10月20日(火)夜
夜、市谷のオフィスからの帰り道。
今日は上野広小路の[井泉]でとんかつを
食べて帰ろうと、思い立った。
[井泉]というのは上野御徒町、上野広小路駅から
上がってすぐで、便利。
そして、上野の老舗とんかつや三軒の中でも、最も
気軽に入れる。
この二点で重宝している。
大江戸線から上がってきて、上野広小路亭の角に出てくる。
[井泉]はこの裏。
どちらからまわってもよいのだが、春日通りではなく、
広小路側からまわる。
鈴乃屋の前には都バスのバス停があるのだが、
このバス待ちの人々に加えて、大量の欧米系の
外国人観光客がいる。
ちょうど、彼らの乗る観光バスの迎えがきたところのよう。
上野御徒町あたりはどちらかといえば、場所柄からアジア系の
観光客が多いような気がしていたが、まあ、そんなことも
ないのかもしれない。
なんにしても東京がにぎわってくれるのはありがたいこと。
角を曲がってもう一度曲がって、路地に入り右側。
ほんとうに小さな木造建築である。
暖簾が下がる表口など、風情があるのだが、
二つある出入口など、なん回か増築をしているような、
変わった造り。
建て替えたりするつもりはあるのであろうか。
おそらく、戦後のこの界隈が花街として最後に栄えた頃の
面影をとどめているのだと思われる。
小洒落たビルなんぞにするよりも、このままの方が
ファンとしては断然よいのだが。
暖簾を分けて格子を開けて入る。
一人、といって、手前のカウンター、一番左、
窓のそばに座る。
アクリルであろうか、透明な仕切りの板があって
とんかつを揚げる油の正面。
あいていれば最近はたいていここに座る。
道々、なにを頼むか考えてきた。
と、いってもいつもと同じなのだが、
かにときゅうりのサラダと特ロースかつ。
ビールをもらって、待つ。
アルコールを頼むとお通しの塩辛がいりますか、
と聞いてくる。これは有料。
いかの塩辛なのであるが、一、二度もらったことはある。
なぜこれなのか、不思議といえば、不思議である。
満席にはならないが、お客は切れずに入ってくる。
若い女性一人でカウンターに座る。
年配のサラリーマン風二人組。
よく喋る、おばさん4人が後ろのテーブル席に座る。
サラダがきた。
カニの肉が入った、きゅうりのコールスローのような
ものなのであるが、まあ、他では見たことがない。
薄く切ったきゅうりがパリパリ。
どういう技を使っているのか。
これがうまい。
つまみながらビールを呑む。
中の調理場は3人。
揚げているのがご主人であろうか。
そしてご主人そっくりの顔にそっくりの眼鏡をかけた
若い二人。息子さんなのであろう。
お父さんはさほどでもないが、息子さんは
二人とも大きなお腹で、かなり恰幅がいい。
お兄さんらしき方が、揚がったかつを専用のまな板にのせて
ザクザクザクと、切る。
きた。
肉もさることながら、
ここの衣はやはり独特であろう。
目の前で見ているのでわかるのだが、
大きめに砕かれた生パン粉をたっぷりとまとわせる。
これをふんわり、カリカリに揚げているのである。
香りもよい。
とんかつ、いや、フライものの衣というのは、小麦粉と玉子の部分と
そこにまぶされたパン粉に分けられる。
これは単純なようにみえて、恐ろしく複雑で
無限のバリエーションがあると思われる。
私もフライものを揚げるので多少は理解できる。
それぞれの量や割合、パン粉の形状、質、量の組み合わせ。
これらがとんかつや、洋食やによって、微妙に違っている
わけである。
どんなものが最もうまいのか、むろん一つではなかろう。
その中でこの家のものは、最もうまいある一角を占めていると思われる。
そして、この家のキャッチフレーズ通りの
「箸で切れる」柔らかい肉。
うまみも十二分。
ご飯と豚汁はいりませんか、とお姐さんに聞かれた。
豚汁は惹かれるのだが、食べすぎを考えて、
やっぱりやめておこう。
うまかった。
ご馳走様です。
春日通りに出てバスで帰宅。
井泉本店
文京区湯島3-40−3
TEL 03-3834-2901
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