断腸亭料理日記2016
引き続き、東京の“路麺”と小島町[アヅマ]のこと。
東京の“路麺”が、昭和30〜40年代にできている、
ということ。
今流行りの言い方になるが、文字通り“昭和”の業態
と、いってよい、のであろう。
たくさんの種類の天ぷらを用意してお客を待つ。
そばは茹で麺。
値段はかけだと[アヅマ]は290円。
天ぷらは、多くが100円。
つまり390円で食べられる。
店とすれば、かなり薄利の商売であろう。
長年通っているとわかるのだが、季節によっても売上には
差があると思われる。
ここには冷やし、も、あるが、やはり真夏にはお客は少なくなる。
(まあ、これはラーメンやなども同様であろうが。)
やはり、そうそうよい商売ではないのであろう。
昭和の業態?。
いずれなくなってしまうのではないか、
と、心配に思っていた。
ここ[アヅマ]は、カウンターが二つ、出入口も二つある
ちょっとへんな造りをしている。
以前は、片方はラーメンやであったらしい。
ラーメンやの方がなくなり、間の壁の取り払って、
今は、立ち喰そばのみに店になっている。
働いている方は4人〜5人。
そう大きな店ではないので、果たしてこれで
やっていけているのか、人数が多いのでは、
と以前から思っていた。
また、やはり古い業態ゆえか、皆、見た目にもわかるほどの、
高齢であった。
それが、昨年あたりであろうか、少し若めの方
と、いっても40代ぐらいであろうか、が二人、三人、
入って、世代交代をしようとしている様子があった。
つまり、重なって働いて仕事を憶えるというような。
それが最近は、高齢の方々の姿は見えなくなり、
若い方の方々に完全に入れ替わった様子。
つまり、代替わりが成功したようなのである。
全員の顔をちゃんと覚えていたわけでもないので、
なん人が入れ替わったのか正確にはわからないが、
近所のお客としては、まだまだこの店が続く可能性が
高まったということはとてもありがたいことである。
人が入れ替わっても、店自体はなにか変わったということはなく、
下町らしいしょうゆ勝ったつゆの味もおそらく変わっていない。
天ぷらの品数も変わっていない。
私は食べないが、ここはご飯もあって、そばとご飯の定食、
天ぷらをのせて、天丼。
さらに“路麺”には珍しく、かつ丼、カレーまである。
私自身は食べないのでなんとも言えないが、
もしかすると、このあたり、この店のアピールポイント
なのかもしれない。
しかし、不思議なのはこの店の主人というのは誰なのか。
人が替るくらいなので家族でやっているという感じでもない。
働いている人たちもあまり口数が多くはないので
言葉でもよくはわからないのだが、誰かが主人、あるいは店長で
というような上下関係のようなものもなさそうだったのである。
代替わりについて、採用活動でもしたのか。
どういうことをしていた人が入ったのか。(顔はわかるが。)
昭和の業態“路麺”で働こうと思ったのはなぜか、なんとなく
興味があるではないか。
さて。
寒い師走の朝。
寄って食べていこう。
冬らしく、スツールはほぼいっぱい。
店に入って、あきを見つけて、スツールに掛ける。
掛けると空のグラスが置かれる。
水は後ろにある冷水器から、セルフサービス。
だが、私は置いたまま。食べ終わってから。
頼むのは春菊か、野菜かき揚げとほぼ決まっている。
比率とすれば、春菊の方が圧倒的に多い。
後ろに写っている木製の棚が、使い込まれてしなっている。
前にいる小父さんに、そばで、春菊、と、頼む。
ここは、だれがどこの担当ということはないようで
注文された人が、作って出す。
丼にあらかじめ一玉そばが入れて並べてあり、
その一つを取って、湯通し。
その間、湯を丼に張って丼を温める。
そばの湯を切って丼に入れた湯も捨てて、
そばを入れ、つゆを張る。
ケースから春菊天を取って、のせて出す。
はい、390円。
むろん、私は用意して待っている。
細かいのがなく、500円玉。
ねぎを入れ、お釣りをもらう前に食べ始める。
箸をつける前に、春菊をつゆに押し込む。
やっぱり、天ぷらの入ったそばは、つゆに衣が浸って
ふやけたのが、うまい。
“路麺”の天ぷらでもいろいろあって、カリカリ系のところもあり、
また、最初からシナッとしているところ、中間のところとある。
ここは、どちらかといえば、シナッとした柔らか系。
どちらもうまい、のだけれど。
そばをすすり、シナッとした春菊天をかじる。
丼を両手で持ってつゆもすする。
うんうん、やっぱりこのくらいキリッとしょうゆが
強くなければダメ、で、ある。
東京でも駅そばや山手のは、薄い。
食べ終わり、空のグラスを持って冷水器までいって
半分ほど注ぎ、飲み、カウンターへ返す。
ご馳走様ぁ〜。
ありがとうございましたぁ〜。
台東区小島2-20-6
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