断腸亭料理日記2014

煮穴子丼

4月29日(火)第一食

大型連休に入ったが、昨日は仕事で、今日は休み。

明日は仕事、以降休み。

私のスケジュールはこんな感じである。

今年は前半が飛び石で、休みにくい。

皆様はいかがであろうか。

第一食は、先日煮た穴子の残りを、冷飯があったので
小さな丼にした。

煮穴子は、アルミホイルにのせてオーブントースターで
軽く焼く。

そして、煮汁を煮詰めて瓶に戻して冷蔵庫にストックしてある
たれを取り出し、レンジで1分ほど加熱。

冷飯もレンジで温める。

飯茶碗にご飯を移し、温めた穴子をご飯にのせ、
たれを上からかける。

京都の柴漬けも出す。


こんなものだが、うまいものである。

やはり、この穴子の煮汁を煮詰めたたれ、鮨やでいう
ツメは、こんな風にも使えて便利、ではある。

穴子でなくとも、例えばボイルしたいかの下足、
などでもよいし、やはり、鮨やで使うが、茹でた
やりいかなどでもよい。

これがかかるだけで、ちょいと乙な味になる。
やはり、穴子のツメは、偉大、で、ある。

今、鮨やでは、いかのを茹でたものなどに使うし、
煮蛤、あるいは、たこにもかける。

調べてみると、以前は、穴子の煮汁ではなく、それぞれを
煮たつゆを別に煮詰めてたれにし、使い分けていたともいうが
今は鮨やではすべて穴子の煮汁のたれを使っている。

煮蛤などは、今は、実際には煮てはおらず、つゆに漬け込んだだけで、
穴子のたれの方が、使いやすいのであろう。
また、穴子の煮汁のたれはそれだけ万能である、ということにも
なろう。

さて、穴子の方。

欲をいえば、やっぱり穴子はもう少し柔らかく煮た方が
それらしい。
鮨やなどでは口に入れると溶けるくらい、
ほろほろに柔らかく煮ているところもある。

いつも、味が付きすぎないようにと、どうしても早めに
あげてしまう。

ようはもっと薄い煮汁にしなければならない、と、いうこと。
ただ、薄めれば、それだけ煮詰めて、たれに戻すのにも
時間かかかる、ということにはなる。

さて、煮穴子のこと。

穴子は、江戸前はむろんだが、三陸あたりから南、西日本。
日本海は北陸あたりまでというが、日本中広い地域で獲れて
食べられている。

ただ、東京は煮る。関西は焼く方が一般的で、違っているのは
おもしろいところである。

にぎりの鮨の種としてはどこの鮨やにも100%置いてある。

業務用には煮たものも、煮詰めたたれも流通していると聞く。

にぎりの鮨には欠くことができない種である。

最近は握ったものを半分に切って、
片方をたれで、片方を塩でといった食べ方もある。

以前に、古今亭志ん生師の娘さんが書かれた
「志ん生の食卓」という本のことを書いたことがあった。

ここに志ん生師の大好物として書かれていたものに
「中トロ穴子ちらし」というのがあった。

酢飯の上に、中トロのまぐろと穴子を半々のせたもの。

鮨やの種で最もうまいものを二つ挙げろといわれると
私なら小肌を入れるか迷うところだが、中トロと
穴子は龍虎といってもよいだろう。

一つの丼にこの二つだけをのせて思うさま
食べるのは、夢のようなものだと思われた。

まさに江戸っ子好みの種、と、いってよいかもしれない。

(ただ、実際に夢のちらしをやってみたが、だめであった。
この二つは合わないのである。甘い穴子と、わさびじょうゆの中トロは、
どちらも味がはっきりしているだけに混じるといけない。
穴子に甘いたれをかけないという選択肢もなくはないが、
普通はかけるであろう。かけた方がやはり、うまい。
食べるなら別々の器にした方が、これはよろしい。)

煮穴子の最もうまい食べ方というのは、なにか。

ほろほろに柔らかく穴子を煮た煮えたてをにぎったにぎり鮨、
ではなかろうか。

私も以前に出会ったことがある。
鮨やで煮えたてがあればそうとうな幸運である。

普通は、冷めたものをトースターや網で焼いて
(この場合風味をよくするために熊笹に載せたりもする。)
一度温めてからにぎる。

煮え立てはこの必要がないのである。

また、今日は普通の白飯にたれをかけて食べたが、
そのままつまむよりも飯とともに食べた方がうまいし、
さらには、酢飯と一緒ににぎったにぎり鮨が最もうまい。
(穴子だけでなく、酢飯とたれの相性は抜群である。)

ともあれ。

煮穴子は、流通、冷蔵設備が発達した今も、
煮たり、〆たりする、いわゆる仕事をした江戸前鮨の
代表選手であり続けている。

これで完成し尽くしているのか。
まだうまくなる余地があるのか。

とにもかくにも、煮穴子というもの、うまいもんである。

 


 


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