断腸亭料理日記2010
さて、順序が入れ替わってしまったが、
これは、一昨日配信の『花見』のつづき。
4月4日(日)第二食
桜橋から、向島の土手を一回りして、吾妻橋まで戻ってくる。
花は満開、向島の桜の向こうに、スカイツリーの見える風景。
途中、出店(でみせ)で
おでんと、燗のついた、カップ酒を呑んだり。
戻ってくると、やはり、吾妻橋、東武の浅草駅付近は
ごった返す人出。
内儀(かみ)さんが、蕎麦が食いたいといっていた。
蕎麦や、で、ある。
浅草にも蕎麦やはなん軒もある。
近いところでは、ご存知、雷門の前の並木藪。
ここはむろんよいのだが、土日の昼間などはお客の列。
あるいは、雷門通りの尾張屋。
尾張屋は雷門通りに二軒ある。
本店と支店。雷門に近いところが支店で、
旧仁丹塔、田原町に近いところにあるのが、本店。
本店の方は、店内に写真が飾られているが、
断腸亭永井荷風先生が毎日のようにこられていたところ。
そば、というよりは、大海老天の天丼が有名。
あるいは、趣味そば系になるが、おざわ。
(趣味そば。最近あまり書いていなかった。
おわかりになろうか。昔からこの文章を読んで下さっている方は
ご承知であろうが、少し、説明をする。
私が作った言葉ではないが、まあ、私しか使っていないかもしれない。
一言でいうと、老舗以外の新興の“こだわり”蕎麦や、
といったらよかろう。
この“こだわり”が曲者(くせもの)。
むろん、よい店もあるが、どうであろうか、
私の感覚では、8割、いや、9割はだめであろう。
このあたり、詳しくは、以前になん度も書き、
考えてもいるので、よろしければご参照願いたい。
で、ここは、むろん残りの1割の方。)
おざわも、混んでいよう。
浅草でそこそこ著名な蕎麦やは、まだあるが、
私が普段いくのは、こんなところ。
で、もう一軒。
寺方蕎麦、長浦。
ここ、ちょいと、細い路地裏にあり、うまいのだが、
さほど混まないのがよい。
寿司屋が多く軒を連ねていたので、寿司屋通りと
いっていたが、段々に減って、今はそう呼んでいないような
気もするが、六区興行街につながる、南側のアーケードの通り。
そこから、北へ向かって右側に路地を入ったところにある、
小さな店。
向島の水戸街道沿い、曳舟の先にもあり、こちらが本店。
「寺方蕎麦」というのが、冠に付いている。
これはなにか。
「寺方」はテラカタ、と読む。
江戸の頃、お寺で蕎麦を打ち、
それを檀信徒へ振舞う、という習慣があり、さらに、
それそのものを商売にする寺も現れるようになった、という。
つまり、まあ、精進料理の一つとして、蕎麦があった
ということらしい。
で、今、東京の蕎麦やの屋号で、○○庵、というのがあるが、
これは、さかのぼると、その寺方の系統だという。
(ついでに、長浦は、この本店のある東向島、寺島村にあった
古い地名のようである。)
ともあれ。
雷門界隈の雑踏をできるだけよけて、
細い路地、を選んで、歩く。
長浦にたどりつき、格子を開ける。
広い店ではないが、むろん相席だが、
運よく入り口すぐに、あいている席が二つ。
内儀さんと座る。
寒かったので、燗酒を二合で、もらう。
つまみは、なにがよかろう。
ここには、「寺方」というだけあって、胡麻豆腐だの、
それらしいものもある。
山芋千切りの酢の物。
それから、玉子焼き、これは「寺方」ではなかろうが、
玉子焼き。
落ち着いて、一杯、二杯。
山芋。
玉子焼きもきた。
きれいである。
ひとしきり、呑んで蕎麦にする。
やはり、温かいのがよい。
私は、鴨なん、内儀さんは野菜天そば。
と、頼んだのだが、鴨が切れているだかで、
肉なん、に、変更。
野菜天
肉なん
ここでは、もりだったり、とろろだったり、
冷たい方が多く、温かい蕎麦を食べことがあったか、
実のところあまり記憶はない。
冷たい蕎麦では、そこまでの印象がなかったのだが、
今日の蕎麦は、随分と細く感じる。
温かいと、すぐに伸びそう。
どんどんと、食べる。
外で、待っているお客さんもおり、さっと、食べ、
勘定をして、出る。
花見から、温かい酒。
温かい蕎麦。
よい気分、で、ある。
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