断腸亭料理日記2016
11月21日(月)夜
月曜日。
例によって、栃木からスペーシアで
浅草まで戻ってくる。
いつも同じ列車なので、決まって19時15分着。
なにを食べようか、道々考えてきた。
相変わらず風邪が抜けない。
今日は一日曇り。
日が暮れて、薄ら寒い。
温かいもの、、、、、
ん!!!。
そうである。
並木の[藪蕎麦]で、鴨なんばん。
いわずとしれた、池波レシピ。
この前きたときのは9月で、まだ時季前であった。
うん。
いい季節になってきた。
まさに食べごろ。
今日は、鴨なんばんの日和である。
前回もそうであったがこの列車で帰ってくると
7時半の閉店まで15分。
店にとってはまったくもって、迷惑な客、
なのかもしれぬが、やっぱり食べたい。
ドアが開くと、ダッシュ。
改札を抜けて、エスカレーターを駆け降りる。
馬道を右側に渡る信号は赤。
道の左右を見ると車はこない。
ごめんなさい、許して!。
渡ってしまう。
こちらが赤、ということは、雷門通りを
渡る信号は青。
渡ってどんどん走る。
雷門前は赤。
左に曲がって、並木通りを走る。
次の信号は青。
渡って[藪蕎麦]が見えてくる。
例によって、表の看板の灯りは消えているが
暖簾は出ている。
これはいつもの店仕舞い態勢。
暖簾を分け、硝子戸を開けて、入る。
指を一本出して、
一人、
まだ大丈夫ですか?。
お姐さん、こちらへと、
入口に近いテーブルを示す。
店奥を背にして掛ける。
お姐さんがそこに立ってるので
早く頼まねば。
もちろん、、、
お酒お燗と、、、
鴨なんやって、、、はい、、、鴨なん。
夕刊が置かれて、すぐにお酒がきた。
ぬるくもなく、熱くもなく。
ただお燗といえば、これでなくてはいけない。
硝子の向こうに、暖簾が見える。
「藪 蕎 麦 脇に縦書きで、並木」。
と、くつろいで呑んでいる場合ではない。
やっぱり、お急ぎモード。
すぐに、きた。
これが、並木の[藪蕎麦]の鴨なんばん。
小ぶりのどんぶり。
薬味はねぎが山盛りに、おろししょうが。
アップ。
久しぶりのような気がする。
こんなであったか。
脂身のたっぷりついた鴨肉三切れ。
鴨肉のつみれ。
左側にちょっと沈みぎみだが、脂身。
手前に長めに切られた、白いねぎ。
ねぎをかき分けて、そばからすする。
ほっか、ほかのそば。
からんだつゆがまた、格別。
ここの家のしょうゆの濃いつゆに、
鴨の脂とだしが相まって、まさに
堪えられぬ。
たまらず、つゆもすする。
鴨肉は別に焼いたものを入れるところもあるが、
ここはつゆで火を通しているが、
むろん柔らかい半生。
つみれは粗い食感で存在感がある。
ねぎがまた、これ以上ないような
火の通り具合。
やはり、これ以上過不足のない絶妙な
鴨なんばんで、ある。
つゆも全部飲み干す。
他のお客さんもみんな帰ってしまった。
お勘定、お勘定。
お姐さんと、旦那まで出てきて、
なん度も、仕舞際(しまいぎわ)で相すみません、と。
いえいえ、こちらこそ、こんな時刻に
すみません。
ご馳走様でした。
温まった。しあわせ、で、ある。
03-3841-1340
台東区雷門2丁目11−9
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