断腸亭料理日記2012

新橋演舞場・秀山祭九月大歌舞伎

その1

9月17日(月)

さて。

連休、最終日。

今日は、昨夜、ふと思い立って、歌舞伎を観ることにした。

今月は、新橋演舞場、秀山祭で、昼が『菅原伝授手習鑑・寺子屋』と
『河内山』。夜が『娘道成寺』と『時今也桔梗旗揚』。

『菅原伝授手習鑑・寺子屋』はとても有名だが、
まだ観たことがなく、この昼の部に決めた。

ネットで予約。直前であるが、一人分、下手側、前から三列目、
通路から二つ目の席が取れた。

朝起きて、相変わらず暑いが、やっぱり着物を着ていこう。

今日は、阿波しじら織(縮のようなもの)の藍色の一重(ひとえ)。
羽織は黒の絽。白足袋に雪駄。

着物を着始めた時から汗だく。
10時すぎに元浅草の自宅を出たが、日差しも強い。
ただし、台風の影響もあるのか、比較的風が強いので救われる。

新御徒町から大江戸線で築地市場前。
新橋演舞町はここが至近。

演舞場前の路上に店を出している木挽町弁松で
二段の折を買って入る。

入るとさすがに涼しく、汗は開演前には引いていた。

演目と配役を書き出しておく。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

秀山祭九月大歌舞伎


吉右衛門

  菅原伝授手習鑑

一、寺子屋(てらこや)

  寺入りより
   いろは送りまで
                    松王丸  吉右衛門
                     千代  福 助
                   園生の前  孝太郎
                 涎くり与太郎  種之助
                   下男三助  錦 吾
                   春藤玄蕃  又五郎
                     戸浪  芝 雀
                   武部源蔵  梅 玉


  天衣紛上野初花

二、河内山(こうちやま)

  上州屋質見世
  松江邸広 間
  同  書 院
  同  玄関先
                  河内山宗俊  吉右衛門
                  後家おまき  魁 春
                 高木小左衛門  又五郎
                 近習大橋伊織  松 江
                 同 黒沢 要  歌 昇
                 同 米村伴吾  種之助
                 同 堀江新六  廣 松
                 同 川添運平  隼 人
                   北村大膳  吉之助
                   腰元浪路  米 吉
                   宮崎数馬  錦之助
                 和泉屋清兵衛  歌 六
                  松江出雲守  梅 玉

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二つの芝居で、休憩は間に1回あるだけ。

双方けっこうな長丁場、で、ある。

『天衣紛上野初花』は一昨年、通し狂言を、幸四郎の河内山、
菊五郎の直侍で観ている。

作は黙阿弥で、好きな演目。

さて。

問題は最初の『菅原伝授手習鑑』の方。

先にも書いたが、昔から人気のある芝居で、落語にも
『掛取万歳』、『菅原息子』など、そのパロディーのようなものが
出てきたりする噺があるくらい。

一応、下調べはしてはきた。
毎回ことだが、初見のものは必ず下調べをする。
歌舞伎の場合、下調べをしなければ、10分の1もわからないであろう。
せっかくの機会、理解できなければもったいない。

『菅原伝授手習鑑』はもともとは人形浄瑠璃の演目で1746年(延享3年)
大坂で初演。ただし歌舞伎も翌月すぐ京都で初演。
江戸ではその翌年、中村座で初演、とほぼ同時期。
作は、浄瑠璃なので、二代目竹田出雲。
(ご存知のない方に説明をすると、もともと人形浄瑠璃用に
書かれた台本を歌舞伎に移したものが、歌舞伎の演目には
多くある。これ以外にも、有名な『仮名手本忠臣蔵』なども
そうである。これらの浄瑠璃から移されたものは丸本物と歌舞伎
ではいうようだが、人形の代わりを人が演じる、という形が
残っており、舞台袖の義太夫という唄と三味線に合わせて
舞台は進行する。唄の中に台詞が含まれていることもあり、
うっかりすると聞き逃したり、聞き取れなかったりすることもある。)

1746年とはどんな頃かというと、将軍は吉宗の晩期。
江戸時代のちょうど真ん中。

元禄がまだ文化的には上方が中心で、江戸固有の文化が花開く、
文化文政までにはまだ、田沼時代があり、あと5〜60年待たねば
ならないという頃。

お話は平安時代。大宰府に流された有名な菅原道真。
その家来の三つ子、梅王丸、松王丸、桜丸が主人公。
(この三人を含め、お話はフィクション。)

で、最近はほぼ、この『寺子屋』という幕のみが人気で
演じられるとのこと。

また、この幕から生まれた名台詞があり、
「せまじきものは宮仕へ」。

あらかたのストーリーは頭に入れておき、幕が開いた。



『菅原伝授手習鑑』
鳥居清満画 1768年(明和5年)
江戸市村座、源蔵(坂東三津五郎)、千代(吾妻藤蔵)
(初演からさほど経っていない頃のものである。)

例によって、あらすじを書くのはやめよう。

先の「せまじきものは宮仕へ」以外にも、
「梅は飛び 桜は枯るる世の中に なにとて松のつれなかるらん」
という、菅原道真が詠んだとされていた有名な歌も出てくる。

今月は、初代吉右衛門を記念した、秀山祭と銘打たれ、
当代吉右衛門が座頭。

先月の奈落への転落事故で療養中の染五郎(吉右衛門の甥)も
出演予定であったよう。

主役の松王丸が吉右衛門で、石川五右衛門のような、ぼうぼうの頭の
百日鬘(ひゃくにちかつら)に派手な衣装。
(染五郎は松王丸の予定であったよう。)
準主役の源蔵が梅王。(で、こちらが吉右衛門の予定であったよう。)


長くなった、今日はこのあたりで。
つづきはまた来週。

 




 


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