断腸亭料理日記2008

断腸亭、長火鉢を入手する。2.

今日は、昨日の続き。
届いた長火鉢の梱包を解いたところまで。


さて、開けてみると?

おお。
ちゃんとしているではないか。
まあ、写真の通り。

灰も入っている。

今まで、陶器の火鉢を
置いていた場所に据えてみる。

居間のいつも座っている場所は、卓袱台というのか
お膳というのか、作業机というのか、すべてを
その前の同じ場所でしている。
その自分の座る左隣に陶器の火鉢は置いていた。

75cmと長さもあるので陶器の火鉢よりも
ボリューム感がある。

銅壺(どうこ)、と、いうもの。
文字通り、銅製。アカガネ色。

鉄瓶などをかける五徳の部分と、湯を張って、
徳利を入れる部分がある。

さっそく、炭を熾し、五徳の部分に据えてみる。


そして、湯を張る部分に電気ポットから、湯を移す。
思ったよりも、ここには量が入る。

むろん、本来は、水を入れておき、余熱で
温まってくる、という仕掛けではある。

こうしたものは、水が洩るのではないか、
という不安があった。
一先ず、お湯を入れたところでは、問題はないようではある。

確か、千束通りに銅器を製造販売しているところが
あったはずである。銅壺も作っていたはずである。
直してもらってもよいかもしれない。
(直せるもの?直すものなのかも、よくわからないが。)

炭を足し、カンカンに熾す。
鉄瓶もかける。

小抽斗(こひきだし)に、その辺に散らかっている
爪切り、耳かき、薬、はさみ、シェーバー、
煙管、ライター、その他、こまごましたものを仕舞ってみる。
(本来、長火鉢の小抽斗には、海苔だったり、刻み煙草だったり
湿気させたくないものを入れる、ともいう。)

携帯は一度入れてみたが、やはり、
これは出しておいた方がよさそうである。

長火鉢は灰の入っている部分と、その隣に平らな台の部分がある。
ここの平らな部分は、猫板、と、いう。
暖かいので猫が乗って丸くなる板、と
いうことらしい。

この猫板の部分の下に、三段の小抽斗があり、
灰が入る部分の下に、一段、横並び二つの、少し大きめの
抽斗。都合五つある。
ごちゃごちゃ、散らかっているものを仕舞うと、
だいぶんに、机の上が片付いた。
全部仕舞っても、まだまだ抽斗の方は余裕がある。
やはり、この小抽斗というのは、よい。

ひとところに座る生活をしていると、
自分の手の届くところに、すべてのものを置いておく
ようになってくる。
これをきれいに整理できる、という、長火鉢の小抽斗。
さすが狭い部屋で座る生活をしてきた江戸人ならではの
効率的な家具、で、ある。
鉄瓶のお湯も沸いてきて、例の松風
シュンシュンという音も聞こえてくる。
(長火鉢にしたからとて、音が変わるわけではないが。)

お燗用のお湯の方は既に温まっているので、
一合の徳利を突っ込んでみる。


この銅壺は、高さが二合徳利に合っているのだろう。
潜ってしまったが、まあ、つまめないほどではなく、
実用には問題ない。

しかし、この燗をつけられる銅壺の仕組み。
不思議といえば、不思議である。
ほとんどの長火鉢用の銅壺には、この仕組みがついている。
と、いうことは、長火鉢を使う家では、酒を呑み、
それも燗酒を呑んでいた、ということになろう。

まあ、昔は、一般には冷で呑むよりも燗をつけることの方が
圧倒的に多かったというのも聞いたことがある。
そこで、いわば標準仕様でこの燗をつける機能が、
長火鉢には、付いていた、ということなのかもしれない。

しかし、今回、ネットオークションで、私とすれば
格安といってよい金額で手に入れることができた、と、思っている。
なにか、不思議な気もするが、それだけ、こんなものを
今、欲しいという人間が少ない、いや、いない、と、いうこと。
また、逆に、売りたいという人は少なからずいて
その、原価、というものは、これよりももっと安い、
ということになろう。

ともあれ。
50歳になったら、などと思っていたが、5年も早く
手に入れてしまった長火鉢。
うれしいかぎり、で、ある。

皆さんも、長火鉢、いかがであろうか?

P.S.
銅壺からは、やっぱり、水が染み出してきていた。
これは、使っているうちに灰がこびりついて、
止まる、ということではある。
本当かどうかわからぬが、一先ず、
しばらくこのまま使ってみようと思ってはいる。



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