断腸亭料理日記2012

平成中村座

五月大歌舞伎昼の部 その1

5月3日(木)

さて。

三日、引き続き、連休、で、ある。

今日は、休みに入ってから切符を取った、
のであるが、浅草で演っている、平成中村座へいく。
明後日、六日も取ってあり、今日が昼の部で
明後日は、夜。

今回の平成中村座は昨年からのロングランで、
地元浅草でもあり、一度はこないと、と、思っていたのだが、
今月が最後。

なんで、昼夜取ったのかというと、
昼は、め組の喧嘩で、夜は、髪結い新三。
どちらも落語に関係が深く、観ておきたかったから。

第一食は、冷飯を温め、
佃煮と生玉子と漬物で飯を食う。

このところはいつも、芝居を観にいくときには、
着物にしていたのだが、朝から豪雨。

昨日の天気予報からそういっていたので、
着物はあきらめる。

平成中村座は隅田川の桜橋付近の広場で、
歩いていけないこともないが、タクシー。

10時20分頃、家を出る。
まったく、凄い雨、で、ある。

10分かからず着き、切符を引き取り、入る。

歌舞伎の場合は、入る前に必ず、弁当を
買って入らねばいけない。

幕間(まくあい)に買えばいいか、と、思っていると
まず売り切れている。

常設小屋ではなく、弁当などの売店は外、なのだが、
一応のところ、テントがあり、濡れないようには
なっている。

弁当は、助六鮨だが、浅草の鮨や、弁天山美家古がある。
ここは、店で食べると、東京でも珍しく、江戸前仕事を
ほぼ完全に昔にまま続けているので有名だが、どんなものか、
買ってみよう。

それから、ビールと、足りなそうなので、カツサンドも。

靴を脱いで、ビニール袋に入れて持ち、小屋に入る。
席は、1階比較的舞台寄りの右前。

1階の前の方は、椅子ではなく、茣蓙(ござ)の敷かれた床に
ふかふかの座布団が置かれた座椅子。

中村座に前にきたときには、
一階でも後ろの椅子席であったが、
下へ座る席、というのは、よい。


11時ちょうど、開演。

演目と配役を書き出しておく。

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昼の部

一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)

  十種香(じゅっしゅこう)

  八重垣姫  中村 七之助

 腰元濡衣  中村 勘九郎

原小文治  片岡 亀 蔵

白須賀六郎 坂東 橘太郎

長尾謙信  坂東 彌十郎

武田勝頼  中村 扇 雀

  三社祭七百年記念

二、四変化 弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり)

  神功皇后・武内宿禰

  三社祭

通人・野暮大尽

石橋

武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精  市川 染五郎

神功皇后/善玉/通人/獅子の精  中村 勘九郎

三、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうとりくみ)

  め組の喧嘩(めぐみのけんか)

   め組辰五郎  中村 勘三郎

辰五郎女房お仲  中村 扇 雀

四ツ車大八  中村 橋之助

露月町亀右衛門  中村 錦之助

柴井町藤松  中村 勘九郎

おもちゃの文次  中村 萬太郎

島崎抱おさき  坂東 新 悟

ととまじりの栄次  中村 虎之介

喜三郎女房おいの  中村 歌女之丞

 宇田川町長次郎  市川 男女蔵

  九竜山浪右衛門  片岡 亀 蔵

尾花屋女房おくら  市村 萬次郎

江戸座喜太郎  坂東 彦三郎

焚出し喜三郎  中村 梅 玉

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一つ目。

『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』から
十種香(じゅっしゅこう)。

かなり有名な芝居だと思われるが、完全に初見。

話の筋すら知らなかった。

落語にも二十四孝(落語では、廿、ではなく、二十と書く)
というのがあるが、まるっきり関係のない噺。

芝居の廿四孝は、戦国時代の武田信玄と
上杉謙信の戦いが舞台。

私自身、へ〜、そうだったんだ、というくらいの
知識しかなかった。なぜそれが、廿四孝なのか。
“本朝”というくらいで、元は、中国の24人の
親孝行の人の話。(落語はむしろ、このはなし、
なのであるが。)

ともあれ。

長い話で、私が書かなくとも、そこいらじゅうに
書いてあると思うので、ここでストーリーを
書くのはやめる。

結論からいえば、なかなか、おもしろかった。
たのしめた。

ここに出演(で)ている役者で知っているのは、
先月襲名した勘九郎と七之助くらい。

で、その七之助が、八重垣姫で、
腰元濡衣(ぬれぎぬ)が勘九郎と、
どちらも女形。

特に、七之助はまったくもって、お姫様らしい。

勘九郎の兄ちゃんは、顔なぞが骨ばっているので、
ちょいと女形はキツイものがあるが、七之助は
そうとうに可愛いお姫様らしく見えるのが不思議。

そう。

私が今まで観た芝居の多くの立女形(ヒロイン)は
中村福助であった。
うまいので、演っているのであろうが、美女役はやはり、
若い人が、それも美少年といわれるくらいの人が
演った方がいいに決まっている。

それこそ、江戸の頃、初期は、歌舞伎が若衆歌舞伎から、
野郎歌舞伎といって女性の役者が禁止されてからは、
女性役は若い男になり、いわゆる男色や、
小母様方の買い物になる目的もあったわけである。

そこまでいかずとも、幕末でも、人気を博したのは、
岩井半四郎(5代目、6代目あたりか)など、
やはり、若く美形の女形であったようである。

老女であるとか、お内儀(かみ)さんの役は
むろんよいとして、お姫様などは、若くて美形な
女形で売ってみる、と、いうのも歌舞伎の伝統で
あったはずである。

大衆演劇では若い美形のお兄ちゃんが売れている。
今、一般のタレントでは、おかまもゲイも花盛り。

まあ、この世界、なんでもあり、ではなかろうが、
ちょいと、考えてみてもよいのではなかろうか。

若いお姫様が目尻に皺があって、骨ばっていては
感情移入もしにくい、と、いうもの、で、ある。


明日につづく。



平成中村座



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