断腸亭料理日記2010
2月20日(土)朝食
土曜日の朝飯。
このところ、自分で飯を炊く、
と、いうことが続いている。
例の鍋で炊く方法、で、ある。
前にも書いているが、これ、
ひょっとすると、電気釜で炊くよりも、
コツを覚えれば、簡単、そして短時間、かもしれない。
で、作ったのは、冷凍庫にあった豚ローススライスを
焼いたもの、菜花の辛子じょうゆ、大根の味噌汁に、
柴漬け。
と、この写真を見て、自分で気が付いたのだが、
ご飯が右、に、あること。
過去の写真でもおそらく、こうなっていた、
のではないかと、思われる。
うるさい方なら、とんでもない、
仏様と一緒じゃないか、と、おっしゃるだろう。
ご案内の通り、正しくは、ご飯は左で、汁ものは右。
右利きの場合、箸は右手で持ち、
ご飯の茶碗は、左手で持つので、左側に
置いた方が便利であるのは、明白、で、ある。
便利、である、と、いうこと以上に、
これは古来からの日本人の食事の作法である。
写真を撮る時ぐらい、気を付ければよいのだが
もともと、右に置いていたようで、それが
自分としては、落ち着く状態にどうもなっている
ようなのである。
それで、気が付くと、こう置いている。
育ちのわるさ、というのか、
躾のわるさ、なのか、、。
親をうらむか、あるいは、親の教えを
ヘ、とも思わなかった、のを悔いるべきか。
ついでにいうと、私は箸の持ち方もだめ、で、ある。
どうなるかといえば、にぎり箸、まではいかないが、
中指を間にはさめない、のである。
これは、教えられたのは憶えているが、
不器用で、できずに、そのまま成長してしまった、
のである。
こうしたことは、この年齢になると、
恥ずかしいかな、もうなかなか、直るものではない。
まったくもって、困ったもの、で、ある。
一人前の大人の男として、
人前で飯が食えない、ではないか、
と、いうことにもなろう。
こうしたことは、自分のことを棚に上げると、
人のことは、随分と気になることがある。
やはり、我々世代以下の、若い世代で、あろう。
よく目につくのは、犬食い、と、いわれるもの。
左肘(ひじ)をお膳について、もっとひどいと、
お膳の下にしたまま、茶碗を持たずに食べる。
これは、そうとうにみっともない。
立ち喰いのそば、などでも、カウンターに肘をついて
食べているのをよく見る。私は、持ってしまうことも
多いが、持たなくとも、少なくとも左手は、丼に添える方が
見た目にはよいように思う。
こういうものも、親の躾、なのであろう。
そして、もう一つ、
親の躾の後、成人し、女の子と飯を食うような機会。
こういうものがあると、男は、少しちゃんとしてくる。
どんなイケメンでも、一緒に飯を食うのに、
犬食いでは、幻滅、で、は、あろう。
あるいは、結婚をして、内儀(かみ)さんに直される、
と、いうのもあるかもしれない。
私もうちの内儀さんにいわれた記憶がある。
そして、四十を越えて、偉い人との会食、
あるいは、格式のあるようなところでの食事、、
そんな場面でも、気を付けなきゃ、と、
思うようなこともある。
結局、ある程度までは親の躾。
その後は、男の場合は、池波先生のいうような
男の作法、というような文脈で語られるもの、
かもしれない。
つまり、先にも書いたが、一人前の男として、
人前で、恥ずかしからぬ振る舞いができるか否か。
あるいは、こんなこともある。
やはり、これも池波先生であるが、
毎日していることが、きちんとできないようじゃ、
男としては失格である、ともいう。
真田太平記などにも書かれている。
戦国小田原の、北条氏康、氏政親子の汁かけ飯の逸話は
有名である。(氏政は、北条家を滅ぼした当主として、
語られる。)ある時、氏政が食事の時に、飯に
二回に分けて、汁をかけた、と、いう。これを見て、
父、氏康は、毎日していることなのに、なぜ、一度で
量が量れない?これで、北条家もわしの代で終わりか、と
嘆息した、という。
自分の汁かけ飯の量も量れない男が、家来の気持ちを
推し測れなかろうし、まして一国を治めるなど、とても
できないだろう、ということ。
ご飯は左、から、話が飛んでしまった。
しかし、飯の食い方一つでも、その男の値打ち
のようなものは、ある程度決まってくるもの、
なのかもしれない。
気をつけねば。
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