断腸亭料理日記2014
10月26日(日)夜
煮込みの季節、で、ある。
煮込みとはむろん、居酒屋にある、
モツ煮込みのこと。
こう、少し寒くなると、どうしても
食べたくなる。
作り始めて、どのくらいになるのであろうか。
よくわからぬが、30代の後半には作っていたと
思われるので、もう10年以上、15年くらいになる
のかもしれない。
居酒屋でも、特にやきとんやでは、欠かせない。
ホッピー、キンミヤの焼酎、なんというものがあれば
夏はやきとん、冬は煮込み。
(いや、どちらもオールシーズン、OKである。)
さらに煮込みは、そんなちゃんとした(?)
やきとんや、もつ焼きや、ではなくて、
浅草の場外馬券場あたりの、外にテーブルを
出しているエタイの知れない居酒屋などが、
似合っているかもしれない。
(むろん、それがうまいのであるが。)
煮込み、なんというのはそういものである。
であるから、煮込みを自作するという人は
おそらくそうそういないのではないかと思われる。
外で食べるものと、家で食べるものは
普通は自ずと違っている。
ああいう、吹きっさらしのテーブルで
熱燗の肴につまむから、うまい、というもの。
食いものというものは、それだけではほぼ存在しえない。
その周辺の風物、シチュエーションと不可分なのである。
外食をしてそれがうまかったからといって、
家でも作ろうと考える人もそう多くはないかもしれない。
私も基本はそう思っている。
あたり前だが、そもそもプロの技だったり、火力、
プロ用の調理器具でなければ作れなかったり、
特殊な材料だったりが必要で、作ろうと思っても
困難なものは少なくない。
だが、どうも私の料理というのは、そのあたり、
つまり外で食べたものを家で食べたい、当初は安く、
という、ところから始まっている。
これはまあ、私が男で、家庭の味を
母親から習うというようなことがなかったから
ということが大きな理由なのであろう。
それで、普通は家庭で作らないものを
よく作るようになっているのであろう。
例えば、かつ丼。
こんなものは高価でもないし、珍しくもなく、
難しくもないし、どこのそばや、食堂で食べても、
優劣なく、うまい。
いや、むしろ、かつを揚げるという手間と
値段のバランスを考えると、圧倒的に
近所のそばやで食べた方が、賢い選択であろう。
が、よく自作をする。
まあ、こうなると、作りたいから作っている、
としかいいようがないかもしれぬ。
ともあれ。
煮込み、で、あった。
煮込みは20代の頃が始まりであろうか、自作はしてみたが、
まるっきり、居酒屋の味にならず、あきらめていた
のである。しかし、なにかに森下[山利喜]の
煮込みのレシピが載っていたで、再挑戦してみた。
これでだいぶよくなったのであるが、まだまだ、
煮込みらしい味にはならない。
さらになん度か作るうちに、気が付いてきた。
煮込みというのは、思っている以上に
濃い味にしなければいけないということ、
それも、甘味、砂糖を相当量入れると、煮込みらしい味に
なる、のである。
それが15年ほど前であろうか。
それ以来、同じ味が続けられるようになり、
今に至っている。
と、いうことで詳しい作り方は省くとして、
今回のポイントは、脂の出るマルチョウを入れること。
茹でたシロモツなどがよく売っているが
これがベース。
ここに最近ハナマサで売っている、生のマルチョウを
加えるのである。
シロコロホルモンなどともいうが、大量の脂があり、
これがつゆに出るのである。
圧力鍋で煮て、この段階でも食べられるが、
ここに別に茹でておいた玉子、豆腐を入れて、
玉子と豆腐に味が染み込む翌日以降が食べ頃。
[山利喜]風にバケットのガーリックトーストを
添えた。
ガーリックトーストの緑はパセリのみじん切り。
こういうことをすると、うまそうに見える。
呑み物は、キンミヤの焼酎のハイサワー(レモン)割り。
まんぞく、まんぞく。
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