断腸亭料理日記2011
月々に月観る月は多けれど 月観る月はこの月の月
つくばの事業所の帰り道、
19時の社バスに乗ると、東の空のよい位置に、
月が見えたら、こんな歌を思い出した。
意味は、毎月毎月、月を観ることは多いけれど、
月を観るならば、この(旧暦の)8月の月、がよい。
つくばは、昼間は、30℃を越えていたが、夜になると、
流石にもう涼しい。
虫の声も大きく聞こえる。
これは、誰のなにか、も忘れてしまったが、
落語の枕で聞いたことのあったものと思う。
ふと、頭に浮かんだのである。
短歌というよりは、狂歌であろうか。
十五夜の月を詠ったもの。
9月12日。今宵は、中秋の名月。
十五夜。
私など、風流とは、縁遠い生活をしているが、
スラスラっと、この歌が頭に浮かんだのは、
高いビルのない、つくばで
この、よい月を見たせいであろう。
皆様のところでは、よい月が見えているであろうか。
といったところで、昨日の続き。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『浅草落語散策』。
またまた、昨日は御託を並べてしまったが、
まあ、江戸落語と、江戸東京の実在の街とは
切っても切れないものである、ということが
言いたかったのではあった。
さて。
集合は、雷門前、11時集合。
私は、縮の着物に黒の絽の羽織で、
元浅草の拙亭から、タクシーで向かう。
今日は、もう既に、また、真夏がぶり返しているような
暑さ。
雷門前に着くと、人出がもうすごい。
中国人の団体さんなども、見え、
皆、かわりばんこに、携帯などで、記念写真を撮っている。
この雑踏の中で、集まるのは、ちょいと、難しいかと
思ってもいたが、八割方、『池波講座』の方の方で
なんとか、集まった。
11時、雷門前の、日陰になった、交番の裏で、話を始める。
最初に、一応、皆さんの落語理解度、というのか、
どのくらい落語を知っているのかを測るため、
それぞれお一人、お一人に、出身地、好きな落語家、
好きな噺、を聞いてみる。
むろん、どのくらいのレベルで話をすればよいかを、
みるためではあった。
(結果は、マニアのような方は
いらっしゃらなかった。まあ、そうであろう、
そんな人が、私の『講座』にくるわけもない。)
さて。
雷門。
ここにちなむ、噺。
これは、なんといっても、粗忽長屋、で、あろう。
これを、雷門、と明確に特定しなくも、
“浅草寺の脇んとこ”といっていたり、
いずれにしても、浅草寺を舞台にしている。
江戸東京で、人が集まって、誰でもわかる場所
として、雷門は、恰好のところ。
ここで、人垣ができている。
ここで、なにがはじまるの?
イキダオレ。
え?、イキダオレがこれから始まるの?
いや、イキダオレはね、始まったり終わったりしないの。
ずっとイキダオレなの。
死んでるんだから。
あ〜、死んでるんだ。
じゃあ、死にだおれ、じゃない。
理屈を言われたって、知らないよ。
(ほんとは、イキダオレではなくって、
ユ(行)キダオレ、なんだけどね。)
と、まあ、冒頭は、こんな感じ。
談志家元は、粗忽、そそっかしい、のではなく、
主観が強い人間達なので、主観長屋だ、と、
いって演っていたっけ。
主観でも粗忽でも、どちらでもよい。
とにもかくにも、この噺、今書いた、ちょいとした中にも
爆笑のフレーズが二つもあり、全編、名作フレーズの
オンパレード。
どちらかといえば、三遊ではなく、
爆笑系の、柳派(柳家小さん一門系)得意の
噺であろう。
その昔では、志ん生師匠が最高であった。
亡くなった小さん師匠のものが覚えるのなら、
お手本になるのだろう。
そしえ、先に書いたように、談志家元と、志らく師他、立川流一門。
それから、志らく師などとも同世代だが、同じ柳派の
喬太郎師のものも、CDで出ているが、これは抱腹絶倒。
ここで噺の粗筋を書いても、長くなるだけなので
やめることにする。
(ご興味があれば、CDを買うべし!。)
この噺、私は実地にはできないが、
主要な抱腹絶倒フレーズは落とさないようにして、
ダジェストで、お話する。
まあ、おもしろい噺である。
数ある落語の中でも、いろんな意味で、
名作、佳作、というべきであろう。
(自演するのには、そうとうに難易度は高い。
私などには、到底及ぶところではない。)
紙数が尽きた。
つづきはまた明日。
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