断腸亭料理日記2009

穴子、を、煮る。

3月7日(土)第二食

どうも、微妙な風邪、で、ある。
7度ちょうど程度の微熱、と、いうのは、気の持ちよう、
の、ような気もしてくる。

やはり、動いた方がよいのか、、。
天気もよく、ちょっと着込み、歩いて、
出かけることにする。

行先は、いつもの、アメ横。

今日は、なにがあるか。
アメ横のいつもの魚やをのぞくのは、楽しみ、で、ある。

きてみると、、。

珍しい。
穴子がある。

この店、で、あるから、なん本あるのか、
一山どかった。
で、1000円。

むろん割いてある。

穴子ではなく、ぎんぽという天ぷら用の魚であったが、
以前に、目打ちも買って、悪戦苦闘をして、割いたことがあったが

とても穴子など、自分で割けるものではない。

いつもの500円ではないが、江戸前、と、書いてある。
穴子の季節はどうなのだろうか。
冬はあまり、脂はないのか?
わからぬが、この店にあるのは、希少、で、ある。
久しぶりに、煮てみようか。

買い求め、再び歩いて、帰宅。


開けて、数えてみる。
太めのもの、細めのものと、色々あるが、10本。
1本、100円ということである。
やはり、安いであろう。

穴子は、吉池にはいつでも売っている。
多くは、対馬あたりのもの。
(ひょっとすると、韓国産?)
それでも、一本あたり、200〜300円はしたと思う。

穴子もぬめり、が、ある。
全部は取りきれないが、よく洗う。

穴子も、霜降りををした方がよいのだろうか。
いつもは、そのまま煮ていたと思うが、
今日はやってみようか。

やかんで湯を沸騰させ、パッドに並べた穴子にかけ、
冷水で急冷。
量が多いので、3回に分ける。

再度水洗いし、残っていた内蔵なども、取る。

大きな鍋を用意。
霜降りをした穴子をきれいに並べる。
ここに、しょうゆ、酒、砂糖、水をひたひた程度に入れて点火。
砂糖は多め。
先週のチューボーですよ!、で、きんきの煮付けをやっていたのだが、
そこで、最初はしょうゆは薄めで煮始めるといっていた。
これをちょっと試してみる。
意図は、甘みを先に染み込ませる、という。

4〜5分煮て、しょうゆを追加。
しかし、この後、煮汁を煮詰めた、いわゆるツメを
作るので、目一杯濃くはしない。
どうも、普通の煮物の感覚のしょうゆの量だと
煮詰めた時に、甘みも強いのだが、塩分も強く、
ツメとしては、今一つのような気がしていたのである。

普通の煮魚では、7〜8分だが、もう少し長く、
ある程度、穴子の身が、崩れはしないが、柔らかくなる程度を
目指してみる。
12〜3分。
様子を見ながら煮ていく。


15分程度、で、あったか、つゆも少し
煮詰まり始めたところで、みりんを加える。
後から入れたのは、やはり、チューボーですよ!、の、
照りを出すというのが意図。
(なのだが、見た目には、穴子、だからか、
効果のほどは、よくわからない。)

火を止め、しばらく、落ち着かせる。

煮詰めるため、つゆだけ、別の鍋にあける。
こちらは、強火で加熱、煮詰めていく。

煮上がった穴子。


煮詰めている間、テレビなどをみていた、、、のだが、、。

ふっと、煮詰めていたのを
瞬間、忘れ、煮立った音で気が付いた。

きてみると、あぶくが一杯。
焦げるまでは間があったが、もうほとんどよい状態。
よかった、よかった。
せっかくのツメを、焦がしてしまってはだいなし、で、ある。

熱いうちにストック用の瓶に入れておく。
(冷めると、鍋にくっついているところなどは
カチカチに固まってしまうのである。)

結局、たいして時間もかからず、ツメはできてしまった。
強火で煮詰めるのは、乱暴なのかもしれぬ。
プロに聞いてみると、本当は出てくるアクなども
取りながら、じっくり煮詰めるという。

しかしまあ、ツメの味をみてみると、
わるくはない。
できてしまったから、いいか。

さっそく煮上がった穴子にかけて


食べてみる。

鮨やでは、太いところは、皮を上にしてにぎり、
細いところは、身を上にして、にぎっている。
それを真似て、盛り付けてみた。

ふむふむ、ちゃんと煮穴子には、なっている。
特に頭近くの太いところが、うまい。
やはり、ここが一番脂がある。

10本あるが、残りは冷蔵庫で、しばらく楽しめそう、
で、ある。

さて。

後日談というのか、ちょうど、今、例のベスター先生の
『築地』を読み終わり、買ってあった、
神田鶴八の先代のご主人の書かれた、
『神田鶴八鮨ばなし (新潮文庫) 師岡 幸夫 (著)』

を読んでいる。この中で、ちょうど、この穴子を煮た翌々日、
月曜日あたりに、師岡氏の書く、穴子の煮方を読んでしまった。
(なんと、この本では、割き方まで写真入りで載っている。)
それで、一点だけ、決定的な違いを見つけることになったのである。
それも、穴子を煮る時の秘訣といってもいいこと。

それは、煮始める時のつゆ。
穴子は、穴子の煮汁で、煮る、ということ。
これは、おそらく、ツメにする前の煮汁なのだろうが、
サラのしょうゆと酒、砂糖のつゆで煮たのでは、
煮汁の方に、穴子のうまみが出てしまう。
(だから、ツメが、うまい、のだが。)
そこで、師岡氏の言葉では、穴子を煮た煮汁で
煮始めることによって、また、穴子に旨味を返してあげる、
ということだそうなのである。
(正確には、煮汁だけでは足らないので、水、しょうゆ、酒、
砂糖も加えるという。)
どこの鮨やでもそうなのかは、わからぬが、
少なくとも、この鶴八の師匠筋、柳橋美家古系列は
先の、新橋のしみづ、祇園のまつもと、なども、そうなのであろう。
神田鶴八から暖簾分けをした弟子達には、独立時に、
煮汁を分けてあげている、とも書かれている。

なるほど。

しかし、これは、プロであれば頻繁に煮るであろうから、
よいのだが、家庭ではむずかしい。
ツメになっていれば、長期保存は可能だが、
煮詰めていなければ、冷蔵庫に入れても
すぐにわるくなってしまう。
(ツメを入れて煮始める、というのは、可能で、あるが。)

むずかしいもの、で、ある。

(蛇足だが。師匠は霜降りは、していないようであった。)



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