断腸亭料理日記2014

両国・山くじらすき焼き・ももんじや

11月3日(月)夜

引き続き、連休三日目。

今夜は内儀(かみ)さんの希望で、両国の[ももんじや]
猪を食べに行くことにした。

どうも内儀さんはあれがお好みのようである。

[ももんじや]は江戸も享保の創業。
現代からは300年ほど前。
吉宗の時代で、江戸時代でもちょうど中盤。
幕末までまだ140年ほどある。

東京の食いものやでも江戸後期、幕末の創業というのは
比較的多いのだが、享保あたりとなると、数えるほど。
屈指の老舗といってよろしかろう。


廣重 江戸名所 東両国豊田屋

毎度出しているが、こんな浮世絵も残っている。

雪の両国橋。
橋の袂のももんじや。

今、両国は橋の東側のことだが、以前は橋の東西ともに
両国で、東両国、西両国といっていた。

この店の本当の屋号は[豊田屋]。
ももんじ、というのは猪だけでなく、獣肉全般のことを
指す言葉で、それを食わす店というので、ももんじや
という。いわば通称であったようである。

我が国は明治になるまでは基本的には動物の肉を食べてはいけない
ということになっていたのだが、江戸でも実際は食べられていた。

落語「二番煎じ」にも猪の鍋がでてきたりする。
日常、食べていたわけではないと思われるが、
まったくゼロではなかったのであろう。
最後の将軍、慶喜は豚肉が、好物であったという話が残っているが、
幕末近くなると、食べる人も多くなったのかもしれない。

拙亭のある元浅草からは歩けぬこともないが、
タクシーで1000円程度。

6時半に予約し、出かける。

両国橋を渡ったところで車を降りて
京葉道路を渡る。


店前にぶる下がっている。
剥製のようだが、やはりちょっとグロい。


玄関を入る。

お二階へ〜、というので階段を登る。

ここは皆、個室。

座敷に上がり座ると、正面に、今度は、ガラスケースに入った
体長30〜40cmの子供の猪、ウリボウの剥製。
さすがにこいつの前では食べられない。
内義(かみ)さんが持っていたストールをかぶせておく。

ビール、キリン大瓶をもらい、注文は、鍋の定食、4725円也。

鹿の刺身などもあるが、これだけで十分。

お通しは猪肉の筋の煮込み。


呑んでいるとつゆが張られた鉄鍋からきた。

赤味噌ベースの甘めのつゆである。


肉とザクもくる。

部位はロースなのか、豚よりも鮮やかな赤。

ザクの野菜は芹と長ねぎ、それに焼豆腐、白滝。

コンロに火を入れ、お姐さんが鉄鍋に入れてくれる。

入れてから肉は15分。
最低これ以上は煮なければいけない。

猪肉というのは、不思議な肉で、火が通っただけでは固い。
これが煮れば煮るほど、柔らかくなり15分からが食べ頃。

色が変われば、食べられないことはないと思うのだが
やめたほうがよい。明らかに15分後の方がうまいのである。
腹が減っていても、ガマン。

野菜などはその限りではないので、つまみながら、待つ。

きっちりと計って15分。

OK。

食べよう。

肉は獣くささというものもなく、15分煮ると
柔らかくなり、甘いたれと相まってうまい。
そして脂身がまたよい。
豚肉の脂身ともまた違ったプリプリとした食感がおもしろい。

あらかた食べたところで、ご飯がくる。

お新香になめこ汁。

鍋に残っていた肉をご飯にのせて食べる。

これは堪らぬ。

つゆが飯に染みて、うまい。

腹一杯。


内儀さんも満足の様子。


ご馳走様でした。





ぐるなび


墨田区両国1-10-2
03-3631-5596




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