断腸亭料理日記2007

九段一茶庵本店、

松翁と、少し考察その1

7月14日(土)第二食

さて、先週、そばや考察を、路麺と老舗系でやってみた。
後は、筆者の鬼門、趣味そば、であった。

はっきりいうと、趣味そばには、今まで、
近付かないようにしてきたのだが、
これを機に、まだ、いったことのないところ、
それも、元祖に近いところに
いってみよう、と、思い立ったのである。

それが、九段一茶庵本店と、その近所でもあるが、
猿楽町の松翁。

現代につながる、東京のそばやの歴史を見ていくと、
いわゆる先日触れた、藪やら、砂場やらの、老舗系の後、
そのある意味で、アンチテーゼとして、大正の頃、独立系で
そばやを始めた人がいた。
その流れを汲むのが、九段一茶庵、と、いう。
また、一茶庵系という一派も形成されているようである。

そしてもう一軒、神田猿楽町の松翁。
神楽坂・蕎楽亭もここの出、と聞く。

筆者にとっては、趣味そばの、元祖、とも
思っていた店。

ちょうど、後楽園の眼鏡屋に行こうと思っており、
台風も近付いており、雨。11時、車で出る。

まずは、後楽園の眼鏡屋へ行き、視力を測ってもらい、
レンズを決め、一度出る。

この間に、九段下の一茶庵へ。
土曜は、11時半の開店。

専大の隣。路地にある。


11:25、入ると、口開けであった。

テーブル席と、小上がり。
黒を基調とした、店内。

開店は平成二年ということで、さほど古くない。

メニューを見ても、奇を衒ったものはなく、
なん種類かの、かわりそばがあるくらいで、いたってノーマル。

太打ちがあるので、おろしで、太打ち、というのにしてもらう。


辛味大根で、かなり、辛い。

太打ちは、歯ごたえがあり、うまい。

食い終わり、勘定をして、出る。

愛想も悪くない。


一度、後楽園に戻り、眼鏡を引取って、今度は、猿楽町へ。

松翁。
白山通りから、駿河台側に一本入った、錦華通りというらしいが、
そばに、カトリック神田教会がある。
その、さらに、一本入った路地。

12時少し過ぎ。
台風前の土曜だからか、さほど混んではいない。

全部、テーブル席であろうか、さほど広くはない。
なんとなく、雑然とした店内。
特に凝った内装があるわけでもなく、
半紙に書かれたメニューが、べたべたと壁に貼られ、
ちょっと見には、居酒屋のよう。
いわゆる、趣味そば、らしい内装はない。
女将さん、若い衆の動きには、きびきびした活気がある。

ここは、開店が昭和56年で、もう25年を越えている。
ご店主は、脱サラ。修行は神楽坂・志な乃という。
(志な乃は、坂下、カツカレーのめとろの隣。
民芸風のそばや。ここに書いてはいないが、
味はわるくない。)

やはり、松翁は天ざる。
季節であろう、鱧(はも)があるようだ。
「天ぷらは時間がかかります」と、貼り紙がしてある。
2200円、頼んでみる。

なるほど、少し時間がかかったが、きた。

驚いたことに、ご店主らしき方が、
揚げ立てを手づから、テーブルまで持ってきてくれる。

まずは、鱧。


女将さんが、塩を持ってきてくれて、「どうぞ」と、いう。

まさしく、揚げ立て。
そばやというよりは、天ぷらや、で、ある。
塩を出す、というのも然り。(ちなみに、蕎楽亭や、与之助など
天ぷらに塩を出すところは多い。“趣味そば”の特徴かもしれない。)

塩をかけて、食べてみる。
東京者の筆者は、鱧などは食べつけないが、
ほこほこ、で、ある。
衣はパリッと堅めに揚がっており、かなりうまい。

舞茸。

これも、かなりうまい。

そばもくる。

コーン。


とうもろこしを天ぷらにする、というのは珍しい。
走り、で、あろうが、飛び切り甘い。

また、鱧もきた。
ここの天ぷらは、油が軽いのであろう。
実に軽く揚がっている。

そば。


そばは、つゆを濃い口か、薄口かを選べるようになっている。
筆者は迷わず、濃い口を選んだ。

そば自体は、特段飛び抜けた特徴を出しているわけでは
ないようだが、うまい。
薬味は、本わさびに、ねぎ、おろし、ごま。

うまかった、うまかった。
勘定をして、出る。

送り出す声も飾り気はないが、よい。


だいぶ長くなりそうである。
一先ず、今日はここまで。
明日につづく。


九段一茶庵本店HP

松翁
住所 東京都千代田区猿楽町2−1−7 
03-3291-3529




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