断腸亭料理日記2011

鰹刺身・小松菜煮浸し・

根曲りだけ

6月5日(日)夕

午後、自転車で出る。
曇り空だが、蒸し暑い。

行き先は、浅草、いつもお世話になっている、
男着物のちどり屋さん。

次回の『講座』は再来週だが、このため。

夏物をもう一枚買っておこうと考えたのである。
本来ならば、先月、5月はまだ衣替え前なので、
袷(あわせ)のはず、なのだが、暑そうなので、
単(ひとえ)を着てしまった。

そのおかげで、一枚夏物が足らなくなってしまった、
という格好なのである。

着物のルールは、5月までが袷で、6フホツ?メPチB
7、8月が薄物。
薄物というのは、絽とか紗(しゃ)。

で、今月は、単、なのだが、それでも暑そうなので、
紗(むろん安物だが)の着物と襦袢を購入。

と、いうことで、準備はできた。

ちょいと、蕎麦でも食おうか、とも思ったのだが
並木は改装中で、おざわは、店前まできてみると、
TVにでもでたのであろうか、珍しく、行列。

なにか買って帰ろうか。

田原町の、赤札堂に寄る。

こう暑くなってくると、さっぱりしたもの、
がよい。

小松菜とあさり剥き身の煮びたし。

剥き身がないので、殻付きのもの。

それから、小松菜と油揚げ。

それから?

鰹刺身。

半身、腹と背一柵ずつ。
1パック、400円しない。
千葉産、とあるので、銚子、で、あろうか。

スーパーでこの値段は安い。

おそらく、アメ横なら1本で、500円くらい、
かもしれぬ。

今年は鰹が豊漁なのであろうか。

ただ、この震災で三陸の漁業がニュースでも報道されている。
これを見ていると、三陸の船は、漁港が復旧していないので、
水揚げは銚子に、などといっていた。

銚子の水揚げというのは、必ずしも銚子付近で獲れたとは
限らず、三陸や、常磐かもしれぬ、ということである。

銚子で水揚げされると、スーパーでの表示は千葉産
ということになるのか。

野菜同様、私など、放射能のことは、考えないようにしているが、
この産地の問題は、ちょっと、一般の消費者には、わかりずらいこと
である。

ともあれ。

再び、野菜売り場。

見たことのないものがあった。
竹の子なのだが、細いもので、根曲がり竹、
と、書いてある。青森産。
最近、このような山菜類は、青森のものが
東京にもよく入っているようである。

皮をむかずに、そのまま焼いてもおいしい、
などと、売り場に書いてある。
珍しいので、買ってみようか。

帰宅。

さて。

鰹は切るだけ。
筍は焼くだけ、なので
料理らしい料理は、煮びたしだけ。

しかし、これとて、ただ煮るだけ、ではある。

小松菜と浅利むき身の煮びたし、というのは、
一般にはあまりポピュラーな料理ではなかろう。

東京の郷土料理、といういい方も適切ではない
かもしれない。

だが、少なくとも、私の家の懐かしい料理、ではある。

で、浅利。

今日は、むき身ではない。
殻付き。

これはどうするか。

まずは、鍋に浅利を入れ、ヒタヒタよりは
少し多めに入れ、火にかける。

煮立ってくると、貝は口を開ける。

と、火を止めて、貝から身を一つずつ、外すのである。

どうやって外すか。
イタリアンのシェフがTVでいっていたのを
真似ているが、開いた貝殻をピンセットのように使い、
別の貝殻から、身を外す、のである。

アイデア、ではある。

取った身は、茹で汁に戻しておく。

小松菜は洗って、4cmほどに切る。
油揚げは短冊に切る。

先の身を戻した茹で汁に切った小松菜と、
油揚げを入れ、酒、しょうゆで、濃いめに味を付け
煮込む。

もうこれだけ。

煮びたしなので、よく染み込んだ方が、
煮ひたしらしい味になる。

根曲がりたけは、網で焼く。
この網は、最近買ったのだが、ガスにかけて使うもの。
網が上下二重になっており、下の網には、セラミックが
ついている。セラミックが熱せられて、炭焼きと
同じような、遠赤外線で焼く、ということになるよう。

皮をむかず、そのまま、この網にのせて焼いてみた。

鰹は切るだけ。


根曲がりたけは、塩で。
皮をむきながら、食べる。

味は、若い筍。
香ばしく、うまい。

鰹。


スーパーのパックものにしては、そうとうに、
うまい。
生ぐささや、血のにおいなどもなくみずみずしい。
これはめっけもの、安くてうまい。


煮びたしは、やはり、故郷の味、で、ある。

三品、つながっていないが、どれも、うまい。





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