11月14日(土)夜
土曜日。
冬も近付いてきた。
鴨の季節。
今は養殖されており、またタイ産などのものもあり
冷凍肉で四季に食べられるが、本来は冬のものであろう。
鴨は渡り鳥で北からきて、春には帰る。
季語としても冬。
鴨啼くや上野は闇に横はる 子規
現代の東京の水辺にも鴨はいる。
もちろん、不忍池にも。
(夜に鴨が鳴くのかは、知らないが。)
皇居お濠のカルガモは有名であるし、
少し前に、浜離宮の池、旧鴨場であろうか、膨大の量が
群れているのを見たことがある。
ともあれ。鴨鍋、で、ある。
いつも鴨肉を買うのは、ハナマサだが、
今日は内儀(かみ)さんが、上野松坂屋で買ってきた。
鴨もピンキリ。
北海道のもので、随分としたそうな。
鴨鍋は池波レシピ。
鴨は脂たっぷりだが、先生はやっぱりこういうものが
お好きであったのであろう。
作品にもちろん出てくる。
入れる野菜は、カモネギというくらいで、ねぎ。
または、芹(せり)。
ねぎは皆さん先刻ご承知であろうが、芹も昔から鴨鍋には
定番であった。
味付けも池波作品には二種類出てくる。
すき焼きのように甘辛で焼くもの。
これは、軍鶏鍋などでも使われて、江戸・東京の鍋の味付けの
定番であろう。
また、もう一つはしょうゆに酒を加熱し
アルコールを飛ばした、鮨やでいう、ニキリで
食べるもの。
東日本ばしの合鴨の老舗[鳥安]もこちら、で、ある。
シンプルであるが、これはねぎと絶妙に合う。
([鳥安]はねぎではなく大根おろしを薬味にするが。)
鴨肉。
さすがに国産、冷凍ものではなかろう。
脂もたっぷりあり、赤身の肉の部分も大きい。
ねぎ。
ねぎは斜めに切って、ほぐれやすいように縦にも
包丁を入れたものである。
入れるのはねぎだけ。
寂しいと思われるかもしれぬが、これがよい。
池波先生も書かれているが、東京下町の鍋は基本、
メインの具材一種に、野菜一種が決まりである。
駒形[どぜう]なども開かないどぜう丸ごとの丸鍋も
下拵えはしてあるが、どぜうのみにねぎだけ。
鬼平に出てくる軍鶏鍋もレバーや皮を含めた鶏肉と
野菜は牛蒡の笹がきのみ。
ゴチャゴチャ入れない。
この方が、それぞれの味に集中できる、というもの
である。
ニキリも作っておく。
鉄鍋をコンロにかけて熱し、熱くなったら、
脂身を先に入れ、脂を全体に行き渡らせる。
OK。
肉とねぎを入れ、焼く。
鴨肉の赤いところは、すぐに硬くなるので、表面の色が変ったら
取らねばならない。
ねぎは、柔らかくなればOK。
小皿に取って、ニキリをかけて、
食べる。
甘辛で玉子をくぐらせる、すき焼き式もむろんよいのだが、
しょうゆ味だけ、というのはなんともおつ。
江戸っ子好みの食べ方ではなかろうか。
鴨肉からはたっぷりと脂が出るが、これを
長ねぎがからめ取ってくれる。
これがなんとも堪らない。
このためにねぎをほぐれやすく切っておく、のである。
そして、この脂のからんだねぎには、
甘くないしょうゆのみの味が、最上である。
鴨にしても、ねぎにしても、これは甘辛のものほどくどくなく、
いくらでも食べられてしまう。
また、酒がすすむこと、夥(おびただ)しい。
うまい、うまい。
東京でも、鴨は蕎麦やなどでも昔から出て、
好まれた食材であろう。
そして、蕎麦やでも鴨なんばん、鴨せいろなど、
しょうゆの甘辛。
しょうゆだけで食べる鴨鍋。
いわば変化球であるが、切れのよさは抜群である。
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