断腸亭料理日記2007

ペンネのサーモンクリーム

12月29日(土)第一食

28日、仕事納め。

きつい一年がやっと終わった、と、いうのがやはり本音で、ある。

まだまだ、これは2〜3年は続くのだろう。
今年、筆者は、44歳で、むろん来年は45になる。
サラリーマンとして、この年齢、どうなのであろうか。

今、どこの企業もさほどの違いはないのだろうが、
従来型の年功序列はなくなり、筆者の勤める会社は、50歳までで
しかるべきポジションについていなければ、役職定年といい、
それ以上ポジションはなく、また新たな管理職につく、ということもない。
会社からは、そういう線引きがされる。
まあ、それでも普通は辞めさせられる、ということはないが、
事実上の“退場”ということになる。

その上、筆者の場合、今の仕事は、ルーティーンの既存事業をこなす、
既存組織ではない。
一人、本社のとある部門で、当社にとってある新規分野の事業化というような
ミッションを与えられている。
こういう仕事はどこの企業にもあるだろうが、会社とすれば、
次の成長の糧として、必要不可欠なものでもある。
普通の企業では、こうしたものをいくつも仕込んでいなければならない。

しかし、あと五年で、筆者はリミットの50歳になる。
従って、このミッションの成功と、筆者が50歳以上になったときに
会社からどのようなポジションを与えられるのかは、ほぼイコール、
ということになる。
もはや、やり直しは、ない、のであろう。

今、同世代は皆、こんなにきついのだろうか。
既存事業の既存組織を守り、伸ばすのもむろん楽ではない、
のだろうが、それでも、ミッションを共有する上司も部下もいる。
精神的には、まだ、逃げどころがあるだろう、、。

守るよりも、攻める方が楽、ともいうが、
一人で、守るものがまったくなく、攻めるだけ、というのも
また、きついものである。

しかし、まあ、ここで、仕事の愚痴をいっても、仕方がない。

筆者にとって逃げることは、50を前に、即刻退場(誰か他の者がやるだろう)
ということになり、逃げるわけにもいかず、
あと、2〜3年、まわりを巻き込み、ありとあらゆる手段を使って、
なんとしても、よい結果を出さなくてはならない。
(しかし、逆にいえば、これは筆者にはチャンスなのである。それも最後の。)
そして、きつい日々は続く、と、いうわけである。

サラリーマンとしての筆者はこんな状況であるから、
断腸亭としての筆者も、時間的にも気持ちの余裕としても、
ますます、きつくなっている。
しかし、これも、愚痴をいっても仕方がない。
(自分で選んでいることだから。)

今年はかなり、くじけてしまったが、なんとか、
プラス思考でいかねば。

来年は、なんとか、第三回断腸亭落語会を
開きたい、と、思う、`07年、年の暮れ、なのである。
(愚ログ(愚痴)になってしまった。年忘れとして、お許しを。)

それはそうと、今日の第一食。

パスタを食おう。

冷凍庫にシャケ、が、ある。
鮭、サーモン、で、ある。

この日記には書いていなかったが、
例のアメ横の魚やで、生のシャケが半身二枚、つまり一本で、
なんと¥500というものを買って、凍らせていた。


これで、パスタソース、と、いうことである。

以前に、サーモンのクリームソースというのを作ったことがあった。

生クリームを買ってくれば、比較的簡単そうである。
やってみよう。

ハナマサに買いに出る。

まずは、トマトソース。
にんにく一片をスライス。オリーブオイルで低温で炒め、
ホールトマト(カット)を入れ、水を缶半分ほど足す。
煮込む。塩胡椒で下味を付ける。

生鮭を解凍し、塩をし、焼く。

ペンネを茹でるため、湯を沸かす。

鮭が焼けてきたら、出来上がりの時間を予測し、
ペンネを茹で始める。

鮭が焼けたら、身を取り、多少煮詰まったトマトソースに入れ、
軽くつぶす。

ここに、軽く、タイム。
生クリームを入れ、弱火でよく馴染ませる。

味見。
トマトの味は強いので、クリームが負けてしまう。
生クリームを少し足す。

OK。

ペンネの茹で具合をみる。
こちらもOK。

トマトソースに合わせる。

盛り付け。


文字通り、サーモンピンクの、お洒落なパスタソースである。

生鮭は、基本的には、淡白であるので、
こうして生クリームでこってりさせるとよい。

だが、このソース、なんとはなしに、違う、鮭らしくない感じもする。

ちょっと余談だが、日本人、ことに東日本の人間にとって、
鮭はかなり身近な魚で、あろう。

筆者が大学で学んだ日本民俗学では、儀礼食という扱いをするが、
正月などの儀礼時に食べる魚として、東日本は鮭、
西日本は鰤(ぶり)である、と位置付けている。

これは、今でも、正月のおせち料理に主としてどちらを食べるか、
を、みると、わかる。
おそらく、東日本にルーツのある家庭で、鮭、は
欠かせない魚、で、あろう。

先日の太助寿司で氷見の寒鰤の握りを出された。
むろん、うまく、希少で、高価なものなのはわかるが、筆者などは、
鮭に比べると、身近さ、思い入れは、大きく異なっている。
(太助寿司の親方は、不満かも知れぬが)、
これは、生まれ育った食文化であるから、仕方のないことであり、
むしろ、大切なことだと、筆者は考えている。

ともあれ、そうした身近な味覚である、鮭の味は、といえば、
とりもなおさず、塩鮭の味、で、ある。

この塩鮭の味と、生鮭に生クリームを合わせる味覚、と、いうのは、
随分と違う。なにがどう、と、なかなか言葉にしにくいのだが、
我々の知っている鮭らしい味の組み合わせではなく、
妙、な、感じも、しなくなはい。
鮭は、鮭の脂が持っている、独特のなまぐささが、塩と馴染んで
うまくなっている、という気がするのである。
これをクリームで消してしまっている、あるいは、消さないまでも
うまみ、にまでは、ならない、のか。
やはり、鮭は、塩鮭として食うのが、もっともうまい、
これはどうも、いたしかたのないこと。
文字通り、食文化、なのである。

が、まあ、こういう食い物もあり、塩鮭に飽きたら、
たまにはよい、で、あろう。

そんなサーモンクリームのパスタ、で、ある。



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