断腸亭料理日記2008

京都先斗町・炭火割烹・いふき・その3

今日も、昨日の続き。
京都出張、先斗町の小さな割烹、いふき、に
着いて、座って、ビールを頼んだところまで。

今日は、いよいよ、料理に。

*********************

ご主人が、おまかせ、で、よろしいですか?

はい、と、いうことで、お願いする。

まだ、汗が引かぬので、扇子をパタパタやりながら、
少し落ち着いて、店の中を見渡してみる。

店の中は、明るめ、で、あろう。
特段、音楽などはかかっていない。

カウンターの中は、私の前が、ご主人。
にこやかの表情。頭はつるつる、だが、
意外に、お若いかもしれぬ。
そして、その左側が、炭火で焼きものを焼いている若い衆。
さらにその左に、もう一人、若い衆。洗い方、か。
女将さんの他には、女性がもう一人。

お客は奥のテーブルに、少し年配のサラリーマン風
四人組。
こちらは、食事はもう終盤のよう。
言葉から、地元の人、か。

それから、カウンターの私の反対側。
若い女性と、男性の、ちょっとわけあり、かも、と
想像したくなる、カップル。

ビールの一杯目は、女将さんが注いでくれた。

どうも見ていると、他の客にも一杯目はこうしていたので、
習慣なのかも、と、思われた。この店特有なのか、
あるいは、京都では普通なのか、、。

東京では、クラブなどいわゆる専門の業態は別にして、
高級なところでも、料理屋では、お酌の習慣は
今はなくなっているように思われる。
坪を心得たお酌は、ちょっとよいものである。

最初に、写真を撮ることの許可をもらっておく。

比較的、すぐに出てきた、一品目。


青豆の豆腐、冷製。
上に、わさび。

溶いてお召し上がり下さい、とのこと。

見た目も美しく、紫の紫蘇の花が散らされ、香りがよい。
京料理らしい出汁の利いた、冷たい葛餡。
餡には、じゅんさい、も、入っている。

青豆の豆腐はトロっ。

汗をかいているので、冷たいものはちょうどよい。
添えられている、小さなレンゲで餡も全部すくって飲む。

ビールが進む。

次、お造り。


丸い、深い器というのが、お造りとしては目を引く。
下に、氷が忍ばせてある。

右が、さより、これは淡路島。
左は、鯛。愛媛、豊後水道あたり、という。
奥は、まぐろ、中トロ。これは那智勝浦。

やはり、盛り付けが、目にも鮮やか、バランスもよい。

中トロの切り方が、少し変わっている。
わけは聞かなかったが、厚めの三切れ。
その間に切れ込みが入っている。

口の中で、溶けるようで、うまい。
この中トロの下に、山芋を四角い棒状に切ったものが
二本あった。
背を高くするため、であろうが、なかなかスマート、
に感じる。むろんこれも食べる。

女将さんと、ご主人から、
今日は、どこから来たのか、
ここは、誰かの紹介なのか、など、
さりげなく、聞かれる。

東京から、出張で。
ここは、ネットで見つけました。

次。

穴子鮨。


大きな皿の真ん中に、ぽつんと一つ。
おもしろい、盛りつけで、ある。

穴子は、お得意の炭火で、焼きたて。
ほこほこ、で、ある。
香ばしく、焦げ目もつき、まぶされた山椒の香りがさわやか。

京会席では、こうして、間に鮨をはさむもの、であろうか。

次は、炊き合わせ、といってよいのか?


今度は、温かい。
これも、葛餡。
先ほどよりは、色が濃い。

鮑(あわび)、丸なす、芋茎(ずいき)、と、いわれた。

炊き合わせではなく、蒸したところに餡をかけているのか。
わからぬが、茄子は、素材感が残こされ、
出汁が染み通ってはいない。

丸なす、って、なんですか?

聞いたことがなかったので、聞いてみた。
いや、賀茂なす、なんですよ、とのこと。

なんでも、京野菜でも産地表示というのが
厳しくなっているようで、賀茂地方で採れたものだけが
賀茂なす、と、名乗れるらしい。
それ以外のところのものは、丸なす、ということ。

どちらにしても、私は初めて食べるもの、で、ある。

このあたりで、酒にかえる。

酒は、伏見の地(じ)のものの、吟醸酒。
銘柄は、忘れてしまった。
一合、¥800ほど。

冷酒。

一口呑むと、あ、甘い、という感想。

ご主人は、これでもこちらの酒としては、
甘さは抑えたものなんですよ、という。

私が家でいつも呑んでいるのは、辛口の菊正宗である。
菊正宗は、灘の酒であるが、伏見といえば、
黄桜でも、月桂冠でも、東京にはたくさん入っている。
ご主人によれば、同じ酒蔵でも関西で売られるものと
東京に出すものは、味をかえている、という。

この酒は、甘いことは甘いのだが、吟醸香は強く
呑みやすく、よい酒である。



と、いったことろで、さらに引っ張るようだが、
紙数が尽きた。

京都先斗町炭火割烹 いふき。
続きは、また明日。

明日は焼き物、から。


P.S.

さて。

今日、もったい付けずに、早く本題に入れと、お叱りをいただいた。
しかし、今回、それだけ、歩いた町を含めて、京都というところが
私の心に残った、ということ、で、あるし、
また、プロローグとして、演出として
必要であるとも思い、長々と、書いてもいたわけである。

さらに、ご愛読をいただいている皆様であれば、お分かりであろうが、
そもそも、この日記は料理日記などといっているが、
ガイドブックのような、店の紹介記事を書いているつもりは毛頭ない。
地図もあれば、歴史もある。食い物が中心ではあるが、
その様々な周りのことも含めて、私の伝えたいことを
書いている。そういう文章である。

それが伝わらないのは、自分の文章の拙さを反省すべき、
なのかもしれぬが。




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