断腸亭料理日記2015

納豆飯

5月28日(木)朝

木曜日。

朝、多少時間があったので、
家で飯を食うことにした。

冷蔵庫にあった冷飯と納豆、で、ある。

最近、納豆は身体によいというので、
積極的に食べられるようになり、また、
匂いを抑えたものが売られるようになり、
以前はあまり食べられていなかった関西でも
食べられるようになっている。

納豆というのは、うまいものである。

私などは父方は東京であるし、
子供の頃から、納豆というのは
朝飯としては定番で、子供の頃から
好きな食いものであった。

身体によいから、ということではなく、
うまいから食べたいという種類の食いものである。

なにか料理をするのではなく、
そのままで酒の肴にすることもある。

さて、納豆の歴史などんなものか。

ウィキペディアなどで調べてみたが、
実際にはほとんどわかっていないといった方がよさそうである。

あの糸を引く納豆は、室町時代には文献に出てくるようで、
食べられていたということはわかるが、いつどのように
生まれてきたのかなどは、詳らかにはわかっていない
ようなのである。(八幡太郎義家が広めたなんという伝説(?)もあるよう。)

今の納豆の製造方法は、あの発泡スチロールの容器に
大豆の煮豆を入れて納豆菌を添加しそのまま保温、
納豆にしている。
元来は、ご存知のように藁苞(わらづと)に煮豆を入れて、
保温することによって藁にある納豆菌が豆に移り
醗酵させていた。

大豆は縄文の頃には伝わっていたという。
それで、稲作を始めた弥生時代には納豆はできたのではないか、
ともいうが、やはり詳細はわかっていないよう。

納豆を食べてきた地域が偏っていることも、不思議である。

盛んに食べられている(きた?)のは、関東以北。
それも北関東から東北に比重があるようである。

そして、さらに妙なのは飛び地のように
西日本でも熊本県だけは、盛んに食べられてきた
ということ。しかし、この理由も明解な説明はないようである。

ともあれ、少なくとも、江戸時代、江戸などでは
庶民の食いものとして、一般化していたのではあろう。
落語などでも売り声を披露する時には納豆売りの
「なっとなっと〜〜」と、朝売りにくると、語る。

また、私などの父、祖父母も、東京大井町あたりであるが、
大正、昭和初期頃のことであろう、子供が小遣い稼ぎなどで
朝、売りにきていた、というのを聞いたことがある。

今、納豆は茨城をはじめ、全国ブランドメーカーのものが
売られているが、以前、明治大正の頃は
どうであったのであろうか。

おさらく日持ちもしない生鮮食品に近いものなので、例えば、
東京で売られていた納豆は遠くから運ばれたものではなく、
東京で作られていたのではなかろうか。
(このくらいのことは古い統計でも調べればわかりそうではある。)

すると、これ、もう少し調べると
「ミツカン」のページにこんなものがあった。

江戸中期以降のこととして

「ざるにワラを敷きその上に大豆をのせ、室(ムロ)に入れて
ひと晩発酵させた「ざる納豆」が一般的で、
このざるを天秤棒で担いで量り売りをしていた」

とのことである。ほう、「ざる納豆」知らなった。

また、関東でも北関東、さらに東北の方がよく食べられている
というのもちょっと不思議である。なぜか。
明治以降のことなのか、さらに歴史的なものなのか。

ともあれ、熊本はさておき、主として東日本で食べられてきたことは
間違いなさそうである。

寒冷な東北地方などで食べ物の少ない冬の
タンパク源というようなものであったのであろうか。
(ちなみに、納豆は冬の季語である。)

西日本では他に食べるものがあり、納豆は一度滅んだのか。

一方、豆腐、味噌などは中国から伝わったものであるが、
納豆は中国にはなく、世界でも近いものが少なく、
ほぼ我が国独特な食品ではあるようである。
偶然なのかもしれぬが、これもおもしろい。

しかしまあ、これだけ身近なものでありながら
ほとんどわかっていない。

民俗学なのか日本史なのか、ある程度ちゃんとした研究を
されている方はいないのであろうか。
テーマとして重要であるし、おもしろいと思うのだが。

さて。

納豆を食う。

まずはかき混ぜる。
これは大切である。

かき混ぜやすいように、口径の狭い、そば猪口、
あるいは茶碗蒸しの器に納豆を入れる。

そして、魯山人先生の逸話があるが、少なくとも
200回以上はかき混ぜることにしている。
実際にこのくらい以上かき混ぜると、アミノ酸が増えるようである。

そして、生玉子、きざみ葱、添付のたれ、からしを入れ
もう一度よく混ぜる。

冷飯をレンジで温め、ぶっかける。


なにもいうことはなかろう。

飯がいくらでも食べられる。





 


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