断腸亭料理日記2013

蔵前・幸鮓 その2

引き続き、蔵前の[幸鮓]。

昨日は、鯛からまぐろまで、5種。

次は、うに。


これ、久しぶりに食べたが、利尻のばふんうに。

鮨やで使われるうには、むらさきうにが一般的だが、
高級昆布で有名な北海道の利尻島で昆布を食べて育ったばふんうには
別格。超プレミアム品といってよかろう。

このクリーミーさ。
まあ、おそらく日本一のうに、であることは
間違いなかろう。

食べたいと思っても、街の魚やなどにはむろん出回らない。

たまには、こんなものも食べたいものではある。

小肌。


これは驚いた。

写真を見てもおわかりになろう。

〆方が浅い。

生にそうとうに近い。

おそらく、今、東京の鮨やの小肌はほとんどが、強めに
〆ていると思われる。

むろん、浅いからといって、生ぐさいわけではない。
新発見。

こういう小肌もある、と、いうことであろう。

これは、先ほど話題に出ていた、鮑の肝。


先ほどの赤貝の肝もそうであったが、味付けはとても薄め。

なるほど。これも、海藻の香りで、うまい。

穴子。


炙って、甘いたれではなく、わさびをのせてある。
江戸前鮨としては定番中の定番だが、香ばしく、うまい。

これも江戸前鮨の定番、薄焼き玉子。


最後はかんぴょう巻。


以前から、疑問であった、他の巻物は六つ切りなのに、
なぜかんぴょう巻だけ、四つ切なのか。
(海苔の定型の一枚を半裁し、巻いた細巻一本を四等分に切るのか
六等分に切るのか、の問題である。どこの鮨やでも
かんぴょう巻以外はすべて六つ切りで立てて置き、
かんぴょう巻のみが、四つ切で横にして出す。
どこかのお寿司屋さんで、気を付けて見ていただきたい。
間違いなくそうしている。)

幸鮓の親方に聞いてみたが、やはり、わからない、とのこと。

まったく不思議である。

ただ、おもしろいではないか。
なにが、というと、わからないのに、皆、そうしている、
ということである。

鮨をはじめ、歴史の長い和食料理人の世界には、
意外にこういうことは多いのではなかろうか。

つまり、理由はわからないが、昔からそうしているから、それを
続けているというようなこと。

ただ、前にも書いたような気はするが、かんぴょう巻の四つ切問題は
理には叶っているような気はしている。

子供でも食べる、甘いかんぴょう巻である。
六つ切りでチマチマつまむよりは、バクッと食べたいもの
ではあると思う。

この近所ではあるが、柳橋の美家古鮨の細巻の海苔の向きを
90度回転させた、太目の鉄火巻。(中巻、というらしい。)
これは海苔の大きさは同じだが、酢飯の量は多くなる。
かんぴょう巻の四つ切りもやはりこのあたりに
ルーツがあるのではなかろうかと思っている。

また、にぎりの大きさなども、江戸の頃はおにぎりくらいの
大きさで、やはり古くはお腹を一杯にすることに
より比重があったと思われる。

また、巻物の歴史はよくわからぬが、少なくとも鉄火巻が
生まれたのは明治になってからという。

他の巻物よりも、かんぴょう巻だけが歴史が古く、
それで切り方が違っているのではなかろうか、というのが
私の推測ではある。

ともあれ。

お椀。


潮汁。

ビールから冷酒二合。

随分と酔っ払ってしまった。

ご馳走様でした。

おいしかったです。

勘定は、酔っ払って、忘れてしまったが、
1万円は超えていなかったと思われる。

親方は浅草の生まれ育ちといってよいのかと思われ、
今も蔵前で鮨をにぎっている。(蔵前も『浅草』である。)

親方に限らず、浅草で生まれ育ち、今も浅草に住んでいる
人の多くは浅草に対して強い地元意識を持っている。

銀座にしても日本橋にしても神田にしても、東京下町の
主だった地域の人々には、同じような意識があるのだろう。
しかし、なかんずく浅草の場合は他地域に比べれば
まだまだ住んでいる人が多い。

三社だの鳥越だの、祭も、まだまだ住人の中心にある。

私は引越してきてまだまだ10年ほどの新参者だが、
やはり、浅草には地元意識はある。
鳥越祭も、住人の一人として参加しているつもりではある。

親方と界隈の噂話など、いわゆるご近所の会話をしていて
普段は会社と家との行き帰りの日々で、あまり感じることはなかったが
共有する浅草地元意識のようなものを改めて感じることができた。

やはり『浅草』、よいもんである。

 

 


蔵前 幸鮓 
台東区蔵前3-4-8
TEL/FAX 03-3863-1622

幸鮓

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