断腸亭料理日記2015
2月28日(土)第一食
さて。
土曜日。
なん度も書いているような気がするが、
鶏皮、で、ある。
好物であるといってよいだろう。
安くてうまい。
高くてうまいのと、安くてうまいのとでは
安くてうまい方がエライ。
高くてうまいのは当たり前である。
高くてまずい、いや、まずくなくとも
値段に見合わないというものはこの世に多い。
つまり希少価値、特定の産地、手作り、有機栽培などの
いわゆるブランド化されたものに値段がついている食いものである。
鶏皮から筆がそれるが、ちょっと書いてみる。
こういった、食い物そのものではなく
それを修飾する様々なストーリーというのは、
私自身はあまり信用しないことにしている。
むろん、こういうものでまっとうなものも
あるのであろう。
しかし、煎じ詰めるところ食い物というのは
口に入れてうまいかどうか。
これに尽きると思っているのである。
例えば、有機栽培などは典型であろうが、身体によいから、
などというのがある。
身体によくてうまければ最もよいのだろうが
こういうものに凝る人は、えてして、このあたりが転倒する。
身体によければ多少まずくてもよい、と。
以前にこの日記を読んだ方から牛蒡(ごぼう)について
意見をもらったことがある。
私が「牛蒡をゴシゴシ洗う」と書いたら、
なんでも最近は牛蒡というのは、皮にポリフェノール
だかの栄養があるのでゴシゴシ洗うのはいけないと。
(やりたい人はやればよいが、私には大きなお世話である。)
牛蒡の皮にはアクがあり、やっぱりそのまま煮込むと
いがらっぽくなる。(特に調理後時間がたつとこれはひどくなる。)
いかに栄養があろうが、これはいきすぎである。
まずいものを好んで食べるのは
なんだかよくわからない行為ではなかろうか。
ついでだがサプリメントなども私は信用していない。
本当になにかに効くのであれば、認可された薬になって
いなければおかしい。薬になっていないのはそれだけの
エビデンスがないからである。
食いものはうまいかどうかがすべてである。
頭で食べるのではない。口で舌で食べるのである。
ブランドやストーリーに騙されてはいけない。
産地ブランドも盲目的に信じて金を出すのは考え物である。
有名産地でもその価格に見合った味でないことが
ないとはいえない。
中でも、まずいが、身体にいいから食べるというのは
まったく本末転倒、であると考える。
閑話休題。
そんなわけで、安くてうまいのが、一番である、と。
それで、鶏皮。
これも別段、軍鶏でなければいけないということは、
まったくない。なんでもよい。(安いのだから。)
なんにするのかというと、ぽん酢和えと、甘辛煮。
作り方は詳しくはなん度も書いているのでもうよいだろう。
ざっくり書くと、まずは湯がいて、軽く脂を落とし、
脂の少ないところを切り分け、ガスのグリル
(オーブントースターでもよい)で焦げ目をつけ、
水に晒した白髪ねぎをのせて、ぽん酢しょうゆをかけて、
鶏皮ぽん酢の出来上がり。
鶏皮ぽん酢には、白髪ねぎは必須である。
なくてはならない、相棒。
白髪ねぎだけでも、うまい。
(だからといって、白髪ねぎだけにぽん酢しょうゆを
かけて食べたりはしないが。)
甘辛煮の方は茹で汁にそのまましょうゆ砂糖、酒を入れ
煮込みながら煮詰めてよい色になれば出来上がり。
残った煮汁の方はトロトロになるまで煮詰め、
うまい焼鳥のたれになる。
こちらは針生姜を散らす。
皮の食感と脂であろう。
どちらも、酒の肴には堪(こた)えられない。
鶏皮というのは、なんでこんなにうまいのであろうか。
鳥の皮だけを食べる料理というと、北京ダックがあり、
あれは家鴨(アヒル)であるが、やっぱりうまい。
やっぱり鳥の皮には普遍性があるのであろう。
もっと鶏皮だけをうまく食べる料理が
あってもよさそうである。
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