断腸亭料理日記2016

三筋・天ぷら・みやこし

2月7日(日)夜

日曜日、夜。

今夜は、天ぷら。

毎度お馴染み、三筋の[みやこし]。

先日、玉子とじで食べたが、白魚、で、ある。

節分もすぎて、旧暦でいえば新年、初春。
まさに白魚の旬、本番ということになろう。

「月も朧に 白魚の 篝も霞む 春の空
冷てえ風も ほろ酔いに 心持ちよく うかうかと
浮かれ烏の ただ一羽 ねぐらへ帰る 川端で
竿の雫か 濡れ手で粟 思いがけなく 手に入る百両

御厄払いましょう、厄落とし

ほんに今夜は 節分か 西の海より 川の中
落ちた夜鷹は 厄落とし 豆だくさんに 一文の
銭と違って 金包み こいつぁ春から 縁起がいいわえ」

毎度引いているが黙阿弥作歌舞伎「三人吉三」「大川端庚申塚の場」の
お嬢吉三の名台詞。

これが節分の夜。

途中、声だけ入ってくる厄払い。

文楽師の録音くらいしか聞いたことがないが、
「厄払い」という落語もある。

やはり「御厄払いましょう、厄落とし」といって
流して歩くという。

「あーらめでたいなめでたいな、今晩今宵のご祝儀に、
めでたきことにて払おうなら、まず一夜明ければ元朝の、
門に松竹、注連飾り、床に橙鏡餅、蓬莱山に舞い遊ぶ、
鶴は千年、亀は万年、東方朔は八千歳、浦島太郎は三千年、
三浦の大助百六ツ、この三長年が集まりて、酒盛りをいたす折からに、
悪魔外道が飛んで出で、妨げなさんとするところ、この厄払いがかいつかみ、
西の海へと思えども、蓬莱山のことなれば、須弥山の方へ、さらありさらり」

節分の夜、豆まきをしている家に入っていって、
こんな口上をいって、お祓いをし、祝儀や豆まきの豆をもらう。
ある種の門付習俗といってよいと思うが、こんなものがあった。

節分と年越し、大晦日、元日というのは、日付としては近いところにあるが、
節分は動くので必ずしも毎年同じではない。
ちなみに今年の節分は2月3日で翌日が立春。旧暦の元日は2月8日。

節分の「厄払い」は歌舞伎、落語に出てくるからには、
江戸、東京でも幕末、あるいは明治に入っても
ある程度残っていたものなのかもしれない。

「三人吉三」の大川端も、落語「厄払い」も、どちらにしても、
節分、新年、初春。めでたい、のである。

そこに登場するのが、白魚。

やっぱり白魚もめでたい。

と、いうことで、ご近所三筋の天ぷらや[みやこし]。
夕方、TELで一応予約し、18時に出かける。

カウンター手前、親方の真横にあたる席。

お通しはすみいか下足、ぽん酢和え。


 

いつもの通り、梅の定食5,000円也を頼む。

海老。

 


いつも通りうまい。

いか。

 

なんだか長いが、味は格別。

今日は親方の真横なので、揚げている手際がよく見える。
衣をつけて、とにかくポンポンと、種を油に放り入れている。
入れる時は手早く。
動作が丹念になるのは、種が油に入っている最中。
実に小まめに余計な天かすを網ですくう。
様子を見ながら種を返す。

きす。

 

めごち。

 

穴子。


 

野菜。


蓮根、アスパラ、椎茸。
厚切りの蓮根がうまい。

ん?。あれ、これで終わり?。

種が書かれた板には、白魚とあるが
梅には入らないのか。

白魚を食べにきたのである。追加でもらうおう。

 

けっこう大きなものでまとめずに一本一本で揚げている。

やっぱり初春の縁起物。

めでたく、乙なものである。

天丼。

 

この店では、芝海老の方が多いかもしれぬが、
これは芝海老ではなく、小柱。

衣からほろほろほどける小柱がなんともうまい。

大満足、腹一杯。

ご馳走様でした。

今年もよい年になりますように。


台東区三筋2-5-10 宮腰ビル1F
03-3864-7374


 

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