断腸亭料理日記2014
6月8日(日)
日曜日、朝。
8時前であったか。
窓の外から聞こえてくる、地響きのような唸り声で
目が覚めた。
窓を開けてみると、神輿は見えぬが通りには
路面、歩道を埋め尽くす大勢の群集。お囃子も聞こえる。
雨は昨夜であがって、幸い降っていない。
隣町(となりちょう)の三筋北あたりの町内神輿か?。
内儀(かみ)さんも起きてきて、新聞を取るついでに、
外へ観に行った。
三筋北の神輿?。
いや、担いでるのは三筋北みたいだけど、本社。
今日は鳥越神社の本社神輿の渡御。
隣町の受け持ちで、ちょうど、うちの前を
通っていたところであった。
神輿のまわり順を確認していないのでわからないが、
我が町が最後だから、隣町は最初の方、ということであろうか。
この地響きのような唸り声が今日一日、浅草橋の北から浅草の南まで
鳥越神社氏子十八ケ町のどこかで聞こえているのである。
ただ、神輿が行ってしまえば、途中、町内神輿が
一、二度、出るくらいで、いたって静かなものではある。
昼間は仕事を片付けたり、蔵前に用足しに出たり、
アイロンを掛けたり、靴を磨いたり、まあ、普通の日曜。
曇り空だが、雨は降らずに一日もちそうである。
我が町の本社神輿渡御は18時頃からでその1時間前に
担ぎ手は集合、と、いうことになっている。
毎年、見るだけなので、この事前の集合には行ったことは
なかったのだが、今年はここから見ることにした。
5時前、まだまだ明るい。雨も大丈夫そう。
町の祭半纏を着て帯を締めて、昨日濡れてしまったものとは
別の雪駄を突っかけて、出る。
町の神酒所前にくると、もう既に担ぎ手が集まって列を
作り始めている。
むろん神輿はまだまだ影も形もなく、おおかた二町ほど前であろう。
札が読めるであろうか。
「町会後棒右肩」「町会後棒左肩」ちょっと見ずらいが左端が「同好会後棒」。
神輿には4本の棒がありこれに取り付いて担ぐわけだが
神輿の前側が前棒、後ろが後棒。
(駕籠かきのようである。)
棒を計八か所に分けて、どこを担ぐかによって、
それぞれあらかじめきれいに列を作って待つのである。
外側の方が入れ替わりがしやすいからか、
内側が町会、外側が外から担ぎにきている“同好会”
ということになっている。
(喧嘩が起きやすいのは、外側である。)
まだまだ、時間があるので、前の町内まで神輿を見に行こうか。
祭期間中は、町の境にはこうして注連縄(しめなわ)が張られる。
民俗学的には結界、文字通り、町の内と外との境を示し、
災厄などが町に入らないようにするためのものと考えられよう。
春日通りを渡って、一つ前の町会は紺の半纏の小島二丁目西。
人は集まってきているが、まだのよう。
もう一つ前か。
いた。
神輿の渡御は神輿の前に長い行列が先導をしている。
宮司さん、氏子総代、旗を持った子供達、天狗様がいたり、
手古舞(てこまい)という金棒をついた若い女性、などなど。
小島二丁目東。
またまた、春日通り近くまで戻ってくる。
これが行列の先頭。
「おみこし通りますので」の貼り紙。
毎年書いているような気がするが、この貼り紙が
私は好きなのである。
この土日はすべてに祭優先。
神輿の通るすべての通りが駐車禁止だし、幹線道路の春日通りも
蔵前橋通りも浅草通りも、神輿が通るときには、バスもタクシーも
自家用車もすべて止める。
なんというのであろうか。
例えば、浅草神社の三社祭であれば、これによって
観光客も増えるであろうし、経済効果が期待できよう。
しかし、経済性と効率性が最優先される現代の東京において、
土日とはいえ特定の地域のさほど有名でもない祭など、
はっきりいえば、への役にも立たなかろう。
しかし、それを優先するということを許している東京
というところはまだ捨てたものではない、と、思うのである。
やはり、祭は人に必要なのである。
氏子、住人にとっても必要だし、東京という都市全体にとっても
必要なものであると私は思う。
さて。
もう一度、我が町内に戻ってきた。
神輿を待ち構える、関係者。
肩から袖にかけて赤い筋の入っている半纏の後ろ姿は鳶頭。
全体を仕切っているようなので、随分と偉い方なのであろう。
丸が7つは鳥越神社の紋で、神社関係者。
お!。
神輿が春日通りを渡ってきた。
我が町へ入ったところが受け渡し場所。
小島二西の皆さん、お疲れ様でした。
つづく。
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