断腸亭料理日記2010
1月15日(土)夜
さて。
そんなことで、縞の着物を買って帰り、
さっそく、袖を通してみる。
内儀(かみ)さんと連絡を取り、7時に予定通り、
山の上ホテルの、天ぷら山の上に予約を入れる。
カウンターは一杯で、テーブル席。
ホテルなので、カウンターでもテーブルでも
大差はないだろう。
内儀さんは一度帰宅、私は先ほどの着物を着たまま
二人で出る。寒いし、面倒なので、春日通りから
タクシーに乗る。
山の上ホテルは、ご存知のように御茶ノ水、駿河台。
ちょうど、明治大学の裏手あたりの路地といってよいようなところにある。
従って、別館というのも最近はできているようだが
本館は古い洋館の小さなホテル、で、ある。
本館の建物が建てられたのは、戦前の昭和12年という。
終戦後、米軍に接収され、昭和28年に返還され、
以後、山の上ホテルとして、開業したらしい。
ご存知のように、池波先生の定宿というのか、
仕事をされるのに、こもられたところ。
また、先生自身が書かれているところでは、
奥様やお母様の息抜きをさせるために、
泊まっていたともいう。
ことに、有名なのは、銀座の天ぷら近藤、の、
近藤氏がここの和食、天ぷらのコーナーを勤められていた頃、
池波先生は滞在されていたので当たり前だが、
朝、晩と、酒食をされていた、ということ。
また、ここは、池波先生以外にも、吉行淳之介氏だったり、
様々な作家、文人に利用されたところ。
タクシーに乗ると、運ちゃんが、
どういうルートでいきますかね、と、聞く。
私の道路の知識では、靖国通り、駿河台下から、上がって、
左折、ぐらいである。運ちゃんは、春日通りから、昌平橋の通り、
蔵前橋通り、嬬恋坂を上がって路地を左折、本郷通り、聖橋を
渡って、ニコライ堂を右に見て、信号を路地に左折、
明大前の坂を突っ切って、突き当たりが山の上ホテル、
の、ルート。
今、このくらいのルートをすらすらと頭に浮かべられる
運ちゃんは、東京でも貴重ではなかろうか。さすが。
しかし、タクシーの運転手、なんというのは、このくらいでなくては
ならないような気もする。私が社会人になった頃、20年ほど前なら
普通であったかも知れぬ。
ともあれ。
車が正面に着くと、ベルボーイが、開けてくれて、降り、
雪駄を引きずって、本館の玄関から入る。
着物を着ていると、こちらの気分が違うのもあろうが、
やはり、こういうところでの扱いが違う、ように思えるのは
気のせいではないだろう。
いつもの仕事着、スーツ姿、ともまた違うであろうし、
ある種、ヘンな人、という見方はされるだろうが、
ラフな、いい加減な格好をしているよりは、よほどよい、
であろう。
入ると、突き当りが階段。
その前に案内板が出ている。
それを見ようか、そこに立っている、ホテルの人に聞こうか
一瞬迷うが、聞いてみる。
と。
はッ、天ぷら?!、はい。
と、連れていってくれた。
ホテルの内装はなるほど、昔の洋館風で、クラシック。
シックなバーなども左手に見えた。
天ぷらコーナーへ入り、名前をいい、テーブル席に
案内してもらう。
店内は、料理人が三人ほど立つカウンター席と、テーブルが数脚。
奥に座敷もあるよう。
思ったよりも広く、明るい。
サーヴィスをする男女は、きびきびとした動き。
一先ずは、瓶ビールをもらい、メニューを見る。
ここの夜のメニューはなかなか、値が張る。
9450円から、上は16800円。
一度、ここの日本橋三越の出店で、昼、天丼を食べたが、
これは、3360円也。
天ぷら店としては、やはり、高価、で、あろう。
特に根拠はないが、下から二番目、
天ぷら定食(1)10500円、と、いうのにしてみる。
ビールがきた。
お通しは、山椒風味のじゃこ。京風である。
やはり、ホテル、さほど待たずに出てきた。
海老の頭、から。
三つ。
と、いったところで、つづきはまた明日。
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