断腸亭料理日記2008
12月20日(土)夜
さて、土曜日。
今週も、午前中は歯医者。
しかし、今週で終わりで、ある。
帰宅し、内儀(かみ)さんと、夜はなにを食おうか、相談。
鍋が食いたい、と、いう。
鍋?
鍋ならば、、なんであろうか。
馬(みのや)か。
どぜうは、内儀(かみ)さんが食えない、、
ふぐ、は、どうだろうか。
いったことはないが、向島の、はしもと、と、いうところ。
有名らしい。
どんなものか、わからぬが、
ちょいと、いってみようか。
TELを入れ、19時に予約する。
内儀さんは外出。
向島というのは、電車でいこうとすると、駅からは遠い、
浅草、吾妻橋、が最寄だろうが、随分かかる。
それならば、元浅草の拙亭から、タクシーでよいだろう。
一度内儀(かみ)さんは帰宅してから向かうことにする。
内儀さんが出かけ、第二食。
鶏が食いたくなり、もも肉を先ほど、ハナマサで買っておいた。
これを、魚のグリルで焼き、柚子胡椒だけで、食う。
意外にうまい。
やっぱりビール。
その後、昼寝。
さて。
内儀さんが帰宅するのを待って、出かけるが、今日は着物。
先週、古着の安いものだが紺の縮。
草履を履いて、出る。
マンションの前で、タクシーを止め、乗って、
「向島」。
着物姿で、「向島」、と、行き先を運転手に告げるのは、
なんとなく、よい。
なぜ、といって、ちゃんと説明しろ、と、いわれると困ってしまうが、
ちょいと、気持ちがよいではないか。
「言問通りからで?」
「はい」
「見番の前でいいですか?」
と、聞かれて、店の場所は調べてきたが、見番がどこにあるのか、
目当ての、はしもと、との位置関係がどうなのか、わからぬ。
あいまいに、返事をして、なるほど、向島に飲食にタクシーでくるなら、
見番の場所くらい知っていなければ、いけないのか、と、思い至る。
言問橋を渡って、水戸街道の手前を左折。
信号二つ目、見番前で降ろしてもらう。
向島の見番がここにあるのは、知らなかった。
向島は、この真ん中の通り以外は、細い路地が
ごちゃごちゃとあるところ。
とても、細かく憶えてはいない。
はしもとは、見番の先の交叉点を右に曲がり、
2〜3本先の路地を左に入ったところ。
すぐに見つかった。
店前にのぼりが出ており、三浦屋グループ、と、
してある。
ふぐで、三浦屋、と、いえば、浅草の三浦屋、で、あろうか。
さほど、大きな店ではない。
間口一間程度か。
入ると、名乗る前から、○○さんですね?と
いわれ、二階に案内される。
店は一杯。
けっこうな繁盛のようである。
間口は狭いが、奥に細長い。
一階は掘りごたつ式のようだが、二階は普通の座敷。
案内されたテーブルに座る。
最近、着物を着て、そばやらなにやら、なん回か飲食をしているが、
飲食店に入った時の、店の人の反応、というものがやはり
違うところがあるように思う。
店のやり方で、誰にでも同じ応対をするようにしているところも
ある、のだが、明らかに、いつもとは違う反応をするところがある。
昔からのことだが、私は、どうも見た目が若く見える。
これはまあ、本質的にはわるいことではないのだが、
仕事上などもそうだが、飲食店などでは、軽く、
いわゆる、チャラく、見えて、ぞんざいに扱われる、と、いう。
(仕事上では、なめられる、ということになるのだが。)
そういうことが少なからず、ある。
正月でもなく、それも爺さんではなく、多少若く見える私のような者が、
着物を着ていると、とりあえず、この人はなんだろう、と、
疑問に思いながらも、まあ、丁重にしよう、という気が
働くようである。
不思議なものである。
今まで、自分自身はあまりそういうことに意識をしては
こなかった。仕事上はむろんスーツで、ビジネスマンとして
見苦しい格好はしないように努力はしているが、
普段着となると、そうとうにいい加減な格好をしていた。
飲食店などは、明らかに見た目、風体で
扱いを変える。これは間違いなかろう。
(まあ、皆様は、とうにあたり前のこととお考えだと
思われる。今さら気が付いた、と、いうことかもしれぬ。)
ただでさえ、軽く見られるのだから、
着物でも着て、ちょっと、重み
(なのか、ヘンな人っぽさ、なのか)
でも付けるのは、おもしろいかもしれぬか。
ともあれ。
座って、ひとまず、ビール。
メニューは、ここは、ガイドブックによれば、
東京で昔から食べられていた、まふぐや、しょうさいふぐ、
というのが食べられる、というところのようである。
これはこれで、食べてみたいようにも思うが、
ふぐや、など、年に、そうなん回もくるところではない。
やはり、普通の天然とらふぐで、コースにしよう。
刺身と鍋のコースは、5250円からあるが、天然とらふぐの
一番メインらしい、10,500円のものにしてみる。
いかの塩辛のお通しと、煮凝り。
塩辛は普通のもの。
煮凝り。
これは、皮の煮凝りである。
(むろん、ふぐの、であろう。)
実のところ、私は、煮凝り、というものは
特段好物、ではないが、これは乙な味である。
滅法辛い、溶き辛子が添えられている。
味付けがよいのか、口の中での溶け方、
後味など、なかなか、よい。
刺身。
ふぐ、それも、天然とらふぐ、というのは、
白身の刺身では、まあ、最高の値段と味、という。
(ことになっている。)
世の中には白身の刺身は、いろいろある。
鯛、平目、鰈、などが一般的であろう。
それぞれ、むろん味も香りも違う。
じゃあ、白身の刺身のうまさとは、なんであろうか。
基本的には、皆、淡白、で、ある。
マグロや光りもののような、わかりやすい主張はしない。
とても微妙なうまみ、あまみ、脂、香、食感、歯応え、、、
そんなものを味わい分けて、楽しむ刺身、で、ある。
私なども、20代の頃は、むろん、ふぐや平目を
食べる資金もなく、そんなものを味わい分ける舌も、なかった。
ふぐも、食べるようになったのは、ほんの最近のことである。
また、白身の刺身は、ぽん酢しょうゆで食べることが多い。
ふぐは、まず100%そうであろう。
食べ慣れない者からすると、皆同じ味になってしまうではないか、
とも思う。(じゃあ、塩で食べればよいではないか、ではある。)
しかし、これもぽん酢しょうゆで食べ慣れてくると、
違いはわかってくることは間違いない。
ふぐは、寝かす、という話もきいたことがある。
拵え方によって、味も変わってくるのかもしれぬが、
ふぐ刺しのうまさは、独特な適度な歯応え、
食感、あまみ、香、であろう。
まあ、うまいことは、間違いない。
(だが、やっぱり、本来、東京の貧乏育ちの私には、
ふぐ刺しを、べら棒にありがたがるほど、思い入れは、ない、
というのも、正直なところ、では、ある。)
といったところで、だいぶ長くなった。
鍋は、明日。
東京都墨田区向島5-27-15
03-5608-4473
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