断腸亭料理日記2010
3月16日(火)夜
夕方、王子で打合せ、6時過ぎ終了。
当社は歴史的に、赤羽、王子方面になんヶ所かの
工場があった。
現在、北関東など、首都圏近郊の地方への移転などは
進めているが、現在でも工場としては使っていなくとも、
様々な用途の事業拠点としては、この界隈に残っている。
地図、で、あるが、今日は現代のもの。
より大きな地図で 断腸亭料理日記/王子 を表示
先に、歴史的に、と、書いたが、
王子、と、いえば、明治初頭、遥か文明開化の頃。
王子村、飛鳥山の東、音無川に沿った場所に、
明治8年(1875年)に澁澤榮一が「抄紙会社」、翌年
その隣に、「大蔵省紙幣寮抄紙局」ができ、当時は紙幣用の和紙
を作る工場が建てられた。
「抄紙会社」は後の王子製紙。「大蔵省紙幣寮抄紙局」は、
現代の国立印刷局王子工場。
「抄紙会社」のできた場所、その後の王子製紙の工場は、
今の、王子駅の駅前、東側の東武ストアの場所、のよう。
国鉄の王子駅は「抄紙会社」より後の、明治16年開業。
王子製紙の前に、駅ができた、と、いうべきであろう。
(当時は日本鉄道という民間鉄道。)
今、王子界隈で、製紙に関連するものは、明治通り沿いにある、
印刷局の王子工場、少し離れるが、飛鳥山の隣にも印刷局の
滝野川工場はあり、また、飛鳥山に紙の博物館。
あるいは、王子神谷近くになるが、王子五丁目団地に
日本製紙(旧十条製紙、十条製紙も戦前は王子製紙)の倉庫
などがある。
その他にも、この王子駅を最寄りとする工場は、
今でも少なくはない。皆さんになじみの深いところでは、
トンボ鉛筆。場所は、隅田川にほど近いところになるが
本社がある(ついこの間まで工場もあった)。
王子は音無川(石神井川)や、隅田川(荒川)の水運と水を
立地として、東京近郊の内陸であるが、水を大量に必要とする
製紙工場から始まり、工場地帯として近代をすごしてきた
街と、いうことができよう。
(当社のこの界隈から、赤羽にかけてあるいくつかの事業拠点も
むろんそうした文脈の中にある。)
そして、工場があれば、そこで働く人々がおり、その人々、
昔風にいうと、労働者の街、であることはいうまでもない。
と、そんな明治以降の王子だが、江戸の頃は、
と、いうと、これがまた、180度、違うのは
ご存じであろう。
落語ファンであれば、王子といえば、先代文楽で有名な
王子の狐。噺には、実名で、王子権現の門前の料亭扇屋の
玉子焼きが登場する。
(この扇屋の玉子焼きは、日本橋と新宿の高島屋で買える。
べら棒にうまいので、お試しを。
また、同じく文楽師だが、王子の幇間(たいこ)という噺もあり、
ちょっとレアモノ、だが、これもおもしろい。)
王子神社、王子権現はお稲荷さんで、むろん今も、JRの南側、
十条寄りにある。関東のお稲荷さんの総元締めで、
噺の枕でもいうが、大晦日には、関東中の御狐様が、
ここに集まってくる、なんという伝説もある。
そして、飛鳥山。
今はちっちゃな小高い公園になってしまったが、江戸の頃は
この周辺も含め、自然にあふれ、音無川の流れ、王子七滝、
などという七つの滝。
そして江戸近郊の桜の名所として江戸の人々には
風光明美、王子権現参詣とセットで、
江戸市中から1日かけて遊びにこれるところとして、
茶店や料理やもでき、大いににぎわったのではある。
(今も、近隣有数の桜の名所であることは、かわりない。)
そんな、王子界隈。
帰り道、同僚と王子駅周辺で呑もう、と、考えた。
当社は、先にも書いたが、どちらかといえば赤羽の方が
近く、呑むといえば、赤羽。
いわば、王子はあまりこないところなのだが、きっと、
よいところがあろうと踏んで、探索をしてみた。
見つけたのは、立ち呑みのおでんや。
これは、飛鳥山側の駅に接した路地にあるちっちゃな店。
ちょっと寒いのでおでんもよいかと思ったのだが、
界隈の労働者諸君で狭いカウンターは既に鈴なり。
あきらめて、北口。
と、いったところで、長くなった。
二週に渡るが、つづきは日曜配信分。
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