断腸亭料理日記2010
1月12日(火)
今日は、京都出張。
日帰り、で、ある。
朝9時、東京駅から、のぞみに乗って、
11時半過ぎ、京都駅着。
行き先は、京阪線の神宮丸太町。
京都、洛中では北の方。
鴨川沿い。
丸太町、と、いうのは、東西の通(※)の名前で、
この丸太町通は、京都御所の南に接して、
東西に走る通。東西に走る通の中では、
御池、四条には及ばないのかもしれぬが、
比較的大きな通、なのであろう。
むろん、こんなことは京都の方は
皆知っていることではあろう。
これが東京であれば、この丸太町通、さらには街、町の由来、
昔はどうだったのか、など、私の手元には古地図を含め、
たくさん資料の用意があるのだが、如何せん、
京都はまったく資料を持っておらず、語ることができない。
(おそらく、研究も含め、たくさんの
資史料があるはずであるが。)
ちょっと、考ええただけでも、随分と疑問が出てくる。
たとえば、四条、五条通は、今は大きな通であるが、
一条、二条、三条、は、通としては名前は残っており、
また、二条は二条城などあるが、それ以外は、一条にしても、
さほど大きな通ではない。昔からそうなのか。
そもそも、この数字の付いた通の名前は、いつごろ、
どんなふうに定められたのか。あるいは、この丸太町通には、
他にもいくつも町はあるのに、なぜ、丸太町、なのか、、などなど。
ともあれ。
12時すぎ、京阪線の神宮丸太町駅を降りる。
東京も、冷たい雨が降りそう、であったが、
京都は雨。
昼飯は、この駅のそばの路地にある、
京のつくねや、というところ、と、決めてきた。
ここには一度きたことがあった。
コンビニで傘を買って、丸太町通から、路地を北へ
上がったところ、店の前にきてみると、、、。
休み。昨日の祭日の振り替え、と、貼り紙がしてある。
あー、残念。
実は、もう一軒、丸太町通を鴨川を西に渡った
南側に、よさそうなそばやを事前に見つけておいた。
そちらへいってみようか。
寒々とした、雨の中、通に出て、橋を渡る。
この橋は、丸太橋、と、いうのか。
このあたり、雨のせいもあるのか、
四条あたりと比べれば、人通りも少ない。
渡った南側に古そうなレンガ造りの建物がある。
文化財の立て札が立っており、なんでも、
京都で始めての電話局の建物のよう。
一本目の路地を左に下がる。
このあたりは、駒之町というよう。
なにか、静かなところである。
そばやは、もう少し南であった。
歩いていくと、突き当たり、T字路。
その突き当たりの正面、マンションの一階に、
ちょっと小さな京都によくある割烹、小料理屋の
ような、入口が見え、暖簾が出ており、
外にメニューが出ている。
ランチもやっているようだ。(850円?だったか、
安い。)
なんとなく、よさそうな雰囲気。
方針転換、入ってみよう。
店の名前はむら太、と、いう。
(この店の住所は、中町通竹屋町上る末丸町、と、店の
名刺などには書かれている。正式な住所は、末丸町、で、
よいのだろうが、その前の中町通竹屋町上ると、書かれている部分。
今の地図のどこを見ても、中町通も竹屋町も、どちらも
書かれていない。やはり、これは旧町名、なのか。そういえば、
先斗町も、正式な町名では今はなかったと思われる。
しかし、今でも、普通に使われている住居表示でもあるところが、
京都、というところ、なのか。)
入ると、靴を脱いで、上がるよう。
どうぞ〜〜〜、と、奥から声。
上がる。
正面にくの字にカウンター。
その向こうに、調理場。
先客は、女性一人。
手袋を脱いで、コートとマフラーを取り、メニューを、
と、いうと、ランチは日替りで、一品らしい。
(外のメニューに色々書いてあったのだが、
そういうこと、だったのか。)
ともあれ、お願いする。
今日は、鶏の治部煮(じぶに)、と、いうこと。
店は、ご主人ともう一人の女性の二人。
しばらくして、出てきた。
鶏の治部煮。
治部煮というのは、金沢の料理だと思う。
鶏に小麦粉を振って、煮たもの。
鉄(かね)の鍋に入って出てきた。
温かで、少し甘めの味付け。
ご飯と、煮もの。
京都風にいえば、野菜の炊き合わせか。
赤いのは、人参。京人参、金時人参というのか。
青いのは菜花。
味付けは薄め。
手前の小鉢はじゃこと、菜っ葉(大根の葉?)。
味噌汁は赤だしだが、これもさっぱり目の味付け。
実が細めに切った、独活(うど)。
独活を味噌汁にいれるのは、よくあるものか。
乙、ではないか。
漬物は、大根と赤蕪。
治部煮以外は、さっぱり目だが、野菜の切り方からして、
十二分に気を働かせて、料理をしていることがわかる。
ご飯をお代わりしようと思ったが、
食べすぎを抑えるためにも、足りないくらいがちょうどいい、
と、思いとどまる。
しかし、京都というところ、ふりで入った
小さな割烹でもこれほどの味を出している店がある、
というのは、さすがに懐が深い、と、いうべきであろう。
勘定をして、出る。
少し、時間があるので、橋の西詰から、雨の鴨川の河原に降りる。
なにやら、白い鳥達が群れている。
さて、会議だ。
・・・・・
17時、会議終了。
京都駅、新幹線の待合フロアにある、そばや松葉に入り、
燗酒と、鴨なんそば。
松葉は、この前、三条南座の前にある本店で
初めて、名代の、にしんそばを食べた。
ここのつゆは、すべて、色の薄いもの、なのであろう。
これはこれで、うまい、もの、で、ある。
燗酒が、菊正宗、といって出てきたのだが、
これ、東京に出ている菊正とは、味が違うように
感じた。菊正は毎日飲んているので、これは間違いない。
前に、京都の人に聞いたことがあるが、
灘でも、伏見でも東京に出すものと、地元消費のものと、
味を変えている、と、いう。
そういうことかもしれぬ。
同じ菊正でも、いつものものよりも、
コクがあるように思われたのである。
さて。
帰ってきて、昼に入った、むら太、という小割烹。
ちょいと、調べてみたら、なんでもご主人は
元は、プリンスホテルで料理長をされていた人、
らしいことがわかった。なるほど。さもありなん。
850円のランチでも、只者ではない様子を発信していた。
さすが、京都、で、ある。
※東京では、○○通り、と、『通』の字には『り』を
送るのが通例であるが、京都(関西?)の場合、『通』のみで、
『り』は送らないのが普通。このため、例によって、今日は、
京都のため、『通』にはすべて『り』の送り仮名はなしの表記にする。
むら太
〒604-0901
京都府京都市中京区中町通竹屋町上る末丸町541-25
075-253-1655?
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