、ユニクロなどが入っているショッピングビル。
その他、ブランドのセール会場だったり、
あるいは私立大学の入学試験などにも使われている
複合施設。なかでもここは昭和42年創立で、
老舗といってよいだろう。
かなりの大きなスペースであるが、元はなんであったか。
五反田の歴史を調べているときに出てきたのだが、
その昔、戦前は、星製薬という製薬会社の工場であった。
かのSF作家星新一氏の父が創業した会社である。
日清、日露戦争後、明治終わりから、大正にかけて
大崎、五反田地区はそれまでの田園風景から一気に工業化、
続々と工場ができていった。
その工場を代表する会社の一つが、星製薬であった。
星製薬自体はかなりの企業になっていたが、急に業績が悪化し、
戦前には事業を清算、その後をホテルニューオータニの
大谷家が引き継ぎ、今のTOCを設立しているというわけである。
(星新一氏の父君、星一(はじめ)氏というのは、なかなかの風雲児で
あったらしい。「人民は弱し官吏は強し」など小説に新一氏が
書かれていた。全く知らなかったのだが、おもしろそうなので、
読み始めたところである。)
TOCは桜田通りと中原街道が東西入れ替わる手前で
両方に面している。
[遊庵]はその手前の住宅地の中。
ちょっと目立たない場所のよう。
テクテク歩いて、向かう。
目黒川を渡り、山手通りも渡る。
渡れば、意外にTOCは目の前。
思ったよりも近い。
10分もかからなかったであろう。
このくらいなら、もっと前にくるのであった。
向こう側がTOCのビル。
知らなければとても入れない佇まいである。
入ってみる。
昼ちょいとすぎたところだが、かなりにぎわっている。
一人といって、相席でテーブルに掛ける。
事前に調べてきたのだが、昼はご飯ものとの
セットもあるよう。
小海老かき揚げ天丼ともりのセット、1,000円也を頼む。
お昼である、さほど待つこともなく、きた。
アップ。
これはちょいと変わっているのではなかろうか。
緑色をしている。
つゆをつけずにそばだけで食べてみる。
う〜ん。
香、なのか、、、、多少違うようだが、そばの香りは
私には、よくわからない。
つゆにつけて、手繰る。
のど越しもよい。
つゆは私の東京下町の濃いものに慣れた舌でも十分な濃さ。
むろん吟味をされたのものなのであろうが、
つゆにつけたときの方が、香がよく感じるのは、
気のせいか。
なんでもここのは二八のそばだが「そばの若葉と、丸抜きの
緑を加えています」とのこと。
丸抜きというのは“殻”を取った状態のもので、緑色のよう。
これを粉にして混ぜているということか。
ともあれ、うまい、うまい。
夢中で手繰る。
食べ終わり、かき揚げ天丼にかかる。
ちょうどよいサイズ。
ちょっと軽めの衣で、私の好みとすれば
もう少し、しっかりとしていてもよいかとは思うが、
十分にうまいかき揚げ天丼、で、ある。
うまかった。
御馳走様でした。
勘定をして、出る。
二階もあって、私が食べている間にも、近所のサラリーマンらしき
4人組などなどお客はどんどん入ってきていた。
地元客にも流行っている店である。
毎度私が書いている「趣味そば」。
脱サラかなにかで、そば打ちの修行をして、店を始めたような
蕎麦や。妙に態度がでかかったり、そのくせ蕎麦以外の料理は
からっきしの素人料理であったり。しかし、カリスマ人気のようなものまで
出てきているところもある。皆さんも思い当たる店があると思われる。
たいていは、居心地がわるい。
結局、蕎麦の師匠かなにかのつもりなのか、
客商売であるという意識がないのであろう。
まあ、私は、そういうところには近づかかないことにしているが。
ここはそういう意味では同じ「趣味そば」というジャンルの蕎麦やに
入ると思うのだが、間違いなく、お客の方をちゃんと向いている。
よい蕎麦やではなかろうか。
品川区西五反田7-13-11 TOCビル近く
03-5487-2136
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