断腸亭料理日記2010

深川森下・やきとん・山利喜

3月12日(金)夜

今日は、同僚と呑みにいく。

東雲の方に住んでいる者があったので、
そちら方面、と、考えて、久しぶりに、森下の
山利喜へいってみようと考えた。

深川森下の山利喜、というのは、おそらく、
酒呑みの中では、そうとうに有名なのではなかろうか。

もともとは、深川森下の大衆酒場、やきとん、煮込みの
居酒屋。

戦後、で、あろうか。本所深川、本所の北側である、墨田区北部、
荒川を渡った、葛飾、さらに、足立、荒川、などなど、広い意味での
東京下町にたくさんできた、やきとん(もつ焼き)、煮込みに、
酎ハイの居酒屋。
葛飾立石の宇ち多”などは、カリスマ的な人気、
で、あろう。

森下の山利喜は二代目(?)のご主人がフランス料理の修業を
されていた、ということで、名物の煮込みにしても
ちょっと、他とは違う。
(以前に、NHKの男の食彩でレシピを出されていたので、
私も真似をして、煮込みを作るようになった。
赤玉ポートワインやローリエなどを入れるのがポイント、
で、ある。)

しかし、一方で、洋食の修業をしていた、というような
居酒屋、というのは、今時、そうそう珍しくはなかろう。
ここが違うのは、先に述べたような、戦後からの、
大衆酒場のにおい、は、きちんと残している。
これがのがよい、のである。
これは、深川森下、という土地柄ということが
大きいのではなかろうか。

山利喜は、森下交差点の新大橋通り沿い、
先日いった、さくら鍋の、みの家
の並びに大きな赤い提灯をぶら下げた店。

これが本館で、ここしばらく、建て替えの工事をしており、
清澄通り沿いのもう一軒ある、新館だけで、商売をしていた。

昨年12月であったか、本館の方の出来上がった、
ということは、聞いていた。

別の場所から向かうメンバーもいるので、7時半に、
店で待ち合わせ、と、いうことにしていた。

山利喜は、予約は事実上、できない。
“事実上”というのは、6時までであれば、予約はできるようなのだが、
6時までに入れるのであれば、予約はいらない、であろう。
従って、予約はできない、と、いうこと。

まあ、有名になったとはいえ、やきとんの、気のおけない
大衆酒場に予約をしていく、ということ自体、ナンセンス、
であることは、いうまでもないのだろう。
こういうところも、“におい”を残しているところで、
好ましい。

従って、昔から、居酒屋であるが、早い時間でなければ
並ぶ、ことになる。(居酒屋で並ぶのは、ご想像の通り、
いつあくか分からないのを待つことになる。)

新装なった新館にきてみると、案の定、店の中で、椅子に座り
待っている人がいる。

そこで、新館の方に、まわってみる。

と、こちらは、運よく、ちょうど出る人があり、
3人分、の席が確保できた。
ラッキーであった。7時半であれば、早い時間から呑み始めた人が、
出る頃でもあろうと、一応は予測してきたのではある。
(だめなら、みの家、と、考えていた。)

座ると、お通しがきた。


たこと大きめに切った、にんじんなどが入った、
ピクルスのようなもの。

私は、呑みものは、レモンハイ。


やきとんや、では、やっぱり、酎ハイ、で、あろう。

煮込み、玉子入り、に、ガーリックトーストを人数分。
ここへきたら、これを食べないわけにはいかない。

それから、ほたるいかのぬた。
(茄子の漬物を丸のまま、辛子を添えて出す、のも、
ここの名物だが、これは、季節ではなく、なかった。
この食べ方は、池波先生もされていたと思うが、
東京下町のもの、で、あろう。)


ガーリックトーストは、煮込みのつゆにつけて、
食べる。

初めて食べる連れも驚愕、で、あった。
誰にでも胸を張って、紹介できる味、で、ある。

やきとん、レバ。


むろん、うまい。

そらまめ。


それから、こんなものもある。


くさや。
これも東京下町の酒の肴としては、王道、で、あろう。
新島のむろ鯵。

私の家では、祖父さんが酒呑みであったためか、
子供の頃から、馴染みの深いもの。

鶏レバーのテリーヌ。


盛り付けもちょいと、よい。

チューハイを、三杯、四杯、、、
なん杯呑んだか、もはやわからぬ。
結局、閉店で、追い出されるまで、呑んでいた。

まあ、呑みすぎ、で、ある。



山利喜




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