断腸亭料理日記2014

ゴーヤー・チャンプル

7月6日(日)夜

引き続き日曜日。

入谷の河金でビールと河金丼、ロースのとんかつを二人で
食べて、内儀(かみ)さんとブラブラ戻る。

再び、七夕祭りをしている合羽橋通りまで戻り、
左衛門橋通りまでくる。

左衛門橋通りというのは、さほど広い通りではないが、
神田川に架かっている左衛門橋から北へ、私の住んでいる
元浅草の中央を抜けて、言問通りまで南北に
ほぼ真っ直ぐに通っている通り。

左衛門橋というとちょっと風情というのか、歴史がありそうな
感じがするであろう。

通りの名前は文字通り橋の名前からついているが、橋の名前の
左衛門自体は、江戸の頃、これを南下した神田川のそばにあった
大名屋敷の名前に由来している。
名前は酒井左衛門尉(さえもんのじょう)家で、その下屋敷。

こういってもあまりピンとこないかもしれない。
出羽庄内12万石の譜代大名、そう、庄内藩である。
(時代小説の藤沢周平作品の舞台がほとんど庄内藩でなので
ファンの方はご存知であろう。)

江戸の頃は橋はなかったがこの近くの神田川の河岸を
左衛門河岸、と呼んでいたようである。
これが由来で、明治以降橋ができてこの名前が伝わっている
というわけである。

ともあれ。

これを曲がって浅草通りを越えて左衛門橋通りを南下すると、
元浅草で、家に帰る道である。

足袋を履いていれば長い時間歩いても一向平気なのだが、
素足に雪駄でこれだけ歩くと、そろそろ足の裏が
痛くなってきており、また、ビールなんぞを呑んでいるので
歩くのが億劫にもなっている。

私はそのまま帰りたい心持であったが、内儀さんは
買い物に付き合え、という。
(買い物といっても食品のである。)

ここからだと田原町の赤札堂か。

左衛門橋通りから浅草通りを左に曲がり、道具街(新堀)通り、
菊屋橋の交差点。
渡って田原町の交差点の手前が赤札堂。

私が目についたのは、ゴーヤー。
ちょっと安くなっているのがあった。

ゴーヤー・チャンプル!。

ゴーヤー・チャンプルは言わずと知れた沖縄料理。
昨夏、石垣島へ行った時にも食べた。

こう暑くなってくると、こういうものも
よいかもしれぬ。

ゴーヤー・チャンプルにするには、スパムも欠かせない。
缶詰を購入。
それから、ゴーヤーだけでは苦いので、もやしも。

これでよかろうか。

実際のところ、ゴーヤーというのは苦いので
あまり自分では料理はしたことがない。

帰宅し、ゴーヤー・チャンプルの作り方を調べてみる。

チャンプル(沖縄方言で正確にはチャンプルー、か)というのは
混ぜるという意味であろう。

実際はなにが入ってもよいようだが、
豆腐はどうも欠かせないようである。

冷蔵庫をのぞくと、内儀さんが買った根岸[笹之雪]の
豆腐が残っている。
これを入れるのはいささかもったいないが
日持ちを考えると、食べてしまった方がよいだろう。

沖縄の豆腐(島豆腐)は本土のものよりも堅いので
上に皿をのせ、コップに水を入れた重石をのせて、水抜き。
しばらく置いておく。

ゴーヤーは洗って半分に切り、スプーンでワタの部分を
こそげ落とし、スライス。

もやしもきれいに洗う。

あとは玉子。
一個を割りほぐしておく。

豆腐の水抜きというのは実際は半日、あるいは一日、
重石をして置いておくのだが、幸い[笹之雪]の豆腐は
豆乳が濃いからか、そこそこ堅いので、水を切ったくらいだが
使ってしまおう。

炒めるのは胡麻油がゴーヤーの苦味にはよいようである。

豆腐は一口に切って、フライパンで炒める。
いや、炒めるというよりは、崩れぬように、そーっと焼く、
といった方が適切である。

薄く焦げ目が付いたら、崩れぬように別にしておく。

次に同じく一口に切ったスパムを炒め、
ここにゴーヤー、もやしの順に炒め、最後に
豆腐を戻し、ほぐした玉子を入れて、軽く合わせる。

スパムは塩味が強いので薄めに塩胡椒、
ほんの少しのしょうゆで香りと味付け。

皿に盛って、出来上がり。


ビールを開けて、食べる。

胡麻油で炒めたせいか、確かに苦味は控えめに
なっているようである。

スパムというのは、マヨネーズなどを塗って、
おにぎりにのせて食べる、なんというのがあって、
うまいのであるが、どうもこの場合は塩味が気になる。

しかし、こうして薄味でゴーヤー、豆腐などと炒めると、
ちょうどよい塩梅、で、ある。

そしてこれ、ビールが進むこと、夥(おびただ)しい。

さすがに、酒呑みの国、沖縄の食い物、と、いったところか。

夏にはピッタリのゴーヤー・チャンプル
で、ある。


 


 


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