断腸亭料理日記2016
10月10日(月)体育の日 夜
さて。
連休最終日は、夜の歌舞伎座。
昨今話題の、中村橋之助改め八代目中村芝翫襲名披露、
十月大歌舞伎。
正直のところ、是非とも観なければ、というほどでも
なかったのだが、口上と松緑の演る「外郎売」も観てみたい。
それから、玉三郎が藤娘を踊る。あまりにも有名な、
踊りで、トウシロウの私でも名前だけは知っている。
それを当世最高位の女形、人間国宝がどう踊るのか、これも
観たい。そんなことで、夜を取ってみた。
さすがに人気のようで、直前にはほぼ満席であった。
だいぶ涼しくなったので、着物がちょうどよい。
いつものこげ茶のお召に深緑の羽織。
白足袋に雪駄で、出掛ける。
稲荷町から銀座線に乗って、銀座で降り、
歌舞伎座前の、木挽町[辨松]で赤飯の二段の弁当を買う。
開場は16時。
席は一等だが気持ち上手側、後ろの方。
祝いの引幕。
なにやらモダンなデザイン。
演目と配役を写しておく。
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芸術祭十月大歌舞伎
平成28年10月2日(日)〜26日(水)
夜の部
平成28年度(第71回)文化庁芸術祭参加公演
野口達二 改訂
一、歌舞伎十八番の内 外郎売(ういろううり)
外郎売実は曽我五郎 松緑
大磯の虎 七之助
曽我十郎 亀三郎
小林妹舞鶴 尾上右近
化粧坂少将 児太郎
近江小藤太 宗生改め福之助
八幡三郎 宜生改め歌之助
茶道珍斎 吉之丞
小林朝比奈 亀寿
梶原景時 男女蔵
工藤祐経 歌六
八代目中村芝翫 四代目中村橋之助 三代目中村福之助 四代目中村歌之助
襲名披露 口上(こうじょう)
橋之助改め芝翫
国生改め橋之助
宗生改め福之助
宜生改め歌之助
藤十郎
幹部俳優出演
一谷嫩軍記
三、熊谷陣屋(くまがいじんや)
熊谷直実 橋之助改め芝翫
相模 魁春
藤の方 菊之助
亀井六郎 歌昇
片岡八郎 尾上右近
伊勢三郎 宗生改め福之助
駿河次郎 宜生改め歌之助
梶原平次景高 吉之丞
堤軍次 国生改め橋之助
白毫弥陀六 歌六
源義経 吉右衛門
四、藤娘(ふじむすめ)
藤の精 玉三郎
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襲名披露興行というのは、落語では観たことがあるが、
歌舞伎では初めて、で、ある。
橋之助改め芝翫という役者は、私にはかなり馴染みがある。
51歳で同世代。
また、平成中村座に出演(で)ていたからか、この人の出ている
舞台はなん度も観ている印象がある。
いい男でありながら、あたりが柔らかく、男から見ても
好印象の役者。
我々世代のアイドルでもあった三田寛子の旦那、というのも
印象を強くしていたのかもしれない。
さて、夜の部最初が「外郎売」。
歌舞伎十八番のうちの一つ。
主演は尾上松緑。
ういろううり、と読む。
ういろうといっても、名古屋名物の羊羹のようなあのお菓子ではなく、
小田原に今でも店があるが、江戸以前からある薬のことである。
つまり、外郎売は外郎という薬売りのこと。
一方で「外郎売」というのはアナウンサーだったり
役者を志す人は必ずといってよいほど稽古をさせられる
早口言葉であった。
実際に、この芝居の中で言い立てられる口上がそれ、
なのである。
私、高校時代、放送部に所属しており、
実のところ早口言葉としての「外郎売」は
今でもさわりだけは、暗誦できたりする。
むろん早口言葉の練習として暗誦していたのだが、
こういうものがなぜか好きだった。
こんなことも後に落語を自ら演ってみたいなどと
思うようになる素地だったのかもしれない。
この芝居を生で見るのは初めて。
ただ以前からどうしても観ておきたくて、
亡くなった團十郎のDVDを買って観てはいる。
初演は古く、享保3年(1718年)江戸森田座。
『若緑勢曾我』(わかみどり いきおい そが)という芝居で
二代目市川團十郎。
享保なので吉宗の頃で、江戸もちょうど真ん中。
ただ、歌舞伎の歴史で見れば、團十郎が二代目なので、
特に江戸歌舞伎においては、まだまだ初期といってよろしかろう。
つづく
九代目市川團十郎の虎屋東吉(鳥居忠清画)
ウィキペディアより
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