断腸亭料理日記2012
12月12日(木)夜
また、少人数だが、忘年会。
どうも、続く。
鍋がいい、というので、神田須田町の
あんこう鍋の[いせ源]。
本当は、同じ須田町だが、軍鶏鍋の[ぼたん]
がよかったのだが、ここは8時までに入らねばならず、
きてみたら満席。時刻は、8時少し前。
あきらめて、いせ源へまわる。
ここも一杯。
店前にストーブが出ていて、数組の待っている人。
待とう。
この店と、前の甘味[たけむら]、そして軍鶏鍋の[ぼたん]の三軒、
震災後、昭和初期の木造日本家屋の店が残っている。
そしてこれに加えて、この前行った、蕎麦の[まつや]の四軒であろうか。
ここだけ池波先生のティーンエージャーだった頃の
東京の雰囲気、と、いってよいのだろう。
やはり、残ってほしい、と、思う。
玄関脇の硝子の入った古いウインドウには、いつもは
空だったと思うのだが、氷が詰め込まれたあんこう。
上にフックがあるが、ここにぶら下げられていた
こともあったのか。
「本物のあんこうです。ご覧ください。」
との貼り紙。
最近は、見たことのない人も少なくないのかもしれない。
隣に、『塩ゆでかに 江戸前料理』との古い木札が
これも前から、かかっているが、今はかには置いていない。
待ったのは15分、程度であったか。
このくらいの時間ならば、もう帰る人もあり、
入る。
ここの下足の小父さん。
前からこの人であったろうか。
赤い印半纏(しるしばんてん)。
襟には「神田須田町いせ源」、背中に店の印。
ちょっと小太りで、いい身体。
頭はきれいに禿げ上がり、福々しい柔和な笑顔。
もしかして、ここのご主人だったり?
まさか、そんなこともなかろう。
だが、こういう方が下足にいると、イライラせずに
待てる、と、いうものである。
靴を脱いで、番号の入った木札をもらい、
「お二階です〜」の小父さんの声に送られ、
黒光りのする幅の広い階段を上がる。
やはり忘年会シーズン。
入れ込みの座敷は湯気が立ち込め、満席。
皆さん、盛り上がっている。
一番奥の窓際のお膳。
日本家屋のこと、木製の硝子窓。
窓際はすきま風が入り、ちょいと、寒い。
だがまあ、鍋が始まれば問題ない。
ビールをもらって、鍋を人数分。
ここは、他のメニューをもらうよりも、
足りなければ、鍋を足した方がよいだろう。
お通し。
あんこうの身に、あん肝。
野菜は三つ葉、椎茸、銀杏、絹さや。
白独活(うど)は東京野菜。これがポイント。
つゆはちょっと甘目の薄いもの。
あんこうには火が通っているので、
温まれば、食べられる。
ぷりぷりのコラーゲンたっぷりのあんこうの身が、
うまい。
ビールから燗酒。
鍋も追加。
おじやももらって、ご馳走様。
うまかった。
勘定は階下の帳場で。
今日も酔っぱらった。
ふり返ると、たいしてよいこともなかったこの一年。
まあ、年忘れ。
いいじゃないか。
さて、もう一軒?。
千代田区神田須田町1丁目11番地1
03(3251)1229番
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