断腸亭料理日記2014

「日本はラテン的国家だった」から、、

その2

引き続き「日本はラテン的国家だった」から。

ホフステード先生の「多文化世界」に話が及んだ。

「多文化世界」の細かい説明をするつもりはまったくない。
(いや、できない。)

ただ、アウトプットとして私なりに記憶したのは以下のようなことである。
(これはホフステード先生の「多文化世界」そのものに
書かれていたことではなく、私の受けた研修の先生の考えが
多分に含まれていると思われる。だが、私自身、腑に落ちたので記憶していた。)

アメリカ(+イギリス+ドイツ)人はロジカルな思考が好き。
日本人はロジカルな思考もわかるが、縦横の人間関係も大切にする。

例えば、アメリカ人は上司部下でも、納得できなければ命令に
従わないのは許容される(この場合は、会社を辞めるということになるのだが。)、
というような理解である。
また、アメリカは契約社会などというがそれもそういう例になるのか。

これに対して日本人は腹芸、根回し、などなど、ロジックではなく、
人間関係で仕事をする、というのが一般的にもいわれる。
ただ、一方でロジカルな思考も実際には得意。

これは日本には、武士の文化があったから。

まあ、それでなるほど、と、思ったわけである。

日本人、特に武士がロジカルになったのは、
私が思うに、江戸時代になってからではないだろうか。

戦国時代から安土桃山の信長や秀吉のしたことは
確かにクレバーではあると思うが、人を動かすのに、
ロジックで動かしていたようには見えない。

例えば、秀吉などは城を建てたり、大人数を動かす場合
まるで祭のように金を撒き、酒を与え、唄を歌わせて、
行なったなんという話もある。また、それ以外にも
庶民まで招いた京都北野天神で開かれた大茶会など、
この人のお祭好きは有名である。

やはり、これはラテンか。

が、これに対して家康はそロジカルかどうかはともかく、
お祭り騒ぎをして人を動かすようなタイプではなかった。

ロジカルになっていったのは、将軍を頂点とする幕藩体制が
確立されたのは三代将軍家光以降なのであろう。
武士は刀や槍を持って戦場で戦う文字通りの武士から、
筆と紙を持つ、官僚に変わっていった。
行政を行なう官僚にとっては論理的に矛盾がないということが
すべてであろう。

また、行政のために官僚化したということだけでなく、
戦いがなくなった世の中では、特に支配階級の武士の間では武力
ではなく、ロジカルにものを考えて進めるということが
一般化していったのであろう。

かの赤穂浪士の吉良邸討ち入りの赤穂事件などで
みせた大石内蔵助の対応などは、優れてロジカルであると
私は思う。

武士世界の、為政の常道として、喧嘩両成敗というのがある。
これに対して、吉良はお咎めなしで、浅野だけが
腹を切らされた。
これは片手落ちである。

これに対して、単なる私憤を晴らすための仇討ではなく、幕府の処断を
糾明するために、吉良邸討ち入りを行なった(と、いわれている)。

明解である。

ちなみに、これは元禄の頃で、江戸開府から100年程度。
江戸時代の半分よりも前、である。

これに対して、庶民の側はどうか。

むろん、武士と町人、農民、商人は互いに身分として固定されていた
のであるが、同じ時代に同じ町や村に住んでおり、まったく
無関係であったとは思われない。
武士以外にもロジカルな思考というのは広がっていった
ということはいえなくはないのであろう。

前記の赤穂事件も事件後すぐに庶民の観る芝居になっているわけである。

また、例えば、和算といって、江戸期我が国で独自に発達した数学というのは
皆さんご存知であろう。むろん武士だけではなく、むしろ庶民の間で
江戸後期には大いに発展している。

庶民も含めてロジカルな思考ができていた証拠の一つではなかろうか。
また、ロジカルな思考が好きな人も少なからずいたことも
間違いないのであろう。

さてさて。

この問題、書き始めたはよいが、あまりにも大きい。

ロジカルを考えてきたのだが、その対立項であるラテンも、
なにものなのかを、考えてみなければならない。
(なんとなくは、人間らしい営みというのか、
人の情動というのか、そんなもののようには思うが。)

私のホームグラウンドである落語や、最近観始めたばかりではあるが、
歌舞伎なども例に挙げて考えてみたかった。

しかし、どちらにしても、この短い文章で色々な例を挙げて
分析をするのにはとても紙数が足りない。

長々書いてもあまり喜ばれそうもないので、このあたりでやめて、
また次回以降の宿題とするが、アングロサクソン(英米)vsラテン、
結局、なんのためにこんなことを考えているのかということ。

英米に対して、あるいは世界の中で我が国はどこを目指すのか。
また、我々はなに者なのかというようなことを明らかにしたい
のだと思われる。

結論は、本当はラテンで人間らしく暮らしたいのだが、
それじゃあ飯が食えないので、ロジカルもしなければ、
と、いうことなのか。

最初に引合いに出した、鈴木氏が「アメリカ型のビジネス・経済を取り入れた
という点で、ラテン的国家からハイブリッド」国家になった、といっているが
やはり、それをいうのであれば、日本が近代という時代に入った世界に
組み込まれた、幕末、開国をした時点から、なのであろう。

それ以来、我が国は問答無用でアングロサクソンのロジカル思考と
戦わなければならなくなった。

明治に入っては、不平等条約を結び直すために様々な努力をし、
その後は、彼らの真似をして調子に乗って隣国に攻め入った。
その結果の敗戦、戦後の復興、高度経済成長、バブル崩壊。
失われた20年、、、、。

明治以降、方向が間違っていた時期もあったのであろうが、
そうはいっても先人達の努力があったからこそ、今、先進国という仲間に入れて、
飢えとは無縁で、夜も明るく、温かく、快適で、長生きのできる
豊かな生活を送れるようになったことは間違いない。

しかし、この戦いを続けていくのはとても消耗することである。

鈴木氏はアングロサクソンとラテンのハイブリッドになったと
いっているが、江戸の頃だって、毎日お祭をしていたわけではむろんない。
普段の生活は、至ってロジカルだった、のかもしれない。

要はその度合い。現代においては、やっぱり足りていないのではなかろうか。
なにがといって、ラテン的な、いや、我々が持っていた
『祭』的な、もの。
民俗学でいう『ハレ』。祝祭というのか。
普段の生活=『ケ』のエントロピーを爆発させる『ハレ』が。

いや、ストレートに祭でよいのか。
できたら、伝統的なもの、マチやムラ、地域に根っこが生えた
祭がよろしかろう。

それで、一年を乗り切る力を得られるのであれば、
お安いもんではないか。祭、しようぜ!。

 

お粗末!。

 

 

 

 


断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2013 9月 |

2014 10月 |





BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2014