断腸亭料理日記2009
2月4日(水)夜
先日、会社近所の鮨や、鮨太鼓を書いた。
帰りに、また、ちょいと、寄ってみた。
腹が減っていたので、いきなり鮨を握ってもらって、
食べた、のであるが、最後に食べたもの。
これを書いておきたかった。
なにかというと、これ。
巻物、で、ある。
これが、なにを巻いたもの、で、あるかは最後に書くとして、
鮨の中で、巻物、に、ついて、考えてみたくなった。
ご存じの方は、ご存じであろうが、
東京で、“江戸前”の看板を上げている鮨やでは
巻物といえば、最後に出すのは、海苔巻、で、あろう。
海苔巻、と、いっても、なぜだか、正統江戸前鮨では、
普通はかんぴょう巻と、決まっている。
かんぴょう巻きは、大坂摂津の木津。名物だったので、
木津巻などともいう、と、いうのは、前にも書いた。
しかしまあ、そんなことは、よい、のである。
鮨やで、巻物、と、いうのは、楽しみ、な、もの、で、ある。
巻物というのは、酒を呑んで、鮨をつまんだ後に、
〆に、満腹感を求めて、と、いうのであろうか、
これで、おしまい、という区切りのために
飯を、腹に入れる。
仕上げの、ラーメン、
茶漬け、そんなものに近かろう。
海苔巻=かんぴょう巻きに、わさびなど、入れてもらって、
鉄砲巻、などといって、悦んでいるのもわるくはない。
私の、定番は、ひもきゅう、で、ある。
ひもきゅうとは、赤貝のひもと胡瓜を巻いたもの。
重くなく、ちょいと、その、乙な感じがする、のである。
むろん、うまい。
先ほどから、巻物、巻物、と、いっているが、
これは、太巻ではだめで、細巻き、でなくてはならない。
これは、まあ、こちらだけの問題ではなく
店の問題、でもある。
太巻を巻いてもらうと、一本、いや、半本というのも
巻いてもらえるかもしれぬが、半本でも、量は、多い。
そんなには、食べれられないし、一切れだけ巻いてくれ
というのは、まあ、ありえない。
手巻き、と、いうのも、ある。
しかし、これでは、少なすぎるし、あの、簀巻で、
行儀よく、キュッと、巻いてもらったのを
ちょいと、しょうゆをつけて、つまみたい。
(簀巻=すまき。ひっくり返して、まきす、ともいうが、
どっちが正しい、のか。これが疑問、で、ある。
辞書を引くと、どうもスマキ、が、正しいようなのだが、
なんとなく、スマキ、と、いうと、
東京湾に浮かんでいそうな、感じがするのだが、
いかがであろうか。)
ともあれ、鮨の〆は、細巻きでしかあり得ない。
(むろん、穴子やでんぶ、かんぴょう、玉子焼きなど、
色々入れて巻いた太巻も、これだけで食事にするには、
うまい、ものではあるが。)
じゃあ、呑んで、にぎりをつまんだ後の、細巻きは、
どんな細巻きがいいのか、と、いう話になる。
先の江戸前定番の海苔巻=かんぴょう巻き、と、
私の好きな、ひもきゅう、は、よいとして、
他に、どんなものがあったろうか。
ねぎとろ、と、いうのも、今は、ほぼ
誰もが知っている、定番、で、あろう。
最初に食べた時には、なかなか、うまいもの、と、
思ったが、今、ちゃんとした、東京の鮨やで、
私は、頼む気には、なれない。
第一、野暮ではないか。
ねぎとろ、というのは、いわゆる、まぐろの中落ち
と叩いたねぎを巻いたもの。
で、あるのだが、中落ちとは、いったいまぐろのどこの部位か、
ご存じだろうか。骨の周りの、すきみ。それから、皮にくっついて、
残っていたところ、などなど、脂はあるが、食べにくいアラなど
からスプーンでこそげ落として、取ったもの、が、
もともと、であるらしい。
(参考:寿司屋のおかみさん小話)
こういう部分であるから、ほんの少量しか取れない。
ねぎとろ巻きは、いわば、まかない飯、だったのであろう。
これがうまい、と、わかり、広まった。
今では、鮨やで、ねぎとろを頼むと、本来の、中落ちは、
あるわけもなく、中トロなどを叩いて、巻いている。
(スーパーでは、なんの脂かわからぬが、まぐろの
赤身に脂を混ぜて、中落ち、と称して、売っているのが
摘発されたこともあったように思う。)
まあ、そんなものだから、そうまでして
食べたい、というのは、やっぱり、野暮、と、
いうものであろう、と、思うのである。
さらに、大トロを叩いて巻いたりすることもあるが、
これもどうであろうか。むろん、やりたい人はやればよいが、
大トロであれば、にぎりで食べればよい。
もったいないではないか。
(まあ、それを承知でわざわざ、やる、のであろう。)
(ねぎとろの手巻きは、先日の、仙台の鮨やで、食べている。
言い訳をさせていただくと、仙台は、東京ではないこと。
簀巻で巻かない店であったから。
品書きに、書いてあったなかで、頼む気になったのは、
これだけであったから、で、ある。)
お好きな方を、とがめるつもりも、権利も、むろん私にはないが、
お新香巻きや、納豆巻きも、鮨やで、私は頼んだことはない。
(関連するが、最近、トロタク、なるものも
出てきているよう。これは、トロと沢庵、だ、そうな。
これなぞは、いうに及ばず。)
先に、最定番としてかんぴょう巻きを挙げたが、
かんぴょう巻きの次の定番は、一般的には、きゅうりを巻いた、かっぱ。
あるいは、まぐろ赤身を巻いた、鉄火、も、ある。
鉄火は、まぐろ赤身の味次第である。
信用できる鮨や、で、あれば、むろん、うまいし、
私も、太助寿司から出前を取る時には、上鮨とともに
必ず鉄火巻きを一人前、頼んでいる。
しかし、握りをつまんだ〆、には、あまり頼まない。
やはり、あたりまえすぎる、からだろう。
先に、ひもきゅう、を好みとして挙げた。
かっぱ巻きの、派生ということになるのだろうが、
きゅうりは巻物にはよく使われる。
穴子と巻いた、あなきゅう。
これもうまいし、練り梅と巻いて、うめきゅう。
このあたりは、定番だろう。
大葉も入れて、梅しそ、などともいうが、
仕上げにはさっぱりして、うまいもの、で、ある。
穴子のバリエーションであろうが、うなぎと巻いて、うなきゅう。
まだまだあるだろうか、、。
それから、光ものを巻いたもの。
前にも書いた、鰯としょうが(ガリ)を巻いた、鰯巻き。
これもうまい。
考えてみたら、細巻きはなんでもよいわけである。
いか、なども巻いたりはする。
結局、うまいのか、なおかつ、乙なのか、
そんなところが、問題なのであろう。
そして、今日は、鮨太鼓の兄ちゃんに、なにかおもしろいの
ありますかね、と、聞いてみた。
なんでも巻きますよ。
白身は巻かないでしょ?
と、いってみたら、
巻いてくれたのが、上の写真。
(既にタイトルに出ているのでおわかりであろうが。)
平目の縁側を巻いて、
縁側巻き。
平目は今、むろん旬、で、あるが、
縁側は脂があるし、食感もこりこりとし、
これがまた、細巻きには、よく合う。
昔からあるもの、という。
(この鮨太鼓の、私と同年輩だが、お兄さんは、
神楽坂の割烹もやっている鮨や、で、修行されたという。)
縁側巻き、ちょいとこれも、
うまくて、乙なもの、で、ある。
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