断腸亭料理日記2008
3月23日(日)第二食
日本橋三越の天ぷら山の上で、天丼を食って、銀座線で帰宅。
さて、三越地下の青果売り場で見つけ、買ってみた、ノビル。
筆者にとっては、相当に懐かしいものである。
子供の頃、祖母や母が土手などで採ってきて、
食卓にのぼっていた。
ノビルというものをご存じの方はどのくらい、いるのだろうか。
地域差もあろうが、筆者よりも上の世代であれば、まず
知っておられようが、30代、20代の方で
東京など、都市圏で育たれた方は、ほとんどが知らないのでは
なかろうか。
春の山野菜の一つであろう。
種類とすれば、ねぎの仲間の野草。
長さは30cm程度であろうか。
地下部分に丸く白いふくらみがあって、
エシャロットのミニチュア版というようなものである。
筆者の子供の頃、東京及び、近郊でもまだ、土手のようなものがあり、
いわゆる山菜のわらびやぜんまい、タラの芽などは採れないが、
ノビル、以外にも、春には、フキノトウやら、つくし
(子供には採るのは楽しいが、食べてもたいしてうまくはない。)
やら、は採って食卓にのぼっていた。
フキノトウでも、ノビルでもクセが強いので
子供の味覚ではたいしてうまいものではなかった。
しかし、春になると、そういうものが芽を出して
採って食べるものである、ということは
記憶の中に、植えつけられたのであろう。
フキノトウは、随分メジャーで、
スーパーにも、並ぶものである。
油と味噌で炒めたり、煮たり、あるいは、
天ぷらにもする。
これに対して、ノビルというのは、八百屋や
スーパーに並んでいるのは見たことがなかった。
従って、筆者の記憶からは、ほとんどなくなっていたものである。
それを、日本橋三越の地下の青果売り場で見つけたもので
懐かしくて買ってしまったのである。
子供の頃の味覚ではなく、今の味覚で考えれば、
ヌタにすれば、かなりうまそう、で、ある。
ビニールの袋に入り、300円。
開けてみると、随分ある。
洗って、根を切って袋詰めしてあるのだが、その後少し
育ってしまっているようである。
あまり買う人がいないせいか、あるいは、
流通の問題であろうか。
水洗いし、枯れている部分やらをきれいに取る。
子供の頃、どういう食べ方をしていたのか、
生で味噌をつけていたようにも思うが、
明確な記憶は、ほとんどない。
やはり、さっと、湯通しをし、酢味噌。
ヌタがよかろう。
ざるにのせ、沸騰した湯を、上からかけ、
すぐに冷水に晒す。
水を切り、ペーパータオルで水分をよくふき取る。
酢味噌は、西京味噌に、八丁味噌を合わせる。
半々よりは、気持ち西京味噌を多め。
少し甘めがよかろう。
できた。
またまた、ビール。
ふむふむ、これは予想以上に、うまいかもしれない。
ねぎぬたよりも、香りがあり、食感もしっかりしている。
エシャロットよりは、柔らかく、食べやすい。
この鼻にツーンとくる香りがまた、
エシャロットに似てはいるが、
少し違うようにも思われ、なかなか、よい。
こんなものであれば、もっと出回ってもよいのではないかと
思ってしまう。
田舎であれば、採って出荷する、というようなことは
あまりにも、どうでもよいもので、
思い付かないのであろうか。
はたまた、都心部でもちょっとした草原であれば、
今でも、生えているものであろうか。
探してみようか。
いやいや、排気ガスやら、なにやらにさらされたものを
食べるのも、やはり心配ではある。
ともあれ。
桜も咲き、のどかな午後、
ちょっとした、春の再発見では、ある。
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