断腸亭料理日記2008

田端・路麺・かしやま、と、

切絵図を買う。

7月26日(土)第二食

暑くなると、食べたくなるものの一つが、
冷たいうどん。
それも、うまい、うどん。

そうだ、かしやま、へ、いこう。

田端の路麺、かしやま、で、ある。

路麺とは、主として個人営業の立ち喰いそばや、の、
ことである。東京の多くのそばやには、ご存じの通り、
そばやとはいいながら、一部の老舗をのぞいて、うどんも置いている。
路麺にもむろん、うどんはある。
ひもかわ(名古屋でいう、きしめん)、などを置いている
ところもあり、これも愉しみ。

かしやま、というのは、路麺でありながら、
さすがに手打ちではないらしいが、自家製麺。
(手打ちではない自家製、というのは、手動の製麺機で
作る、ということであろう。)

従って、店では、そばは、生そば茹でたて。

うどんは、茹で時間がかかるので、
注文が入ってから茹でるのではないが、
立ち喰いそばとは思えないうまさ、なのである。

おそらく、打ち方や、ねかし方なども
手打ちにかなり近い、のであろう。

さて。
どちらがついで、だかよくわからぬが、もう一つ。

今日は、神保町に古地図を買いに行こうとも思いついた。

この日記をご愛読いただいている方は、
おわかりであろうが、よく、東京の街の
江戸の頃の地図を引用している。

私は、東京で生まれ育ったわけだが、
東京というところは広い。
すべてのところの歴史を詳細に知っているかといえば、
そんなことはない。
育った区、であれば、小学校などで習う。
私の場合は、これは、練馬区であるが、それ以外の
ところは、今住んでいる、台東区、浅草や上野、
働いている、牛込や、新宿などの
詳細な歴史というものは、知らなかった。

これは私の持論なのだが、自分の住んでいるところ、
働いているところ、歩いたところ、の歴史、
昔そこがなんであったのか、ぐらいは知っていなくてはいけない、
と、思っている。
(特に、私の場合は、東京がふるさと、で、あるから。)

そこで、この日記を通して、歩いたところの
歴史を調べている。
まあ、この作業は、自分のための勉強、なのである。

今日は、暑さもあり、車。
アロハに短パン、足は雪駄という格好。

神保町、古書センターの隣の秦川堂書店

ここは、ほぼ、古地図専門の古書店。
いつもここにくる。

江戸の古地図には、大きく分けると、二種類ある。
江戸全域が載っているもの。
私が引用しているものの多くもこれを拡大したもの。

そして、もう一種類。今でいう、区分地図に相当する、
切絵図、といわれているものもある。
浅草、下谷、小石川、など地域ごとの地図、で、ある。
池波先生などは、これを持って、取材のために東京の街を
歩かれていた。

江戸全域の載っているものも、今考えると、
驚くほど、細かく書かれている。
小さな、旗本屋敷の個人名、通称(里俗)の横丁の名前など、
かなりの詳細部分まで、書かれている。
しかし、やはり省略されているところもあり、
細かく見たい場合は、切絵図にあたりたいことも
あるのである。

私も、江戸のすべての切絵図は持ってはおらず、
足らないところを買いにきたのである。

五、六枚を買い、田端へ。

神保町から田端までは、白山通りを北上。
春日を越えて、白山下のY字路を右に上がる。
白山上を旧白山通りを突っ切って、右。
向丘二丁目の交差点。本郷通りも突っ切って真っ直ぐ。
坂を降り、この坂は、団子坂。
このあたりはもう、千駄木。
坂を下りて、団子坂下。不忍通りである。
左に曲がって、道灌山下、さらに、動坂下。
これを右に曲がれば、田端、で、ある。
切通しを抜けて、田端駅、田端大橋を渡って、向こう側。
かしやまは、この橋の袂(たもと)で、ある。

橋から車をまわし、パーキングに停め、
かしやまへ、向かう。

冷やしたうどん、というと、なにがよかろう。
店に入り、券売機の前で考える。
うずらの卵ののった、とろろ、もよいのだが、
今日は、普通の天ぷら、に、してみようか。

店の中は、腰の曲がったおかあさん(おばあさん?)と
おとうさん。

2時過ぎであるが、お客さんはにぎやか。

食券を出して、カウンターの前に立ち、待つ。

きた。


冷やしの天ぷらうどん。
おかあさんが、わさびを出してくれる。

冷たく冷えた、しこしこのうどん。
やはり、うまいぞ。

夏にぴったり、で、ある。

ここの天ぷらは、柔らかめで、冷やしでも
十分に、うまい。

うまかった、うまかった。

夏こそ、かしやまの、うどん、で、ある。



かしやま



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