断腸亭料理日記2014
引き続き、京都祇園のカウンター割烹[なか原]。
前菜が出て、お造り、豚角煮をもらって、
酒は、京都洛中佐々木酒造の、まるたけえびす、の燗酒。
芸妓(げいこ)さん二人が登場、まで。
さて、次は、焼き魚かな。
ご主人に相談し、いろいろあるようだが、やっぱりこっちへきたら
ぐち、か。
ぐちは東日本ではあまり食べないが、甘鯛のこと。
高級魚。
魚、好きですか?、とご主人。
もちろん、大好きです。
じゃあ、というので頭の方を焼いてくれるという。
と、このあたりで芸妓さんのお客さんが登場。
スーツを着た年配の紳士。
芸妓さん二人の間に座る。
お客さんの登場で三人の注文がスタート。
板場も急に忙しくなる。
揚げ物やら、煮物やら、焼き物やら、いろいろ。
ご主人と若い衆の二人でフル回転、で、ある。
ただ、目の前で彼らの作業を見ていて気が付いたのだが、
実に調理の作業がきれい、なのである。
コースを出す店であれば決まったものを
決まった順に出せばよいので、決めてしまえば
あらかじめ下拵えをしてあるものを、
同じ作業をするだけなので、さほど難しくはないのであろう。
しかし、この店はアラカルトなので、すべてその時作る。
ただ、むろん下拵えや、準備はしてある。
驚くのは、それだけでなく、調理の前後の始末である。
下拵えをした材料は、小さなタッパーやビニールの袋などに
きれいに入れて冷蔵庫などに入れてあるようで、それを都度、
取り出し調理し、また同じ状態にきれいに入れ直し、再度冷蔵庫などの
ストックしてある場所に戻す。
これがとても細かく、几帳面になされており、美しい。
カウンター割烹である。作業すべてお客から見えるので
こうしているのか。いや、そうでもなかろう。
ご主人のポリシーなのか。
京都の料理人は皆こうなのか。
店やその主人にもよろうが、私の記憶にある
東京の鮨やや料理やと比べても、こうして目の当たりに見ると、
同じようなところはそう多くはないのではなかろうか。
日本料理、京料理は盛り付けが美しい。
後始末もこれと同じくらいの神経を使っている。
いや、後始末が美しくできなければ、
美しい料理はできない、のかもしれない。
なにやらそんな風にも思えてくる。
ともあれ。
調理場、てん手古舞の中でも、私のぐちが焼き上がってきた。
甘鯛は一般的に鱗を落とさずそのまま焼く。
鱗が小さく食べられるし、鱗がついている方がうまい。
鱗に酒を塗って焼いたりするが、聞いてみると
塩だけとのこと。
しょうゆもなにもかけないが、これはうまい。
絶品、で、ある。
食べ終わった、ぐちの骨は引上げられて、出汁に入れられ
おつゆになって出てきた。
こんなのは初めて、かもしれない。
完全に、酒呑みペースになってしまった。
さらに、つまみ。
品書きにあって、最初から気になっていた、もの、
鮒ずし。
やぱり、東京ではなかなか食べられない、
琵琶湖の、鮒ずし。
琵琶湖の鮒を米麹に漬けて醗酵させたもの。
魚を醗酵させた食い物としては、クサヤと同じくらいの
匂いかもしれない。
天ぷらなどにもする。
熱をかけると、くさみは少なくなる。
それで、聞いてみると、いや、そのままお出しします
とのこと。
3〜4切れ、薄く切ってくれた。
子持ち、で、ある。
子持ちですね〜、と、いうと、それが値打ちです!、
とのこと。なるほど。
においも強いが、これがうまい。
さらに、この鮒が漬けてあった米麹を一つまみ炙って
出してくれた。
私が、酒をカパカパ呑んでいるので、これがお酒にはよく合います、と。
なるほど。
鮒ずしの匂いがついているし、匂いだけでなく塩分も強い。
ただ、日本酒に合うこと夥(おびただ)しい。
さて。
二人の芸妓さんとお客さん。
お客が他にないので、どうしても耳が大きくなってしまう。
お客さんは社長さんと呼ばれている。
芸妓さん二人は、年齢差があるようで、片方が三十前後で、
もう片方はもう少し若手。
社長さんはいくつくらいであろうか。
六十は越えて、七十近いかもしれない。
どちらかの、いわゆる“旦那”さんであろうか。
(両方の旦那ということもあるのか?。
昨今、旦那になるのもたいへんで、とても一人では
お金を出しきれないので、なん人かで、ということもある、
なんという話を聞いたこともあったが、、。)
社長さん、どうも話の内容から、映画関係の人、、?。
まあ、どうでもいっか。
だいぶ呑んでしまった。
都合、四合も呑んだか。
いい具合に酔っぱらった。
このあたりで、神輿をあげねば。
ご馳走様でした。
お会計は12,000円也。
呑みすぎか、な。
6時に入って、8時前。
なんだかんだ、2時間も居てしまった。
例によって、ご主人が店の外まで、見送ってくれる。
京都祇園で、こんな呑み方も、贅沢だが、よいかもしれない。
京都市東山区祇園町北側286-5
075-551-5215
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