断腸亭料理日記2007

浅利ぬた

11月5日(月)夜

仕事が終わり、オフィスを出る。

歩きながら、なにを食おうか考える。
先週、どうしたわけか、そばが食いたくなり、スーパーで
市販の生そばを買って、食べていなかったのがあった。

食べてしまわねば。

と、なると、その前に食べる、つまみ、で、ある。
なにがよかろう。
小柱、など、よいのだが、、。

牛込神楽坂駅そばの、スーパーに寄ってみる。
鮮魚売り場でみてみるが、そうそう貝類、それも
ピンポイントで、小柱、など、そこいらのスーパー
(まして、山の手の電鉄系の)にあるわけもない、か。

と、なると、なにがよかろうか。

一渡り見ると、貝、、、浅利むき身!。

そばに合う、そば前というのであろうか、
つまみとして、、、。ぬた、ではどうだろうか。
ねぎは、家にある、普通のものでいいだろう。

むき身のみを買って、帰宅。

ぬた、と、いうのは、シンプルな料理であるが、
うまく作るのは、かなり難しい。

商売人であれば、ぬたには、わけぎ、などを
使うのが常道であろう。

しかし、一般では、このためだけには、買えない。
普通のねぎでも十分。

ただし、どっちにしても、難しいのは、熱の通し方。
たいていは、熱を通しすぎて、水が出て、べちゃべちゃになる。
これは、ぬたとしては、食えたものではない。

脱線するが、どこかの、趣味そばで、
そんなぬたが出てきたことがあった。
また、それがまずいものであるという認識すら、店にはない。
クレームをいっても、そんなものです、という反応。
そばさえ、ちゃんとしていれば、、、なのか。
そんな素人料理を食わせて、平気な顔をされては困ってしまう。
こんな趣味そばが、少なくないのが、東京の今、ではある。

ともあれ、ぬたのねぎに熱を通すのは、細心の注意が必要である。

筆者が行き着いたのは、茹でるのではなく、熱湯をかける。
これが最も、失敗が少ない。

5cm程度に切り、これを、1/4。
中心に近い太い部分はさらに、半分の太さに切る。
普通の長ねぎの場合、厚みや太さを揃えるのは困難であるが
できるだけ、均一に熱が通るように切っておく。

湯を沸かす。

沸騰したら、ざるにねぎを入れ、上からざっと、かける。
と、熱の通りすぎをさけるため、すぐに冷水にはなし、
また、ざるに戻し水を切る。(二度ほど。)

ここで、太いもので、熱の入り方の遅いものもあるので、
これだけ取り出し、再度熱湯をかけ、同様にすぐに冷やし、
水を切る。

これだけ気を付ければ、ます、大丈夫、で、ある。
ざるに揚げたまま、水を切っておく。

浅利。
これも湯通し。
だが、こちらは、ある程度きちんと火を通した方がよい。
浅利の半生は、ちょっと食えない。

鍋に湯を沸かし、浅利むき身を入れる。
ただし、火を通しすぎてもいけない。
まあ、ちょうどよい加減。

これもざるに取り、冷水で急冷。
同じくそのまま、水を切っておく。

次は酢味噌。

八丁味噌と、西京味噌の半々に、酢を加え、
よく混ぜる。
酢味噌も、西京味噌だけ、というのもあるが
浅利ぬたは、筆者の好みとしては、この半々がよい。

ざるで水を切っておいたねぎは、ペーパータオルで
はさみ、そっと水気を取る。
決して、絞ってはいけない。

同じく浅利も水気を取り、酢味噌とともに盛り付け。


どうであろうか、なかなか、うまくできた。
酒は、菊正宗の、今日は、冷(ひや)。

ねぎも、浅利もちょうどよい塩梅。

これで、二合。

さて、そば。
生そば、茹でて、つゆは、桃屋。


これははっきりいって、だめ、で、あった。

なにがというと、そばが、だめ。
まあ、スーパーで売っている市販の生そばである。
乾麺の方が、まだいいか、というくらい。
(茹で方に失敗したわけではない。)
筆者、生そばそのものを買うということは、滅多にない。
やはり、そばは、外で食うもの、だと思っているからである。
(そば打ちもしたいとは思わない。)

例外は、大晦日の神田まつやで買う、年越そば
これは毎年生そばなのだが、むろん、うまい。
今日のは、こうまで、違うのか、というくらい、うまくない。
毎度書いているが、筆者、町のそばやで、粉がどうの、
それも、石臼引きでなければ、とか、そばにうるさい方、
(どちらかといえば、趣味そば好きの方?)
がいうが、そんなことは、わからない。

しかし、今日は学習をした。
そばの味とは、ここまで違うものがある、ということ。
(あたりまえ、なのであろう。)

今日は、まあ、浅利ぬたが上出来だったので、
よし、と、しよう。



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