断腸亭料理日記2012
12月7日(金)夜
五時すぎ竹橋。
ちょっと早いが、今日はここで終了。
東西線に乗り、同行していた上司は
大手町で降りる。
考えていたのは、日本橋の吉野鮨。
このところ、間が合わなくてなかなかこれなかった。
この時間なら、大丈夫であろう。
日本橋で降りて、地上に上がる。
この時間、もう真っ暗。
永代通りと中央通りの南東のワンブロックの
再開発が始まっている。
工事現場の塀から覗くと、もうさら地になっている。
どんな再開発ビルになるのか。
5時半前、曇りガラスの入った白木の格子を開けて入る。
流石にこの時間、カウンターに一組ほどで、
すいている。
予約が入っているのであろう、
7時までですよ、ということで、カウンター、
一番手前、壁側に座る。
この前は、眼鏡に丸顔、ガタイのいい若ご主人。
ん?
なんとなく、店内の皆の様子がおかしい。
TV、で、ある。
津波警報?。
5時18分、三陸沖で地震?。
東京でも、震度4あった?。
聞いてみると、感覚的にも随分揺れたらしい。
歩いていたのか、東西線に乗っていたのか、
私は、まったく気が付かなかった。
皆、心配そう、で、ある。
気を取り直し、ビール。
瓶でキリン。
少し、つまみを切ってもらう。
いつものことだが、好物の光物。
なにがあるかと聞くと、鯵、鯖、小肌、さより。
鯖と小肌はにぎりでもらうとして、鯵とさよりを
頼む。
他にお客もいないせいか、すぐに出てきた。
鯵は酢洗いをしているよう。
生姜の小皿が別にきて、鯵はこれで。
さよりは、わさび。
あまみがある。
呑みながら、食べ始めると携帯にTELが入り、
店外に出て電話に出る。
地震を心配した内儀(かみ)さんから。
そんなに強い揺れだったというのはびっくり。
客の入りが遅いように思うが、地震のせいか。
鯵とさよりを食べ終え、にぎりに。
ビールは呑み終わり、酒に変えようかとも
思ったのだが、かろうじて踏みとどまる。
池波先生の教え、でも、ある。
やはり、にぎりは呑みながらではいけない。
白身はなにがあるかと、聞く。
ひら鱸、平政、平目、鰤(ぶり)。
ひら鱸、ってなんでしたっけ?。
ああ、冬の鱸のことです、と、若主人。
そうだ。
そうであった。
この前来たのは、2月。
あの時も、食べたっけ。
ひら鱸と、平政。
ひら鱸は鱸独特な泥くささはまったくなく、うまい。
平政は、ちょっと赤身のある白身。
あまみもある。
鰤と、いか(すみいか)。
ぶりは、もうだいぶ脂がのり始めている。
すみいかは、細かい包丁目が入れられており、
独特なあまみと、噛むとぷちっと切れる食感が
たまらない。
次は、光物。
〆鯖と、小肌。
ここの〆ものは江戸前で、比較的強めの〆具合。
小肌は半身で、斜めに入れられた包丁目。
小肌というのは、最も美しいにぎり鮨である。
やはり、小肌を抜きに江戸前鮨は語れない。
むろん、うまい。
聞いてみると、鰹があるよう。
戻り鰹。
それからまぐろ、ヅケ。
ここのヅケは中トロなどよりも、あまみがあり、
よっぽどうまい。
海老。
ボイルのさいまき海老。
ここへきたら、これも必須。
茹でてすぐ、ではなかろうが、ぷりぷり。
次は、はまぐりと、たこ。
たこは、あまいの、つけますか?と若主人。
ここのたこも、江戸前の仕事をちゃんとしており、
わさびしょうゆでもよいが、蛤に合わせて
たれ付で。
甘いたれは自分でも作るが、ここのは香りがよい。
やはり家庭で作って冷蔵庫に保管しているよりは
新鮮である、ということであろう。
このくらいで、終了。
鉄火巻。
赤身で。
毎度、堪能させていただいた。
お勘定は7000円。
べら棒に高いねたや、珍しいものを揃えているわけでは
ないが、その分、リーズナブル。
むろん、明治12年創業の江戸前の技はきちんと施されている
うまい鮨。
ご馳走様でした。
中央区日本橋3-8-11
03-3274-3001
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