断腸亭料理日記2017

東海道・丸子宿・丁子屋とろろ汁

その2

引き続き、東海道丸子宿の[丁子屋]さんから
届いたお礼のとろろ汁セット。

自然薯、自家製味噌、押し麦、たれ。
これに店名入りのあたり鉢、あたり棒、飯茶碗。

具なしの味噌汁をまずは作るのだが、
このために、濃いめに鰹出汁を取る。

この削り節は鰹削り節。

昨日写真を出した自家製味噌。
これは開けてみると、米麹由来の米粒の残ったもの。
今時珍しい。

子供の頃は東京でもこういう味噌も売られていた
と思うのだが、ほぼ私などでも、記憶にない。
もはや消滅していたのかもしれない。
この手の昔の味噌はこのまま出汁に溶くと、
米粒が残ってしまう。
まあ、別段それでも味にはなんら問題はないのだが、
一般には濾したり、あたり鉢で潰したりしていたわけである。
昔は味噌こしという竹製のざるのようなものが各家庭にあった。

折角なので、届いたあたり鉢であたろう。

ここに、濾した鰹出汁を加え、のばしておく。

味はやはり濃いめがよいだろう。
結局これが具なしの味噌汁ということである。

さて、麦飯の方。

30%というのは白米7に対して麦3、こういうことか。

二合の麦飯を炊くとすると、一合150gとして、二合300g。
300gの30%で麦は90gでよいのか。
米と麦、きちんと計る。

麦も普通に研いでよいのか、よくわからぬが、
米と共に研いで、浸水しておく。

麦飯の炊きあがりに合わせてとろろ汁を
作ろう。

30分ほど浸水させて、電気炊飯器のスイッチオン。

炊きあがり、20分前を目安に、自然薯をおろし始める。
二本分。

まずは、ひげ根をガスの炎で焼いて取る。

そして軽く水洗い。

おろすのはあたり鉢ではなく、おろし金。
皮はむかない、そのまま。
自分でもいつもこうだが、これは[丁子屋]さんの
レシピ通り。

やはりよいものなのであろう、
見よ、強力な粘り気。

二本。

おろし終わったら、ここにうなぎのたれ。
全卵溶いたもの、1/4個分。

うなぎのたれは、しょうゆと甘み、のための
調味料なのであろう。ただ、ほんの少量。
なぜうなぎのたれ、なのかはよくわからぬ。
この店ではそうしている、ということなのか。

玉子も私だと、全卵一個分を入れてしまうのだが。

最初は、レシピ通りにしてみよう。
ここに先ほどの具なし味噌汁を入れてのばしていく。

味をみながら。

OK、よいかな。

麦飯も炊きあがった。

蒸らし時間も白飯同様とる。

セットの[丁子屋]さん名入りの飯茶碗に麦飯をよそう。
この飯茶碗は、丼まではいかないが、飯茶碗にしては
随分と大きなもの。
それで、軽めに。

漬物も出す。

飯茶碗の麦飯にとろろ汁をかけ、レシピ通り
青海苔なんぞもふる。

味噌味のとろろというのは、私は
始めてではなかろうか。

東京だと、私のご近所、浅草駒形の[むぎとろ]が
代名詞ともいえるような店である。
あるいは、そばやのとろろなども然り。
つまり、しょうゆで味付けをするのが、
一般的のはず。
私の舌もその味に慣れている。

味噌味なのであるが、味噌味らしい感じがするわけではない。
考えてみれば、しょうゆでもしょうゆらしい味がする
というわけではない。まあ、それだけとろろの味が
強いのであろう。

ただ、しょうゆで味付けしたものとは、
明らかに違う、のはわかる。

どう違うのか。

なんとなく、マイルドな感じ?。
ちなみに、この[丁子屋]さん自家製味噌は
米麹粒が残っているが、味は特段変わったところはない
塩味もそこそこに強い、米味噌の味、である。

しかし、なぜ味噌なのであろうか。
昔からなのであろうか。

濃口しょうゆというのは、江戸時代それも
関東で生まれているが、時期は元禄から享保といわれている。

むろんこの店の創業より後、で、ある。

やはり、味噌で味付けするというのは、
古い、古い味付け、なのであろうか。

ともあれ、うまかった。

さて。

とにもかくにも、東海道丸子宿とろろ汁[丁子屋]さん。
これもまた、東海道の重要無形“食”文化財といって
なんら問題はなかろう。

広重に描かれた茅葺屋根のまま、そして味噌味の
とろろ汁の味とともに、末永く続いていただくことを
こころからお祈りしたい。
また、そうあらねばならぬように、私は考える。





元祖・丁子屋





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