断腸亭料理日記2011
6月12日(日)
さて。
日曜日。
今日は、家で少し、仕事。
2時すぎ、ある程度めどをつける。
朝飯を食べたきり。
ちょっと、食べに出ようか。
そういえば、内儀(かみ)さんが、
鮨が食べたい、と、いっており
私一人で、日本橋の吉野鮨へいったのを、
悔しがっていた。
この時間、鮨や、というと、どこであろう。
むろん、回転寿司であれば、どこでもやっていよう。
他には?
と、思い付いたのが、松屋の浅草の地下に入っている
栄。
すし栄は、銀座が本店。
銀座の松坂屋にも入っており、
ここには、池波先生も豊子夫人ときていた、
というのが『食べ物日記』
で判明してから、私も内儀さんなどとも買い物ついでに
いくようになった。
デパートのテナントの鮨や、といって、
正直のところ、いくべきところではない、
と、まで、思っていた。
池波先生が足を運んでいたというのは、目からうろこ。
現金なものだが、お墨付きをもらったような気がしたのであった。
この、栄は、銀座松坂屋裏、昭和通り近くに
本店があり、創業は江戸までさかのぼるといい、
なかなかに、氏素性の正しい店。
実際に昼間、行って食べてみても、
値段の割に、ある程度、きちんとした仕事をしている店
であった。
出店が、浅草松屋にも入っているのは
知っていたが、入ってみたことは、まだなかった、
のである。
3時すぎ、二人で自転車で出る。
天気は曇り。
私は、足を出した、短パンに、雪駄。
上は、ポロシャツ、という、いい加減な恰好。
銀座松坂屋の栄もそうだが、
ここも、地下の食品売り場の中にある。
きてみると、カウンターに、
初老、あるいは、お爺さんといってよいような
年恰好の男性の先客が、二人。(二人は別々。)
ここはカウンターだけのよう。
あいているカウンターの奥に、二人で座る。
瓶ビール、スーパードライを、もらう。
銀座松坂屋の店でもそうだが、
ここにも、ちょっと、珍しいような
種を入れた一人前があった。
これをもらおうか。
『夏の旬彩寿司
夏が旬のネタを中心に彩り良く揃えました。
鱧(はも)湯ぶり、鮎(あゆ)炙り、鱸(すずき)、
鰹(かつお)、姿巻海老、鯵(あじ)、穴子、
茹するめいか、まぐろ、中とろ(全10貫)。
1,701円(税込み)。』
だ、そうな。
しかし、こんな半端な時間に、浅草で、
そこそこ、ちゃんとした鮨を食べるのには、
ここ、と、いうのは、あり、なのであろう。
きたきた。
腹も減っているので、ばくばく、食べる。
私は追加で、小肌。
いわし、がよかったのだが、切れていたので鯖。
そして、生とり貝。
今、この季節は、なんであろうか。
やはり、なんといっても、鰹、なのであろう。
それから、貝?。
いや、貝は本当は、春真っ盛りが旬で、
夏近くは、産卵期か、産卵期後になるのか。
いかも、産卵期、か。
穴子、などは、本当は夏に向けて、
脂がのってくる頃、なのであろうが、
このところ、吉池など、魚やでは、
江戸前のものは、あまり見かけない。
あまり獲れていないのか。
真夏前の、ちょっとした、端境期、
なのかもしれない。
だがまあ、どんな季節でも、鮨と、いうものは、
うまいもの、で、ある。
そして、最近は、あそこの産地のものでなきゃ、
とか、この店の仕込み方はどうだ、などと、
あまり考えないようになってきた。
むろん、新橋のしみづ、
だったり、値が張るところのよさもあるのだが、
先日の、日本橋吉野だったり、今日の栄だったり、
そこそこちゃんとしていれば、十分である、とも
思うようになってきた。
それほど、気合を入れなくとも、満足できるように
なった、ということか。
ともあれ。
うまかった。
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