断腸亭料理日記2016

浅草・並木藪蕎麦

6月22日(火)夜

栃木からスペーシアで浅草まで帰ってきた。

なぜ、というほどのことはないのだが、
今日は、電車に乗る時から[並木藪]に
寄ろうと考えていた。

19時15分、東武の浅草駅から出てくる。

[並木藪]は19時半までなので、急ぐ。

雷門通りから並木通り。
近くまでくると、、、、
看板の灯りが消えている。

あれ、もう閉店か。
だが、暖簾は出ている。

硝子格子は開け放たれている。

入って、お姐さんに、聞くと、
7時半までですが、といわれるが、
まだ大丈夫のよう。

よかった。

蕎麦の頭で来て、この時刻、ここにふられると、
次の展開が、なかなかきびしいことになる。

テーブルは一杯なので、座敷に上がる。

ウイークデーのこの時刻でも、にぎわっているのは
なにより。

お膳の下に重ねて置かれている座布団を出して、
胡坐をかいて、座る。

さて。

こう暑くなってくると、ビールなのだが、
[並木藪]では、やっぱり酒、であろう。

お酒、冷(ひや)で
肴は、板わさだ。

実は、鴨せいろでも食べたいと、思ってきたのだが、
そもそもここはあるのは鴨南蛮で、鴨せいろはないし、
その鴨南蛮も、冬だけ。

鴨せいろのつゆで、冷酒(ひやざけ)を呑む、というのを
多少妄想していたのであった。

と、お盆が置かれた。

?!。

板わさと、瓶ビール。

あれ?。

ビールが呑みたいと思っていたのは確かなのだが、、、

ビールって、いったっけ?。

お酒、冷で、といったはず。
私、夢を見ていたか?!。

まあ、いいか、呑んでしまおうか、と、
思いかけた、、のも事実ではあるが、
やっぱり、決心をして冷酒を頼んだのだから、
お姐さんに、冷を頼んだはず、といって、
替えてもらう。

お姐さん、かなり恐縮されて、、
自分自身、そこまでの確たる自信はなかったりし、
かえって申し訳なくなってしまう。

ともあれ。

きたきた。

板わさと冷酒。

蒲鉾をつまみながら、冷なので、がぶがぶ呑んでしまう。
菊正の薦被り、樽の香りが芳(かぐわ)しい。

そばは、と。

冷たい山かけ、、、。
ここには、ぶっかけのような、つゆで伸ばした
とろろをかけた冷たいものがある。

これは残念、お仕舞。

では、もりを二枚。

一先ず、一枚。


こののど越し。
堪らないものがある。

酒と蕎麦を同時に頼んでもそうだが、
ここはちゃんと食べ終わるのを見計らって
二枚目を出してくれる。

これを行き届いたサービスというのであろう。
以前は東京の蕎麦やでは常識であったと思われる。
今や、風前の灯。
気を使ってくれるところを探す方がたいへんである。
こういうことこそ流行りの“おもてなし”の肝(きも)だと
思うのである。
以前の東京にも、ちゃぁ〜んとあったのである。
『趣味そば』なんぞでは、まあ、こういうものであったことすら
知らない店も多かろう。
酒と蕎麦を同時に頼んでも、一緒に持ってこない
くらいは常識だったのである。

ともあれ。
一枚片付けて、もう一枚。
つゆも薬味も、新しいものを出してくれる。

食べ終わる。

さすがに、二枚食べれば、いい腹具合。

勘定をしてもらって、立つ。

〆て3,000円也ぴったり。

先ほどのお姐さんは、まだ恐縮してくれている。

浅草並木の[藪]蕎麦。

大切にしたい蕎麦やである。

03-3841-1340
台東区雷門2丁目11−9




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