断腸亭料理日記2016
1月3日(日)
正月三日。
今日は歌舞伎座。
毎年、正月には歌舞伎を観に行くことにしている。
この正月は、東京では歌舞伎座、国立、新橋演舞場、
浅草の四座で演っている。
まあ、例年のことであろう。
このうちどこがよいか。
国立は毎度の通り、通しの上演。
書いている通り、私のような歌舞伎初心者は
作品全体を知ることができる通しを観ることが
最もよいと考えている。
正月の国立は黙阿弥先生なのだが、ちょっと
聞いたことのない演目。
あまり食指が動かない。
新橋は海老蔵一座。
浅草はいつものように、若手、花形。
歌舞伎座はとみると、例によって
幕ごとに違う芝居。
これは、ちょっと、どんなものかと思いながら
演目を見てみると、夜の部に「直侍(なおざむらい)」
(雪暮夜入谷畦道)というのがある。
これは「天衣紛上野初花」という演目の一部。
私の好きな黙阿弥先生作で「河内山宗俊と直侍」
などとも呼ばれていて、私は2010年の新橋演舞場
で「天衣紛上野初花」を通しで観ている。
その後、黙阿弥先生に興味を持ち始め、
多少、調べていく中で、この芝居の持つ意味合いのようなものを
知って、是非もう一度観てみたいと思っていたものである。
そこで通しではないが、歌舞伎座にしようと決めた。
そして、取ったのは三日。
芝居は元旦からではなくて、一月二日が初日で三日は二日目。
昨日書いたように暮れから熱が出て寝込んでいたのだが
なんとか起き上がり、着物を着てマフラーをして
トンビのコートを着て内儀(かみ)さんと出かける。
妙に暖かい日。
歩くと汗ばむほど。
稲荷町から銀座線に乗って銀座。
三越の地下で弁当を買って、歌舞伎座まで歩く。
4時すぎに昼の部がはねて、夜は4時半開演。
今回の席は、上手側、前から4列目。
演目と配役を書き出しておく。
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壽初春大歌舞伎
夜の部
一、猩々(しょうじょう)
猩々 梅玉
酒売り 松緑
猩々 橋之助
吉田絃二郎 作
二、秀山十種の内 二条城の清正(にじょうじょうのきよまさ)
二条城大広間の場
淀川御座船の場
加藤清正 幸四郎
大政所 魁春
豊臣秀頼 金太郎
井伊直孝 松江
池田輝政 廣太郎
斑鳩平次 錦吾
浅野幸長 桂三
藤堂和泉守 高麗蔵
本多佐渡守 彌十郎
徳川家康 左團次
三、玩辞楼十二曲の内 廓文章(くるわぶんしょう)
吉田屋
藤屋伊左衛門 鴈治郎
吉田屋喜左衛門 歌六
阿波の大尽 寿猿
おきさ 吉弥
扇屋夕霧 玉三郎
河竹黙阿弥 作
四、雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)
直侍 浄瑠璃「忍逢春雪解」
片岡直次郎 染五郎
三千歳 芝雀
暗闇の丑松 吉之助
寮番喜兵衛 錦吾
丈賀 東蔵
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松竹から配信された初日案内のメルマガには
「お正月の歌舞伎座ならではの豪華でみどころあふれる
見取狂言となっています。」
とある。
“見取狂言”。
この言葉、知らなかった。作品全部の“通し”ではなく、
様々な作品から人気のある幕を細切れに
上演するのを、こういうらしい。
ちょっと調べると、明治以降に通しではなく、
細切れの見取狂言の上演形態が出てきたという。
なんとなく、明治の時代と“見取狂言”は
関係がありそうである。
つづく
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